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髪長姫は最後に笑う。第四章(45)

第四章 「叔父と義姉」(45)

 学校側が荒野たちのために用意した小テストは、現代国語、英語、数学、科学の四科目分の問題をコピー用紙四枚分にまとめたものだった。解答用紙も一科目につき一枚、四科目分ある。
 数日に渡る勉強会で、日本の学校がどういう問題を用意するのかある程度把握していたので、特に迷うことなく解くことができた。勉強会がなければ、現代国語や英語の問題は、「問題文の意味」すら読みとれるずに終わった可能性もある、と、問題をみた荒野は思った。
『……学校の中でしか通用しない、特殊な用語や用法が多すぎるよなあ……』
 というのが、その小テストに望んだ時の荒野の感想である。

 監督にあたった大清水先生は、最初に、
「一科目につき三十分で解答できる問題を用意したつもりだ」
 といい、制限時間を最大で二時間、と設定した。
「全部出来たものから、帰ってよろしい」
 実際には、二時間もかけた者はいなかったが。

 最初に提出したのは茅だった。試験開始、の合図から、二十分も経過していない時点でさっさと提出した。
「……もう、いいのかね?」
 実質上、解答を書き込むのに要した時間、しか経過していないように思えた大清水先生は、当然そう確認する。
「問題、簡単すぎるの」
 茅の解答用紙は全て埋まっていた。大清水先生がざっとみた感じ、ほとんど正解しているようにも、見えた。

 それから約十分後に才賀孫子が解答用紙を提出する時、孫子は大清水先生に対して「問題文のこことここに誤字があります」と指摘さえ、して見せた。

 荒野と楓が回答欄を埋め尽くしたのは、才賀孫子が提出してからさらに十分くらい後。
 それでも試験開始から四十五分ほどしか経過していない。
「……理科系、まとめて一科目扱いで、物理の問題が多くて化学系の問題が少な目だったのはラッキーだったな……」
「……やっぱり英文法ってまどろっこしいと思います……」
 そんなことをいいながら、解答用紙を提出した荒野と楓は、大清水先生に頭を下げて、生徒指導室から去っていく。

『……あいつら……どういう生徒だ?』
 それぞれの解答用紙を点検しながら、大清水先生は考え込んだ。
 最初に提出した加納茅が全科目、ほぼ満点。すくなくとも、大清水先生がざっと見たところ、間違っている箇所を見つけるところができなかった。
 才賀孫子も同じようなもので、ただ、何カ所かのケアレスミスをしていたので、辛うじて満点ではない。それでも、平均で九十点以上はとっているだろう。
 加納荒野と松島楓は、科目により得手不得手があるようだが……それでも七十点から八十点以上はとれているようだ。二人とも、ひっかけに近い応用問題はだいたい正解していて、本当なら点のとりやすい選択問題を間違えたりする、という傾向があった……。
『……少なくとも、学力的には落ちこぼれではなさそうだ……』
 と、結論するしかなかない。
 しかし、それ以外の部分で……かなり扱いの難しい生徒たちのようだだ、とも、大清水先生は思った……。

 試験を先に終えた加納茅と才賀孫子の二人は、廊下で荒野たちを待っていた。
「加納!」
 孫子は、荒野が生徒指導室から出てくるなり、話しかけてきた。
「……もう少し、この子に警戒心持たせなさい。
 この子、わたくしが来るまで男子生徒に囲まれていたのよ……」
 どうも孫子が、茅を取り囲んだ連中を追い払ったらしい。
 ……その方法は、問うまい……と、荒野は思った。
「荒野、これから、茶葉、買いに行くの」
 下駄箱のある玄関口へ向かって歩き出しながら、茅は荒野にいった。
「絵描きの所、お客さん、たくさん……」
「……あー……どうも、そうみたいですねぇ……」
 携帯の着信を確認した松島楓も、茅の言葉を確認した。
「香也様と柏さんから、救援要請のメール、来てます……」
 楓は、メールに添付された写真を荒野に示した。

