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彼女はくノ一! 第四話 (6)

第四話 夢と希望の、新学期(6)

「……おやぁ? 新学期早々、客さん、たくさん……」
 帰宅すると、間の悪いことに羽生譲が玄関口に出てきた。どてら姿にすっぴん咥え煙草、というだらけた恰好でもアンニュイな感じでて、かえって様になっている。そんな羽生譲をみた香也のクラスメイトたちが、「おねぇさん? まさか母上?」、「母上はないだろ。いくらなんでも若すぎるし」、「いやのこナチュラルに飾り気ないところがまた……」、「年上、おねーさん、はぁはぁ」などと、例によってどよめく。
「……な、な、なに?
 ……こーちゃん、なんなの、この子ら?」
 流石の羽生譲も、なんか異様なノリになって来ている香也のクラスメイトに、引きぎみになっている。
「……んー……」
 狩野香也は珍しく頭を使った。
 ……ここは一つ、関心の対象を分散して、自分に集中しないようにしむけるのが上策ではないか……と。
「この人ね、羽生譲さんといって、同人誌作るときの原作者。大将。チーフ。総指揮官。メイン・プロデューサー。
 ぼくなんか、ただ絵を描いているだけだから」
「「「おおおおおっ!」」」
 香也が羽生譲のことをそう紹介すると、香也のクラスメイトたちが鳴動する。
「「「こんなに綺麗な人があんなやーらしい本を!」」」
 いきなり絶叫された羽生譲は、のけぞって三歩ばかり後退した。
「だ、だ、だ、だからなんなの、君たち? それに、そんな恥ずかしいこと、大声で叫ばない!」
「先生!」
 クラスメイトの一団から二人の女生徒が進み出る。
「わたしたち、先生のファンなんです! サインください!」
「……あら、お客さん?」
 奥の方から狩野真理も出てくる。
「「「おおおおおっ!」」」
 香也のクラスメイトたちが(以下略)
「「「こんなに若くて綺麗な人がお母さん?!」」」

「……んー……同人誌とかマンガに興味ある人は、譲さんについていって。
 譲さん、お願い」
 香也と柏あんなが頭を下げると、なんとなく事情を察した羽生譲は、頷いた。
「……はいはいー。んじゃあ、エロい本が好きな奴はこっちゃこいー、っと……」
 思いっきり脱力したやる気のない声を出して、希望者を募って自分の部屋へと誘導する。香也についてきたクラスメイトの半分ほどが、羽生譲につられて母屋の中に消えた。
「……んー……真理さん、
 途中でコンビニ寄って飲み物とか買ってきたから、なんも用意しなくていいです」
 香也はコンビニのロゴが入ったポリ袋を掲げて、真理にそういった。人数が分散されたことでいくらか精神的に余裕が出てきたらしい。
「……そっかあ、君たちもマンガ描くんかぁ……いや、実はな。今度の夏コミ用の要員、今から募集中でな……」
 廊下の向こうから羽生譲の声が聞こえる。ちゃっかり、夏コミ用要員のリクルートを敢行しているらしい。
「……んー……残りは、とりあえず、こっち……」
 こんな人数を一遍に母屋に入れるつもりにもならず、香也は庭のほうに案内する。寒いが、幸い晴れている。プレハブの中の絵を見せながら、庭で飲み物でも振る舞って時間を潰せば、彼らの興味も収まるだろう……と、香也は思った。
 プレハブの前で香也は買ってきた紙コップをその場にいた全員に配り、ペットボトルのソフトドリンクを自分の紙コップに注ぐ。
「飲みたい人は、自分で注いで飲んでね」
 と言い渡し、自分はプレハブの中に入り、スチール棚の上に放置されているキャンバスや紙の束を外に持ち出しはじめた。
「見たい人は、好きに見て」
 といい、プレハブの入り口近くに立っていた生徒に自分が描いた絵を手渡す。
 香也が何往復かするうちに、自然と香也の絵を回し見する体制が出来上がってしまった。しばらくは香也が出した絵を一通りまわし見て、樋口明日樹と柏あんなが回収してプレハブの中に戻す、という流れが続いたが、最初黙って差し出される絵をみていた生徒たちも、次第に熱心に香也の絵をみるようになっていき、質問が飛び出たり、「前の絵、もう一度みたい」というリクエストがあったり、で、結局、ほとんどの生徒がどかどかとプレハブに乗り込んで、直接、自分らで選んだ絵を眺めるようになった。
 大判の絵になると、一人が抱えて他の大勢が眺める、ということにもなる。
「おい、これ、今日来た転入生だ……」
 ついには、布をかぶせておいた、昨日描いたばかりの松島楓と才賀孫子の絵を見つけだされたり……。
「……ふーん……」
 樋口明日樹がなにかいいたそうな顔をして、香也の顔をまじまじと眺めて鼻を鳴らした。
「……ちょ、ちょっと、着替えてくる……」
 香也はプレハブを抜け出して母屋の自分の部屋に行き、そこで、今は学校でテストをやっている筈の松島楓宛に「出来るだけ早く帰ってくるように」という内容の救援メールを出した。
 転入生四人組が帰ってくれば、来客者たちの興味もそっちに移り、自分のことなどすぐに念頭になくなる筈だ……と、香也は思った。
 着替えて戻ると、全員が狭いプレハブの中に無理に入って立錐の余地もない状態で、その中央で、樋口明日樹が一枚一枚香也の絵を紙芝居調にめくりながら、詳細な解説を加えていた。入り口近くにいた柏あんなが香也が帰って来たことに気づくと、「狩野君、中央に」と誘導し、「はい、みんな、道空けて。記念写真を撮るから……」と、誰にも異論を挟む間も与えず、携帯のカメラでプレハブ内の光景を収めた。

 試験を終えた転入生四人組は、香也と柏あんなのメールで狩野家の異変を察知した。ちょうど昼時ということもあり、四人で来客者の食事を用意しよう、ということになる。もともと実戦を想定した際の動きについては機敏な四人でもあり、最近では、加えてチームワークめいた「阿吽の呼吸」もできはじめている。大方針が決まると各々の資質に応じた役割分担を数秒もかからずに割り振り終え、校門前で二手に分かれて準備を行うことになった。
 転入生四人組のうち、才賀孫子と加納茅の二人は、いったん荒野たちが住むマンションに戻り、鍋やティーセットなど、必要な道具類をまとめる。着替えてから行く、という茅を置いて、孫子は自分で持てるだけの道具類を持って狩野家に帰った。
「ただいま」の挨拶もそこそこに台所に直行し、真理にも声をかけて、狩野家で一番大きな寸胴鍋に水を入れて火にかける。パスタを茹でるときには麺を入れても水温が下がらないよう、出来るだけ大量のお湯を用意するのが常道なのである。同時に、紅茶用に、薬罐でもお湯を沸かす。
 お湯が沸くまでの間を利用して自分の部屋に戻り、制服を私服に着替えてエプロンもつける。台所に戻ると、メイド服に猫耳装備の茅が台所に立って、シンクに張った湯沸かし器のお湯で茶器を暖めている所だった。
 どうやらこの恰好が、茅にとっての勝負服らしい……と、孫子は理解している。
「あ。どうも、お疲れ様です」
 孫子や茅が来たことに気づいたのか、柏あんなも台所に入ってくる。
「なんか、わたしが不用意に煽ったせいでこんな大げさなことになっちゃって……」
「……飯島には連絡した? あの子、あとで仲間外れにされた知ったら、確実に拗ねますわよ」
 あやまろうとする柏あんなの言葉にかぶせるようにして、孫子はそういう。

[つづき]
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