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彼女はくノ一! 第四話 (7)

第四話 夢と希望の、新学期(7)

 柏あんなが連絡すると、私服姿の飯島舞花と栗田精一はすぐに到着した。学校からまっすぐ舞花のマンションに帰って、二人で過ごしていたらしい。
「そろそろお昼にしようっていっていた所だから、ちょうどよかった」
 台所に入ってくるなり舞花はそういって、手伝いを申し出てくれた。
「玄関にいっぱい靴あった。なんか、人数多そうだもんな」
 茅が、「プレハブにも同じくらいいるの」というと、舞花は「いったいなにが起きたんだ?」と首を捻る。
「あの……まぁくん……堺君も呼びましたから。
 狩野君が堺君と話し込めば、他のみんなも少しは遠慮するかと……」
 柏あんなは小さくなりながら、片手を上げてそういった。
「まぁくん……堺君も、狩野君と話し、したがってたし」
「むぅ……」
 指折り来客の人数を数えていた茅が、不満そうな声をあげる。
「……カップ、全然足りないの……」
「……ああ」
「この人数だと、流石になぁ……」
 孫子と舞花は顔を見合わせて頷き合った。
「あ。狩野君、来る途中で紙コップ、余分に買ってきてましたけど……」
「……紙コップ……」
 目に見えて、茅は動揺した。
 どうやら、内心で美学的な問題と目の前の現実とのすり合わせが進行しているらしい……。
「……ま、まぁ、ないもんはしかたないんじゃないか? とりあえず、お湯も沸いたし、庭にいる人を優先で、お茶、いれに行かないか? わたしも手伝うから……」
 飯島舞花は茅に妥協案を提示した。
「外にいる人、寒いだろ? 早く行こう、メイドさん……」
 茅は「むぅ」と唸りながらも、てきぱきと慣れた手つきでティーポットに茶葉とお湯をいれ、蒸らし時間を計る。
 茶器を抱えた舞花と茅が庭に出ていくのと入れ違いに、食材を抱えた荒野と楓が台所に入ってきた。
「お。やってるやってる」
 羽生譲が様子を見にやってきた。
「今日、人数多いだろ? 天気いいし、この人数だから、ビニールシート敷いて庭で食事しないか?」
 羽生譲と加納荒野とで、庭の準備をすることになった。

 荒野たちから食材を受け取ったエプロン姿の孫子は、ホールトマトの缶詰を平鍋にあけて火にかけ、冷凍のシーフードミックスをレンジで解凍し、乾麺を景気良く煮立ったお湯の中に空ける。
 茅が、解凍したシーフードミックスをホールトマトの鍋に入れ、アンチョビ、塩、胡椒、それに山椒で味を調え、あまり煮込みすぎないうちに弱火にする。その後、茅はカップを盆に乗せて自分で持ち、ポットを飯島舞花に持たせて庭のプレハブに向かった。
 才賀孫子は柏と楓に手伝わせて、サラダを作り始める。

 飯島舞花を伴った猫耳装備メイド服の茅がプレハブを訪れると、プレハブ内で香也の絵を肴にだべっていた連中は目を剥いて感嘆した。
「メイドだよメイド! 猫耳メイドだよ!」、「商店街で乱入した時の恰好だ! 間近でみると迫力! しかも可愛い!」などと一通り騒いでから背後の舞花に気がつき、「あ。飯島先輩。どうも」などと慌てて挨拶しはじめる。長身で整った容姿を持つ飯島舞花は、校内ではそれなりに有名人だった。
「いいからいいから。
 それより、ここ狭いから、みんなで庭に来てよ」
 庭では、羽生譲と加納荒野がビニールシートを敷いて、準備を終えたところだった。
「あ。ガイジンさんだ!」
 荒野の半端に伸びたプラチナ・ブロンドを見て、何人かの生徒が声を上げる。
「どうもうぉ。今度転入して来た、加納荒野といいますぅ」
 荒野は、茅の頭を平手で軽く叩きながら、にこやかに挨拶する。
「実は、これの兄でして……」
「おお。そういや同じ加納!」、「って、似てねー」、「いや、カノウコウヤって……同姓同名?」、「字は違うんじゃ?」……。
 などと騒ぐ生徒たちにカップや紙コップを持たせ、憮然とした表情でお茶を注いでまわる茅。本格的な紅茶を紙コップで飲ませることには、相変わらず忸怩たる思いがあるらしい。
 庭に出来てきた生徒たちにお茶が行き渡る頃には、ポットに用意した分のお茶が綺麗になくなったので、茅と舞花、それに羽生譲は、一旦母屋に戻ることにした。
 荒野はそのまま庭の一団と合流し、プレハブから持ち出した香也の絵をみんなと見ながら雑談に興じている。

