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彼女はくノ一! 第四話 (12)

第四話 夢と希望の、新学期(12)

 そんな感じで、香也は新学期から、朝は集団で登校することになった。初日こそ香也の集団を遠巻きにして囁きあうだけだった生徒たちも、日がたつにつれ、次第に登校中に声をかけてくるようになる。最初のうちは、始業式の日に香也の家に尋ねてきた連中たちが、たまたまこちらの姿をみかけて挨拶してくる程度だったが、日がたつにつれ、荒野や孫子と知り合った二年生も声をかけてくるようになり、中には途中から香也たちの集団に混ざって雑談しながら登校する生徒も出始めた。
 例えば、香也と同じクラスで、初日から馴れ馴れしく声をかけてきた柊誠一などがその代表で、この生徒は樋口大樹によれば「女生徒とみれば片っ端から声をかける」という軽薄さを遺憾なく発揮し、毎日のように合流しては日替わりで孫子、楓、茅……と標的を変えて語りかけていた。もっとも、孫子は挨拶を返して後は無視、楓は曖昧に微笑んでなにも言わず、茅は柊の口から出任せっぽい軽口の矛盾点を遂一指摘したり質問したり……と、柊をまともに相手にした者は皆無だったが。
 そうした執拗さがあまり不快に感じられないのは、柊はとことん軽い性格で、女性へのアプローチさえ、真剣味をまるで感じさせない淡泊さを伴っていたからで、まるで手応えのない対応をされても一向にめげる気配を見せずに毎日のように誰かに話しかけてくる様子をみると、「やはり、登校中の暇つぶしとしてこっちに話しかけてくるのではないか?」とさえ思えるからで……そんなわけで柊は、香也たちの登校仲間の間では、いつの間にか空気のような、存在感のない存在に成り下がってしまった。

 その柊誠二は、始業式の翌日、始業式の放課後に狩野家を訪問した生徒たちの話しを聞くと、大仰に悔しがった。始業式の日、香也の周りに人だかりが出来ていたのは柊も知っていたが、その原因が同人誌だと知り、さらに、松島楓や加納茅は小テストで学校に居残る、ということを知った柊は、早々に帰宅した。
 だが……その後、香也と同行して狩野家に赴いた生徒たちが、松島楓、加納茅はもとより、上級生の才賀孫子、などの手料理を御馳走になり、また、狩野家には羽生譲や狩野真理などのイケている年上女性がいて、さらにさらに、どうした訳かパツキンかつボン、キュ、ボンのシルヴィ・姉までもが訪問してきた……と、知ると、柊誠二は地団駄を踏まんばかりに悔しがり、昨日の自分の判断を呪い、狩野香也に詰め寄って、
「狩野君、ぼくら、友達だよね。ね。今日、君の家に遊びに行っていいかな?」
 などと上目遣いに懇願し始めた。
 楓や柏あんなが引き気味に、加納茅がきょとんとした表情で見守る中、香也は、
「……んー……今日から部活始まるから、ぼく、帰り、遅くなるんだけど……」
 と曖昧に言葉を濁し、そうこうするうちに柊誠二は、昨日狩野家に訪問した生徒たちに取り押さえられ、
「てめぇなに考えているんだ」、「ごめんなー。狩野君。このナンパ馬鹿は後でおれらがヤキいれておくから」、「柊君、さいてー……」、「こいつにはじっくり言い聞かせておくから、狩野は気兼ねなく絵を描いてくれ」……などなどと、言い合いながら、複数の生徒たちに羽交い締めにされ、教室の隅に連れ去られ、始業の予鈴が鳴るまでそこで集中砲火的なブーイングを浴びた。

 柊が教室の隅に連れ去られている間に小柄な少女がとことこと楓と茅の側に近づいてきて、朝の挨拶をした後、
「部活っていえば……」
 と切り出しはじめる。
 クラス委員の羽田歩は、転入生二人に「なにかしらのクラブに所属しなければならない決まりになっている」ということを告げた。
「……部活、ですか?」
 と日々を捻る楓。
「茅、知っているの」
 と頷く茅。
 もっとも茅の学校に関する知識はだいたい羽生譲のマンガの棚から仕入れたものなので、信憑性と信頼性は著しく欠くのだが、その程度の知識もなく、「学校=同年代の子供を集めて勉強を教えるところ」程度の辞書的な知識しか持たない楓からみると、かなり頼もしく見えた。
 楓に期待を込めたまなざしで見つめられた茅は、なにか知識を披露しなければ、という思いに駆られたらしく、唐突に、
「例えば……転校生」
 と、口を開く。
 楓も、期待を込めて後に続く言葉を待つ。
「……登校中に、異性がぶつかったり体当たりしてくる」
 集団で登校してきた楓たちには、柊誠二が話しかけてきただけでぶつかってきたりしたことはなかった。
「……朝のホームルーム、教室内でその異性を発見」
 これも、当然ない。第一、昨日の朝のホームルームはバタバタしていて、すぐに体育館に移動して始業式になった。
「……そして、大体はその転入生とぶつかってきた生徒は恋に落ちるの」
 ……この展開も、自分らには当てはまらなかった……などと、真剣に耳を傾けていた楓は思った。
 楓と同じように傍らで、真剣な面持ちで茅がそんなことをいうことを聞いていた羽田歩は、「加納さんって冗談が好きなんだな……」と思った。
 イマイチ、いや、かなり滑っている気もしたが。
 そんなことをするうちに岩崎硝子先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まり、今年も平常通りの授業が開始された。

 昼休みに入り、給食を食べ終えると、茅は一人でとことこと教室の外に出て行った。あわてて楓が後を追いながら、「どこに行くのですか?」と尋ねると、
「図書室」
 と一言で茅は答えた。
「この間、見学した時にちらりとみたけど……規模的にはたいしたことがなかったけど、古い書籍も結構あったの」
 昼休みいっぱい、茅は図書室の本を片っ端からパラパラとめくって過ごした。ページをめくる速度が速すぎて、楓にはまともに読んでいるようには見えなかったが。

 放課後になると香也は美術室へ、茅は図書室へと向かう。どちらについて行こうか楓が迷っていると、「なにかあった時と帰る時には、携帯で連絡するの」と茅がいってくれたおかげで、楓は自由に行動することができた。楓は自らを茅の護衛役として任じており、茅が校内にいる限りは、そうそう大きな事件は起こらないだろうと判断する。
 一応、荒野にメールでお伺いを立ててみたところ、荒野も同じ判断をしたのか、
「おれ、晩飯の買い出しにいってくるから、茅のこと頼む」
 とのみメールで返信が来た。
 楓が少し遅れて美術室に行くと、美術部員の香也や樋口明日樹の他に、堺雅史も美術室に入り込んでいて、香也となにやら真剣に話し込んでいた。

[つづき]
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  • 2006/05/18(Thu) 23:08 
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