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彼女はくノ一! 第三話 (56)

第三話 激闘! 年末年始!!(56)

 翌日、午前中のうちに掃除と洗濯を済ませ、昼食後、真理は香也を伴って買い物に出かけた。
 人数が増えた分、狩野家の食料品の消費量も増えているわけで、その分、一度に大量に買ってくる必要があり、効率という点からみても、日常の買い物に荷物持ち要員は必須になってきている。なにしろ、今の狩野家には以前の二倍の人間がいて、加えて、不意の来客があっても自然と食事を勧める家風でもある。
 腕力という点ではかなり心許ない香也が、今回に限り荷物持ちに選ばれたのは、香也の携帯電話を買うためでもあった。それに、今回はショッピング・センターで保存の利く食材や調味料類を買いだめするつもりだったから、荷物の運搬もほとんどカートを押していくだけ、の筈である。

 三が日が明けたばかりだというのに、ショッピング・センターは盛況だった。メモをチェックしながら、真理は安売りのセール品をメインに、次々と商品を手早く香也の押すカートに積んでいく。レジを済ませ、真理のワゴン車に買ったものを積み込んでから、モバイル・ショップに向かう。
 そこで、家族割引が効く、とういうことで、真理が使用している携帯とおなじキャリアの型遅れの一円機種を選択し、手続きを済ませる。携帯への機能に対して特に拘りを持たない……というより、具体的にどのような機能があるのかよく知らない香也は、必要最低限に使用できれば特に問題を感じなかったので、一円機種でも特に不満は感じなかった。
「登録作業が終わったら、電話で連絡するように」と言い残して、真理は自分の服を見に出かけた。どうやら、香也に「自分で使う携帯は、自分で受け取るように」ということらしい。香也は保護者である真理の携帯の番号を、緊急連絡先として記憶している。
 三十分ほど空き時間がぽっかり空いたので、香也はそこいらをぶらつくことにした。このショッピング・センター時間を潰すことには、実は、慣れている。
 途中、三島百合香と狩野家に居着いたばかりの二宮浩司が、二人で連れ立って、声高になにやら話し込みながら歩いていくのを、遠目に見かけた。
 話し込んでいる……とはいっても、背の低い三島が一方的にまくしたて、二宮のほうがうんうん相槌をうっているような具合で、たまたま途中で出会って立ち話をしている、という風でもないし、ましてや、デートという雰囲気でもない。
 距離があったので話しの内容までは聞こえなかったが、香也が軽い不審を覚えるうちに、二人は人混みの中に紛れて姿を消した。
『……まあ、いいか……』
 もとより、香也には他人の関係を詮索するほどには、「他人」という存在に興味を持っていないので、意外性のある組み合わせには軽く驚いたものの、それ以上深く考えることもなく、そのまま本屋へと向かう。

 時間になったので携帯を取りに行き、受け取ったばかりの携帯を使って真理に連絡を取ってみると、「今バーゲンやっているのぉ!」とかなり切迫した声で返答があった。どうやら、新春バーゲンかなにかに引っかかって、修羅場っているらしい。
「時間がかかるから、先に帰っていていい」
 という真理の言葉に従い、香也は、携帯のマニュアルやら箱やらを入れた小さな紙袋を手に、とりあえず近くのカフェに入る。寒かったので、このままとぼとぼ歩いて帰る前に、一息つきたかった。セルフサービスでコーヒーを受け取り、カウンターに座って携帯電話のマニュアルに目を通していると、何者かに肩を叩かれた。
「や」
 昨年末から家に出入りするようになった、飯島舞花と栗田精一のカップルが、映画のパンフレットを手にして立っていた。

 たまたま空いていたテーブル席に移り、二人と軽く世間話しをする。といっても、香也はだいだい相づちを打つ役割になるわけだが……。
「……そこの駐車場の所で加納兄弟の姿みかけてさあ、声をかけようとしたけど、兄のほうがずんずん歩いていっちゃったんで、かけそびれた。あの二人、いつも一緒で仲が良すぎるよなあ……」
 飯島舞花は自分たちのことを棚にあげて、そんなことをいう。
 飯島舞花と栗田精一は、仲がいい……と、香也は思う。二人一組の姿以外、香也は見かけた記憶がない。大柄で活発、よくしゃべる飯島舞花と、小柄で控え目、しかしいつもにこにこしている栗田精一は二人で一緒にいることが、とても自然に見える組み合わせでもあった。かといって、二人だけの世界を作るタイプでもなく、特に飯島舞花は、加納荒野と他の人たちとのいい潤滑油になっている、とも、思う。
「……んー……そういえば、こっちも、さっき三島先生と二宮さん、一緒にいるの、見た……」
 と、香也が告げると、
「マジっすか!」
 栗田精一が、いつぞやと同じように大げさに驚く。
「二宮さん、って、餅つきの時にいた大きな人でしょ?
 あの二人、密かにつきあっているとか……案外、あの人、三島先生を追っかけて引っ越してきたりして……」
 と言った後、栗田と舞花は顔を見合わせて、
「……いや……それは、ないない……」
 と、二人で否定しあった。
 二人の「三島百合香観」というものが、容易に推測できた。
 栗田のほうも、舞花と一緒にいるとあまり目立たないが、樋口大樹とのやりとりなどから判断すると、意外に社交的なタイプなのではないだろうか。同級生といるときなどは、割にはしゃぐ方、なのでは……。
「それ? 新しく買った携帯って……」
「……んー……そう……まだ、買ったばかり……」
「そっか、じゃあ、使い方の練習がてらに……」
 と、飯島舞花は、自分の携帯の番号とメアドを香也に伝え、交換しよう、と言い出す。
「……んー……でも、まだ、自分のメアド、登録してない……」
 と香也が言い出したので、三人で索引を頼りにマニュアルのページを繰り、なんとか香也の携帯を、メールが使える状態にする。
 そうしでようやく、番号とメアドの交換が行われた。
「ちょっと待って。
 柏のほうにも、メアド教えていいか、聞いてみる」
 と、舞花は早速持ち前の社交性を発揮し、素早く指を走らせてメールを送信する。
 言われてみれば柏あんなは香也のクラスメイトでもあり、ろくにしゃべったことがない以前とは違い、なにかと接点ができた今の時点では、香也とメアドくらい交換していてもおかしくないのかも知れない……と、香也は思い当たる。
 柏あんなから「快諾」の旨を伝える返信はすぐに来て、それには、堺雅史のメアドと番号も書かれていた。
「練習練習」
 と舞花に即され、香也は、マニュアルと舞花の携帯の液晶を見ながら、たどたどしい指使いで二人のアドレスと番号を自分の携帯のアドレス帳に登録し、
携帯買いました。今後ともよろしく。

 というたった一行のメッセージを、二人宛に送信する。
 香也が産まれて初めて送信するメール、になった。

[つづき]
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  • 2006/05/17(Wed) 00:26 
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