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彼女はくノ一! 第三話 (58)

第三話 激闘! 年末年始!!(58)

「……お茶請けがお煎餅と蜜柑くらいしかないんですけど……」
 加納兄弟が持ち込んできた本格的なティーセットを見て、狩野真理は若干引き気味になっていた。そうした真理の様子をみて、樋口明日樹も恐縮する。
「いやぁ、本当に楽しいねぇ、この家は……」
 着流し姿の二宮浩司はなんかかなりくつろいだ様子で歓声をあげる。
「……うわぁ。おしいい。
 こんな所で本格的な紅茶飲めるとは思わなかったよ……」
 称賛の声を受けて、制服にエプロン姿の茅がティーポットを抱えたまま優雅に一礼する。
「……で、この家の息子さんは、結局、誰選ぶの?」
 二宮浩司は、そう言葉を継いだ。
 その言葉が、瞬時に狩野家の居間の空気を瞬間冷凍させる。
「……お前さん、絶対に面白がっているだろ?」
 隣りに座った三島百合香が、珍しくむすっとした顔をして二宮に突っ込む。
「え? なに? そういう話しになっているわけ?」
 加納荒野も、今更ながらに驚きの声を上げる。
「……ここ数日、自分らの事ばかりで、こっちのほうには注意を払っていなかった……」
 言われてみれば……餅つきの時も、一部の人たちの間に、みょーな緊張が漂ってもいたような……。
「……お前さん、妙に鈍い所あるからなぁ……」
 三島百合香はやれやれと首を振り、呆れたような感心したような声を出して、荒野をそう評した。
「……茅は、判ってたの。みんな、絵描きにらぶらぶ……」
 一通り、みんなの分の紅茶を注ぎ終わった茅が、荒野の隣りに座って、そういう。
「みんな若いし、そういうのも経験だとは思うけど……最低限の節度だけは、守ってね。
 わたし、この歳でおばあさんになりたくないし……」
 どこまで本気で言っているのかわからないが、狩野真理もわざとらしくため息を吐いた。
 話しの種にされている狩野香也、松島楓、才賀孫子、樋口明日樹は、顔色を赤くしたり白くしたりしながら、なにも言い返せなくて俯いたり明後日の方に目をそらしたりしている。ここでなにか言っても揚げ足を取られてドツボに填るのは目に見えていた。
(あなたが大晦日にあんなことをいうからこんなことに……)
 才賀孫子が肘で隣に座る樋口明日樹を軽くつつき、小声で責める。
(他人のせいにしないでよ……。
 それに、わたし、その時なにいったのか覚えていないんだから……)

 その時、香也の携帯から着信音が響く。メール着信。中身を確認すると。
おまもりするのですv^^

という、楓からのものだった。炬燵の中に手を入れて、ほとんど手探り状態で入力したらしい。
 香也がなんともいいようのない表情で楓のほうを見、楓が照れたような顔をして目をそらす。そのことで事態を察した才賀孫子と樋口明日樹が自分の携帯を取り出し、猛然とメールを打ちはじめる。香也の携帯に矢継ぎ早に着信するメール。中身を確認するまもなく次々と鳴り響く着信音の中、香也は半ばパニックに襲われつつ、蒼白な顔をしてメールをチェックし続けた。
『……マナーモードに設定……。
 そして、今後、緊急の用件以外、メールの返信は控えよう……』
 硬くそう決心する香也だった。
 この場に飯島舞花がいたら「やるなぁ……」といいって口笛の一つも吹いただろうし、樋口大樹がいたら「それどこのエロゲですか!」と叫んだことだろう。
 ……だからといって、現在の香也の境遇を羨ましがるか、といったらそれは別問題だろうが。

「……らぶらぶなの……」
「……せーしゅんだねぇー……」
「……らぶでもこめでも勝手にやってろっての……」
「……お茶がおいしい……」
 銘々、勝手な感想を述べる外野衆。
 その中でただ一人、加納荒野だけが狩野香也にひじょーに同情的な眼差しを向けていた。

「お」
 狩野香也が絶望的な守勢状態から救ったのは、飯島舞花からのメールだった。同報メールらしく、その場にいるほぼ全員の携帯が、いっせいに着信音を鳴り響かせる。
「……勉強会?」
「……そういえば、今日も始業式にわたくしたちだけ小テストをするとか……」
「……うーん。日本の学校の勉強、確かに教えて貰ったほうがいいかも……。
 楓、自信、ある?」
 いきなり荒野に話題を振られ、楓はぶんぶんと首を振った。
「……そうね……いい機会だし……」
 樋口明日樹も考え考え、言葉を紡ぐ。
「わたしと飯島、それに才賀さんが三人がかりでやれば、なんとか教えられると思うの……大樹も引っ張ってくるし、もちろん、狩野君も……」
 その時、メールを貰った瞬間に風向きが悪くなってきたことを察した香也は、そろそろと立ち上がり居間から逃げようとしていた所だったが、すぐに「道連れなのですぅ」と楓が足に抱きついてきて、ほぼ同時に孫子が退路を塞いでいた。
 肩を落とし観念した香也は、携帯を取り出し、堺雅史宛に「お誘いのメール」を打ち始める。堺を誘えばかなり高い確率で柏あんなもついてくる。
 そして、以前、期末テスト最終日の帰り、柏あんなの反応を見るかぎり……柏あんなの成績は、あまり良くないほうだと予測できた。
 ……逃げ切れないのなら、道連れは一人でも多いほうがいい……。
「……というわけで、みんなで勉強会やりたいので、明日と明後日くらい、場所をお貸しいただけませんでしょうか?」
 一同を代表して、樋口明日樹が真理に確認をとる。
 多人数が収容可能な場所は限られており、空き部屋が多い狩野家以外の候補地は、図書館くらいしか思いつかない。図書館では、あまり大きな声が出せないので、「教えあう」という行為がしづらい。
「ええ。ええ。いいことねー。
 うちのこーちゃん勉強なんてやっているのみたことないから、存分にしごいてあげて頂戴」
 にっこりと笑って即答する狩野真理だった。
「……みんなが集まるなら、お茶以外にスコーンも用意するの……」
 加納茅は、なにか間違った方向に燃えているようだった。

[つづき]
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