 狩野家のプレハブに、制服姿の生徒たちがみっしりとすし詰めになっており、その中央あたりに、かなりげんなりした様子の狩野香也の顔もみえる……。

「……お茶もいいけど、おれ、腹減ってきたなあ……」
 なんとなく香也の現在の境遇を把握した荒野が、考えながら、いった。
 時刻的にも、昼前である。
「この集まってる奴ら、メシの用意しているのか、問い合わせてみて。
 用意してないなら、真理さんにまた台所貸して貰おう……」
「パスタとサラダがいいの。
 紅茶に合うし、作るのにあまり時間がかからない……」
「あー。パスタの乾麺は、たしか買い置きがかなりあったなあ……五キロくらい? 何人来ているのかわからないけど、そんだけあれば、多分、足りるんじゃないかな?
 あとはサラダと、ソースの材料か……茶葉と一緒に買ってくるから、茅、必要な材料、書き出して……」
 茅と孫子が材料のメモを書いている間に、楓が問い合わせのメールをやりとりする。
「みなさん、やはり、お昼の用意はしてきていないそうです。
 真理さんからも、台所の使用許可でました」
「狩野と楓は買い出し、わたくしと茅は先行して、下準備……で、よろしくて?
 あなたたち、例の見えなくなる歩き方でいったら、早いでしょ?」
「それでいくか。パスタ茹でるのにも、先にお湯が沸いていた方が早いし……」
「現時刻ひとひとさんはち」
「これから商店街寄って……」
「商店街、荒野と楓の顔知っている人、多いの。あの歩法使うところ、目撃される可能性高くなる……それに、少し遠いけど、ショッピング・センターのほうがいい茶葉、置いているの」
「じゃ、茶葉は、ショッピング・センターのいつもの店で買ってくる。
 それと、このメモのな。
 狩野家での合流時間は、ひとふたまるまるを予定、ということで。
 遅れそうだったら、連絡する」
「了解」、「わかりましたわ」などの声が帰ってくる頃に、ちょうど下駄箱の置いてある玄関口につく。
 その後、校門前で、茅と孫子、荒野と楓の二組に別れ、それぞれの目的地に散った。

 ほぼ同時刻、二宮浩司こと二宮荒神は、学校の裏手にある、人通りの少ない路地にいた。
「……やれやれ……」
 荒神は黒縁の伊達眼鏡を親指の腹で押し上げ、周囲を見渡す。
 誰もいないように見えたが、荒神は大仰に肩をすくめ、声に出してこういった。
「本気で、この程度の人数でこのぼくを押さえられると思っているんですかぁ? 姉崎はぁ?
 こいつぁ、随分とまた、過小評価されたもんだなぁ。舐められているよ。うん。すっごく舐められている」
「……まったく……」
 荒神の目前に、シルヴィ・姉崎が出現する。
「こんなもん、挨拶みたいなもんでしょ。本気でやるつもりだったら、気配ぐらい消していくわよ。
 あんたみたいな規格外のと事を構えたくないから、こうして正面から姿を現しているんでしょ? はっきりいうと、あんたみたいなのまともに相手にすると損耗が激しいばかりで、割にあわないの。対費用効果的に……」
「……でも、たとえ雑魚とはいえ、これだけの人数で囲まれちゃうと、ぼくのほうも血が騒いじゃうなぁ……」
「リアリィ?
 ……うーん。あんたとやりたがっている手練れ、いないこともないんだけど……。
 こっちの勝負は、今後の関係には響かないって断言できる?」
「やだなぁ……。ぼくがその手のまどろっこしい駆け引き、苦手だってわかっているじゃないか……。
 それに、荒野君の近くで、血の匂いをつけたくないんだよねえ……。あの子、勘も鼻も効くんだから……。
 そのかわり、少しは手応えのあるの、あてがっおくれよぉ……」
「……ふん……。それじゃあ……ええっと。
 こういうとき、日本ではこういうんだっけ?
『センセイ、お願いします!』」
 シルヴィ・姉崎の合図を受けて、白鞘を手にした初老の男が進み出る。
「センセイ、って柄でもありませんがね……。
 手前、居合いの銀二というケチな野郎でござんす。荒神さんのご高名はかねがね。一度お手合わせをしていただきたいと思っておりやした所で……」
「へぇ……人斬り銀二さんかぁ……姉崎も面白いの引っ張ってくるねぇ……」
 二宮荒神は、舌なめずりをする。
「さぁて……退屈させてくれないといいけど……」

[つづき]
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