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彼女はくノ一! 第三話 (59)

第三話 激闘! 年末年始!!(59)

 年が改まって以来、バイト先に赴いては自分の部屋に寝に帰るだけ、という生活を送っていた羽生譲は、この頃になってようやく五時間以上の睡眠を取る余裕ができた。郷里に帰って不在だったバイト先のスタッフたちも大体復帰していて、新年用の緊急シフトから、だんだんといつも通りの余裕のあるシフトに変わってくる。
 そんなわけで、五日の深夜、くたくたになって帰ってきた羽生譲は、そのまま風呂にも入らず力尽きたように就寝し、そして、起床すると、すでに六日の昼過ぎだった。
 風呂場に行ってシャワーを浴び、なにか食べるものを探しに台所に行くと、猫耳メイド服姿の加納茅がお茶を入れている所に出くわす。
「……おっ」
 加納茅がこの家にいるのも、茅がメイド服や猫耳を装備しているのにも慣れていたつもりだったが、起き抜けに予告無しに出会うと、かなりどきりとさせられる。
「なんだ茅ちゃん。今日も着てたのか……」
 羽生が目覚めの一本を口に咥えると、茅は非難するような目で、羽生を睨みながら、
「お勉強会。だから、今日はスコーンもあるの……」
 と、オーブンを指さした。オーブンの硝子窓の中に、たしかに丸い物体が焼かれている。
「……そっかあ……お勉強で、お茶でスコーンなのね……」
「お勉強」という単語と「スコーン」という単語の組み合わせは、羽生譲にとってはなかなか新鮮に思えた。
「……そのスコーンの余裕あったら、ひとつふたつおねーさんにもまわして欲しいかナー、なんて……」
「……キッチンで煙草に火をつけなかったら、あげるの」
 猫耳メイドさんは、なかなか手厳しかった。

「……おー。やっているなあ、学生諸君!」
 火をつけていない煙草を咥えたまま、羽生譲はスコーンの皿を持ってその部屋に入った。
 居間として使っている部屋ではなく、加納家で一番広い十五畳間を、さらに何枚かの襖を取り払って隣接する部屋と合体させた場所で、そこに幾つかのちゃぶ台を置いて、その周りに学生たちがノートや教科書、参考書を広げている。
 先々代あたりの持ち主がかなり阿漕な儲け方をしていた関係で、狩野家にはこのように広すぎて普段使われていない部屋幾つかあり、羽生譲の同時誌作成の追い込み時などには重宝している。
 集まっていた学生たちの三分の一ぐらい……具体的な人名を上げると、狩野香也、樋口大樹、柏あんなは、かなりげんなりした、疲れ切った表情をしていた。
「……いやぁ、関心関心。
 今、メイドさんがおいしい紅茶いれてくれるってよう……」
「……その茅ちゃんなんだけど……」
 樋口明日樹は、感心したような声を出した。
「……なによ、これ……。ほぼ、全問正解って……」
 二年生の監視の下、一年生全員に問題集からランダムに抜粋した問題を溶かせてみたところ、茅の成績は、突出したものだった。
「……おーどれどれ……堺君と栗田君はまあまあ……。
 くノ一ちゃんは、科目によって差がありすぎ……。
 他の一年は……うちのこーちゃんも含めて、問題外だな、こりゃ……」
 問題外、な、狩野香也、樋口大樹、柏あんなの三名は、俯いたりそっぽを向いたりしている。柏あんなにいたっては、
「わ、わたしは、まぁくんに養って貰うからいいもん!」
 とかうそぶいて、その「まぁくん」こと堺雅史に、丸めたノートで頭をはたかれる。
「そういう問題じゃない。
 ……ここまで手を抜いているとは思わなかった……」
 堺雅史は柏あんなとは古い付き合いになる。が、クラスは違う。よって、学校の成績のことなど、今まで知らされていなかった。もっと端的に言うと、柏あんなが、堺雅史と会話する時、その手の話題を積極的に避けて隠していた結果である。

 茅が用意してくれた熱いお茶とスコーンを楽しみながら、会話は、自然に今後の対策会議、のような方向に向かう。
「……一年は、そんでいいとして……二年生のほうは、どうなの?」
「……心配なのは、この中ではおれだけですねぇ……」
 加納荒野が片手を上げる。
「……なるほど、帰国子女、か……」
 荒野はいかにも利発で、成績が悪そうにみえないから……もたぶん、楓と同様、「科目によって出来不出来が激しい」という傾向があるのだろう。
 他の二年生……樋口明日樹、才賀孫子、飯島舞花は、個性はそれぞれ違うが、基本的に地道に努力する一面があるので、そこそこ以上の学力を自然につけている。
「英語とか、暗記が占める割合が多い科目は……ともかく、地道に時間をかけて覚えていかないとどうしようもないし……」
「数学とか、国語とか、問題の解き方を教えやすいものからいきますか……」
「暗記物に関しては、それぞれ身近な人たちが監視して、じっくりやらせる、ということで……」
 比較的余裕のある二年生たちは、そう頷きあう。
 樋口大樹には樋口明日樹、柏あんなには堺雅史、そして、狩野香也は複数の「身近な監督者」になりうる人がいる。
「……おれは、現国中心に教えて貰いたいな……」
 加納荒野は早々に自分から申し出た。教科書をざっとみてみた感じ、他の教科に関してはなんとかしのげると思ったが、現国の文章読解問題などは、一種独特の「文脈」があるような気がして、荒野にはどうにも理解しきれない領分があるように感じた。
「じゃあ、そちらはわたくしが……」
 才賀孫子が、荒野の隣につく。荒野のバックグラウンドを知っている孫子のほうが、フォローしやすいように思えた。
 比較的基礎が出来ている栗田と堺に関しては、明日樹と飯島が教えることにして、他の一年生に関しては、時間を分割して、一つ一つの教科の基礎から、叩き込んでいく必要があった。
「……ということで、楓ちゃんと茅ちゃん、お願い」
 同学年に編入することになっている楓は、数学と物理に関しては、ほぼパーフェクトだったので、基礎さえ覚えていない香也たちを教えることは充分にできた。全科目的にパーフェクトだった茅は、他の一年に対して、なんでも教えることが出来た。
 教科書や参考書をちらりと一瞥しただけで、すらすらと内容を暗唱してみせる茅に、全員が畏敬の念を込めて注目する。
 試しに、茅に二年生の問題をやらせてみたところ、それもさらさらと解いてしまった。
「……すごいな茅ちゃん……。今までどこで勉強していたんだ?」
 飯島舞花が呆れたような声を上げると、茅は小首を傾げて、
「全部、仁明に習ったの」
 と、平坦な口調で答えた。
 その後、茅は、難関校のかなり捻った入試予想問題もさらっと解いてみせたので、結局、終わりの方では、二年生も含めて、全員、分からないところがあったら、茅に聞きにいくような感じになった。
 どんな問題を出されても、茅は、答えられない、ということがなかった。

[つづき]
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  • 2006/05/17(Wed) 01:14 
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