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彼女はくノ一! 第四話 (4)

第四話 夢と希望の、新学期(4)

「みんさん、おめでとうございます。今年もよろしく」
 生徒たちには「ショコタン」と呼ばれることもある岩崎硝子先生は教壇に立つとまずは新年の挨拶をした。
「今日はこれから体育館で始業式がありますので、手短に。
 すでに知っている人もいるようですが、今学期からこのクラスに二名の生徒が転入してくることになりました」
 岩崎先生は自分の後ろについてきた二人を示して黒板に「加納茅、松島楓」と転入生の名前を書く。
「本来なら少し時間をとりたいところですが、今日はすぐに体育館に移動しなければならないので、手短に一言づつ、自己紹介を」
 先生にそう即されて、
「加納、茅、なの。よろしくなの」
「えっと……松島楓、です……」
 と一言づつ挨拶をし、ぴょこんと頭を下げた。それを確認し、岩崎先生はすぐに生徒たちに指示をした。
「……じゃあ、みんな、廊下に出て、体育館に移動。
 加納さんと松島さんはみんなの後に付いてきてください。委員長。二人の誘導をお願いします」
 生徒たちは岩崎先生の指示に従いにながら、内心では、
『……ショコタン、逃げたな……』
 と思っていた。
 生徒たちは全て地元民なわけで、昨年末、商店街で二人の顔を見ていない生徒のほうが少ない。質疑応答の時間を作れば、それこそ収拾がつかなっくなったろう。教師生活一年目の岩崎先生はまだまだ生徒たちを抑える技術に長けておらず、クラス中の生徒が盛り上がっり歯止めがきかなくなると途端に狼狽した態度を示す。そうした経験不足も含めて生徒たちには受けがいいのだが……本人は、割と自分の未熟さを気にしているらしく、ホームルームの収拾がつかなくなった後など、職員室で落ち込んでいるのを何度か目撃されていた。

「ほんとにケーキ屋の猫耳」、「トナカイ」、「やっぱあのショッピングセンターの」、「職員室で男子の転入生が女の先生に抱きつかれてたって」、「胸が」、「本当に狩野んところに」、「ああ。もう一人、二年の転入生も」、「それどこのエロゲですか」……。
 もちろん、体育館に移動中も生徒たちはこそこそ近くの仲間たちと話し合っている。
「……はは。あまり気にしないで」
 委員長、羽田歩は移動中、茅と楓にそっと忠告した。
「今はみんな興味本位で騒いでいるけど、すぐに飽きると思うから……」
 羽田歩は小柄でおとなしそうな女生徒で、おとなしく押しが弱いのをいいことに、多数決でクラス委員を一年間、押しつけられている。
 ちなみに視力はよく、眼鏡は掛けていない。
「いいの。だいたい、本当のことだし……」
 そのな羽田歩に、狩野茅は恬淡とした口調で答えた。
「荒野、さっきヴィに抱きつかれていた。らぶらぶなの」
 羽田歩は三秒ほど棒立ちになって歩みを止めた。
 いきなり立ち止まった羽田歩の傍らを、生徒たちが不審そうにみながら通り過ぎていく。自分をみている生徒たちの様子に気づき、慌てた羽田歩が、慌てて茅たちを追いかけた。
「……か、加納さん!」
「茅でいいの」
 追いついた羽田歩の呼びかけを、加納茅は冷静に訂正した。
「このクラスにはもう一人、カノウがいるし、二年には荒野もいるの。
 だから、姓ではなく名を直接いうのが、個体識別の方法としては合理的で有効なの」
 羽田歩は、茅の発言を理解して呑み込むまで、さらに数秒の時間を要した。
 歩きながら、羽田歩は茅の隣にいた楓の顔をまじまじとみる。楓は、若干ひきつった顔で愛想笑いをするだけだった。
「それじゃあ……茅さん。その……。
 荒野、って……お兄さんのこと?」
 羽田歩は頭の中で与えられた情報を整理しながら、ゆっくりと茅に問いかけた。周りの生徒たちも聞き耳を立てている。
「誰かに聞かれたら、兄弟、と、答えるように、と、いわれているの」
「ぎ、義理の……なんです。最近、ようやく一緒に住みはじめたばかりの。だから、まだ本人も、実感湧いてないみたいで……」
 楓が、慌てた様子でフォローを入れる。が、その慌てようが見物していた生徒たちの猜疑心を煽っていることを、楓自身はあまり自覚していない。

 そんなことを言い合っている間に体育館に到着。一年A組の生徒は所定の場所に列を作り、始業式が始まるのを待つことになった。ここまでくると、さすがに私語を交わす生徒はいない。
「あー。始業式を始める前に……」
 全校生徒が揃ったところで、教頭先生がマイクの前に立った。
「新しい先生がたをお二人ほど紹介させていただきます……」
 一人目に紹介された二宮浩司という若い男の先生は、さして生徒たちの関心を引かなかった。黒縁眼鏡に三七分け、といういかにも真面目そうな外観に穏やかな話し方。産休をとることになった前田先生の代理だという。
 しかし、その次ぎに紹介された女性が壇上に姿を現すと、体育館中に「おおおおぉお……」というどよめきが響く。容姿が整った若い女性、というだけでも十分に注目に値するが、ブロンド。青眼。浅黒い肌。
「厳密にいうと、わたしはこの学校のセンセイではありません」
 どっからどうみてもガイジンな、風貌の女性は、流暢な日本語で自己紹介をはじめる。
「わたしは、カルネアデス財団国際語学教育研究所、という所に所属する職員です。クレオール文化……混成言語文化や、母語以外の言語……外国語を学習する過程について、研究しています。世界中の、語学学習の現場に赴いて、プログラムやカリキュラム、それに、教えられる側が、どうやって母語以外の言語を学んでいくのか、ということを研究するのが、わたしたちの仕事です。
 この学校には、この国、日本の初等英語教育の現状を自分の目で確かめるために、自治体に無理にお願いして入れさせて貰いました。
 正式なセンセイというわけではありみあせんが、研究に協力していただく代わりに、わたしが語学教育について協力することになっています。授業にも参加しますし、それ以外にも、なにか質問があれば気軽に声をおかけ下さい。
 シルヴィ・姉崎と申します。
 フルネームはちょー長くて、シルヴィス・ジョゼフィーヌ・カテリナ・サンタマルタ・エリス・ジェリカ・ジェシカ・マグダレーナ・アンジェリカ・エレンディア・アゴタ・ナンシー・クロエ・クリス・クローディア・カルネアデス・姉といいます。
 シルヴィ、ないしは、ヴィと呼んでくださって結構です」

[つづき]
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