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彼女はくノ一! 第四話 (9)

第四話 夢と希望の、新学期(9)

 羽生譲のマシンは自作機で、羽生の部屋に案内された堺雅史は、その無骨な筐体のメインスイッチを入れる。ほぼ同時に、羽生はプリンタ兼用スキャナ、いわゆる複合機の電源をいれる。スーパーカブを愛車としていることからも推察できるように、羽生譲の商品購入選択基準は、購入時点での性能/価格比率、つまりコストパフォーマンスを最重視する傾向がある。
「……ハイスペックですねぇ……」
 立ち上げ時に表示されるハードウェア情報を目にした堺が、目を丸くした。
「絵とかやってると、CPUのベンチとメモリは多いほど良くてな。
 なんだかんだと増設したりパーツ入れ替えたしちゃうんだ、これが……」
 羽生が割合頻繁にパーツの増設や入れ替えを行うことも、マシンがメーカー制ではなく自作機になっている一因になっている。
「……まあ、どんなに高性能になっても、わたしら絵描きにはアナログな道具のが一番しっくりくるんだがな……」
「……そういうもんなんですか?」
「んー。慣れの問題っていえばそれだけだけど、さ……パソコンのお絵かきソフトってのは、だいたい便利過ぎるんだよ……機能ありすぎ。
 例えば、いくらでもアンドゥできたり、レイヤー重ねられたりするだろ? ああいうの、アナログの道具に慣れていると、どうもずるっこしているようでな……」
 羽生譲は傍らにいる狩野香也を示す。
「うちのこーちゃんにもな、前に一度触らしてみたんだ、その手のソフト。
 何種類か触らせてみたけど、結局一番使いたがったのは、アナログの画材を愚直にシミュレートするシンプルなソフトだったなぁ……」
「……ん……」
 香也も、そういう話題だと話しの輪に入る。
「……パソコン……絵の具で汚れないし、道具の手入れもしなくていいし……便利なんだけど……画面小さいし、目は粗いし……細かいところまで書き込む作業には、まだまだ向いていないと思う……」
「画面は、今、大きな液晶どんどん安くなってきているけど……ドットの大きさは……うーん。たしかに、当分変わらないと思う……」
 そんなことを話しながら、堺は立ち上がったマシンを操作し、ブラウザを立ち上げてタイピング・タッチでアドレスを入力、ソーシャルネットのログイン画面が表示されると、ユーザーネームと暗証番号を素早く入力、ゲーム制作の関係者しか入れないページを表示させる。
「後で、狩野君のIDも発行するから……」
 といいながら、スキャナで香也のラフ・スケッチを取り込み、その画像を一枚一枚アップしていく。途中からスキャナの操作を羽生が手伝ってくれたので、枚数がある割には、スムーズに作業が進行した。
「……後は、他の人たちの反応待ちなんだけど……」
 堺雅史は狩野香也をちらりと見て、
「狩野君、自分のID、発行してみる? 今アップした絵の反響、後で、自分で確認できるよ」
 ソーシャルネットのユーザー登録画面を表示させた。
「こっから先は、こーちゃんにやらせないと……自分でやらないと、いつまでも覚えないし……」
 羽生譲にも背中を押されて、狩野香也は、おそるおそる、といった感じで、たどたどしくキーをタイプし、フォームに必要事項を入力していく。登録にはメールアドレスが必須だったが、以前、羽生譲が香也専用に作っておき、全然使用していないフリーのアカウントを香也は持っていた。
 最後に、ユーザー名:「kouya」、パスワード:「*****」と入力すると、登録作業は終わった。
 香也と交代して再び堺がキーボードに向かい、しばらくタカタカ打鍵する。
「うん。これで、狩野君、今のサイトに入れるようになったから」
 堺雅史は香也に向き直ってそういった。
 羽生譲は、堺にログイン画面を表示させ、そのアドレスをブックマークに登録する。
「いつでも絵の感想みれるし、自分で絵をアップもできる。あと、定期的に覗いてくれると、助かる。キャラクターの設定変更とか、まだ頻繁にあるから……」
「……んー……」
 香也はしばらく考えてから、堺に聞き返した。
「その絵なんだけど……やっぱり、色、ついていたほうがいいのかな?」
「……そのほうが、他の人たちもイメージしやすいと思うけど……」
「……んー……じゃあ、今、色つけちゃう。
 羽生さん、この間のソフト、どうやってはじめるんだっけ?」
「……あー。はいはい。あれね……」
 羽生譲は、ペンタブレットに付属していたお絵かきソフトを立ち上げる。
「ここ、クリックすると、ファイル名を表示するから。さっき取り込んだ絵は、このフォルダな……」
「……んー……こう、かな?」
 香也は、適当に開いたファイルの内容、ラフスケッチの線画が表示されるのを確認してから、ペン先と色を選択し、ちゃっちゃと色を乗せていく。水彩風の淡い色遣いで、大まかに服、顔や手など露出している肌色の部分、それに髪の毛に色を乗せただけだが、それだけでも、ラフな線のみの状態と比べると、かなり見栄えがした。
 ソフトには不慣れ、とかいっていた割には手際が良く、たちまち二枚、三枚、と、仕上げていく。
「おい! やっぱすげぇよ、狩野!」、「はっえぇー……」、「これ、よくみると、うちの制服なんじゃないか?」……。
 例によって騒ぎはじめるギャラリー。
「……んー……ぼく、学校の制服、これしか知らないし……」
 香也は手を休めずにそう答える。取り込んだスケッチは三十数枚あったが、その全てを着色し終わるのに二十分ほどしかかからなかった。その着色作業で、香也はそのお絵かきソフトの基本的な操作を、だいたい飲み込んだ。
「……堺君。これ、またさっきのに上げなおすの、どうすればいいの?」
「……う、うん。まず、さっきのログイン画面だしてログインして……」
 堺の指示通りに自分でやってみて、香也はなんとか新たに着色した絵のファイルをアップロードする。
「……狩野君……慣れてない、っていってたけど……飲み込み、早いよ……」
 全ての作業を終えた後、堺がそういうと、香也は頭を掻きながら「……んー……」とうめいた。
 どうやら、照れているらしい。
 その時、なぜかギャラリーからぱらぱらと拍手が起こった。

 その後、楓が堺に質問して、ゲーム制作に使用しているスクリプトを配布しているサイトを開いたり、そのスクリプトに関して簡単に説明したりする。
 一通りの説明を聞いた後、楓は「これなら、なんとか自分にもできそうです」といったので、堺は楓もゲーム制作のソーシャルネットにログインできるようにした。
「……そういえば、堺さんは、このゲームで、どういう作業しているんですか?」
 楓に尋ねられ、堺は照れたような表情を浮かべながら、答える。
「ぼく、一応、スクリプト書きで、そのつもりで制作に入ったんだけど……最近では、年少者組のとりまとめ役、みたいな仕事が多くなってきている……」
 ゲームの制作者たちも、年齢的にはバラつきがあり、同年輩の人間のほうがなにかと意見をしやすい、ということもあって、堺は、同年輩の制作者たちの間で起こる摩擦の緩衝役、みたいな作業をすることが多い、という。
「ぼく、プログラマ志望なんだけどな……」
 と堺自身は不満そうだったが、香也は、人当たりの良い堺には、そうした役割が似合っている、とも思った。

[つづき]
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