 茅たちが台所に戻ると、才賀孫子大きなボール数個に春野菜と海草のサラダを盛りつけ、作ったばかりのドレッシングをかけ終わったところだった。
「これ、先に庭に持って行って」
 楓と飯島舞花に指示し、孫子はパスタのゆで加減を確かめる。
 茅は、ポットに新しいお茶を用意しはじめ、羽生譲は「残りの連中、庭に出しとくわ」と自分の部屋に向かう。残りの生徒たちは、羽生譲の部屋でマンガかなにかを読みふけっているということだった。
 孫子が茹であがったパスタを鍋からとりあげ、大皿数枚に分けて盛りつけ、その上に茅が調理したソースをかける。
 孫子と柏あんながが出来あがった大皿のパスタを、茅が新しいお茶を、庭に持って行くのと前後して、羽生譲が引き連れてきた一団が庭に到着、合流を果たす。堺雅史もいつの間にか庭に来ていて、香也と制作中のゲームの資料を見ながら、なにやら話し込んでいた。
 そこで、大皿のパスタやサラダを各自の紙皿に取り分けながら、全員で食事、ということになった。
 加納荒野、加納茅、松島楓、才賀孫子などの目立つ風貌の転入生が合流し、早々に他の生徒たちとうち解けて話し始めたこと、それに、出された料理がかなりうまかったこと、香也が堺雅史とスケッチブックを片手に真剣に打ち合わせをはじめたこと、などの要因で集まって来た生徒たちの興味は分散され、全体に和やかな雰囲気の集まりになった。
 冬とはいえ、快晴で無風のその日、外にいても耐えきれないほどの寒さは感じられない。茅の紅茶がなくなった後は、帰りに香也が買ってきたペットボトルが飲み物としてまわされ、用意した料理が残り少なくなる頃には、ほぼ全員がまったりとした気分に浸るようになっていた。

 そんな頃、不意に帰宅した二宮浩司がいきなり加納荒野の背中に抱きつき、一部の女生徒たちを驚喜させた。

[つづき]
目次

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Comments

初めまして、
楽しく読ませて貰ってます。
いきなりですが、
第四話 夢と希望の、新学期(7) の
パスタ料理を作る時、ポールトマトの缶詰
と言う物が出て来ますがホールトマトが一般的
ではないかと思われますがどうでしょうか?
気になってしまいコメントしてしまいました。
因みにホールトマトの缶詰
http://www.rakuten.co.jp/oliva/473198/

  • 2006/03/23(Thu) 03:36 
  • URL 
  • thefortune #QZX/wIn6
  • [edit]

ご指摘どうもありがとうございました。

完全に誤字っすね。
修正しておきました。

毎日更新ということで常時突貫工事状態なんで、わりと間違いは多いです。
誤字、脱字……あと、ストーリー的な辻褄
(「この時点でこいつがこんなこと知っているわけないじゃん!」逆に「知ってるはずじゃん!」)
とか、チェックしはじめるときりがない様な状態です。
更新速度落としたくないのと、これ以上作業時間割けない関係で、なかなか細かい所まで手がつけられいので心苦しいところですが、ご指摘があれば随時修正しますので、今後もなんか気がついたらよろしくお願いします。

感謝多謝<(_ _)>

  • 2006/03/23(Thu) 04:02 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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