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髪長姫は最後に笑う。第五章(2)

第五章 「友と敵」(2)

「……加納君!」
 次の日の放課後、帰宅しようとしたところを加納荒野は女生徒に呼び止められた。席が比較的近い……たしか、本田類とかいう名前の生徒だ。
「なに?」
 荒野は反射的に愛想笑いを浮かべながら、返事をする。
「なにっ、て……掃除。
 もうクラスの一員なんだから、当番、さぼっちゃ駄目」
「掃除?」
 みれば、教室の後ろにあるロッカーから、箒やちりとりなどの掃除道具を生徒たちが取り出していた。
「あの……学校の掃除って、日本では……おれたち……生徒がやるもんなの?」
「……あのねぇ……」
 本田さんはため息をついた。
 ……この帰国子女は、とぼけているわけではなく、本当になにも知らなかったようだ……。
「あなたが今までいたところではどうだったか知らないけど、日本では、教室の掃除は、生徒が交代でやることになっているの。
 それで、あなたは当番であるにも関わらず、今まで掃除しないで直帰してたの……」
「……ああ。悪い。
 そうか……もっと早くいってくれたらよかったのに……」
 事情を聞いて納得した荒野は、早速鞄を自分の机に置き直して、他の生徒と同じように、掃除道具を手にする。
「みんな変に遠慮しちゃっているんだよね……君とか才賀さんとか、なんとなく近寄りがたいし……」
「……そうかぁ? おれはこの髪だからあれかもしれないけど、才賀は外見上、普通の日本人だと思うぞ……」
「普通、って……。
 あんなに綺麗な子、めったにいないって……。
 年末の商店街のあれもあるし、みんな最初はプロのタレントかなにかだと思ってたし……」
「まあ、たしかに、綺麗だとは思うけど……」
 本田にそういわれて、「……確かに才賀のやつ、学校ではなんかとり澄ましているよなぁ……」と、荒野は納得する。
 荒野にとって才賀孫子とは、楓と張り合っている時とかの、感情の動きがわかりやすい少女、という印象が強いのだが……。
「で、掃除って、まずなにすればいいの?」
「うーん……みんな、だいたい帰ったようだから、とりあえず、机を後ろに下げる。掃きやすいように」
 なるほど、本田の言葉に頷いた荒野は、教室の一番前の机に手をかけて、一挙に一列分の机を後方に下げる。
 と、なぜか教室に残っていた掃除当番の生徒が全員、目を見開いて荒野を注視していた。
 なに? と首を傾げた荒野に、本田は、
「……狩野君、よくそんなに、いっぺんに動かせるね……普通は、一つとか二つずつずらしていくのに……」
 と、呆れたような感心したような顔をして、呟いた。

「……じゃあ、外国では、学校の掃除、生徒がしないの?」
「外国全部がそうかどうかはわからないけど……」
 掃除が終わり、行きがかり上、帰る方向がだいたい同じだ、という本田と、途中まで一緒に帰ることになった。
「……おれが通っていたところは、そういうのなかったなぁ……。
 たぶん、清掃業者とか学校の職員がやっていたんだと思う……」
 荒野がまともに学校に通っていた時期といえば遙か昔の幼少時、ということになり、その辺の記憶は実はかなり曖昧だったりする。
 それでも、荒野には、学校で、自分たちの教室の掃除をした、という記憶がない。
「……ふーん……そんなもんなんだ……」
 本田が何気なく頷いたその時、
「……おーい!」
 と叫びながら荒野たちに近づいてくる者があった。ユニフォームを着ている所をみると、野球部の部員なのだろう。
「狩野君! もう部活は決まったか!」
 顔が判別できる位置まで近づいてくると、そのユニフォームの男子生徒は、荒野に向かって叫ぶように、いう。
「ええと……嘉島君、だっけ?」
 実は荒野は、以前身辺調査を行ったおり、クラスメイトの顔と名前は大体記憶している。だが、あまり記憶力がよすぎるのも不自然だと思ったので、軽く眉をひそめて思い出すふりをして見せた。
「部活って、なに?」
 嘉島と本田は、驚いたような顔をして、顔を見合わせた。
「クラブとか部活って、……向こうでは、ないのかな?」
「全くないってことはないだろう。
 向こうの青春映画とか、フットボールとかバスケとかやってるじゃないか……チアリーディングとか……」
「……ああ……そういえば、そういうの見たことあるような気がする……。
 でも、ああいうの、ほとんど大学の話しじゃなかったけ?」
「……いや、二人の話し聞いて、なんとなくわかった……」
 荒野は嘉島と本田のやりとりを遮った。
 そういえば、最初にこの学校に教科書を取りに来たときも、女子バスケ部が練習していたし、今の嘉島もベースボールのユニフォームを着ている。
「……でも、そういうのって、好きな人が集まってやるもんじゃないの?」
「うーん……本当は、そうなんでしょうけど……」
「この学校では、強制的に最低一つはなにかのクラブに入って活動することになってる。
 まあ、籍だけいれておいてあとは幽霊部員、ってパターンも実際は多いけど……。
 でも、部活真面目にやっていると、内申が良くなる……」
「……ナイシン……」
 荒野が呟いたのは、単に、その単語の意味を知らなかったからだ。
「あ。でも、ちゃんと成績良かったら、部活なんかやっていなくても、普通に進学できると思うから……」
 慌てて本田がそう付け加える。
 その様子をみて荒野は、「本田はその幽霊部員というやつなのではないか」と推測し、本田に部活の話題を振るのはやめることにした。
「……で、嘉島君……」
「嘉島でいいよ」
 ユニフォーム姿の嘉島は、冬だというのよく日焼けしていた。こっちは好きでクラブ活動をやっているタイプだろう、と、荒野はあたりをつける。
「では、嘉島。
 そのクラブとか部活で、一番早く帰れるのはどこだ?」
 荒野のその言いぐさを聞いて、「そこまで直球でくるか」と嘉島は笑った。
「……いや、おれもクラス委員だから、いきがかり上、狩野君に声かけただけで……。
 そもそも、全クラブの実態知っているわけではないから、どの部が一番楽か、なんて、なんともいえないよ……」
 慎重で、誠意のある答え方だ……と、荒野は嘉島という生徒に好感をもった。
「楽じゃなくてもいいんだ。早く終わりさえすれば。
 おれ、できるだけ早く帰って、晩飯の用意とかしなけりゃならないんで……」
「あ!」
 本田が、ぽん、と柏手を打つ。
「そういや、あれ、本当なの?
 狩野君が妹さんと二人きりで暮らしているって噂……」
「うん。本当。おれら、両親もういないし、じじいは滅多にこっちに帰らないから、最初から二人で暮らすことにした。じじいの知り合いの三島先生が、一応の保護者代わり……」
「……へぇ……ミニラ先生がねぇ……」
 嘉島が何故か目を細める。
「あの先生、いろいろ評判悪いけど、なかなかいいところもあるよな……」
 嘉島は、部活の関係で何度か三島の世話になったことがあるのかもしれない……と、荒野は思った。

[つづき]
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