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髪長姫は最後に笑う。第五章(7)

第五章 「友と敵」(7)

 それは、奇妙なお茶会だった。
「うん……これは……」
「ね。いけるでしょ?」
 茅がいれなおした紅茶に舌鼓をうった源吉に、荒野は自分のことのように胸を張る。
 つい先ほどの襲撃者と被襲撃者が、向かい合って和んでいる、という構図であった。
「傷はたいしたことないな。小さなフォークの先がほんの少し刺さっただけだ。
 ま、消毒して絆創膏はっとけば大事なかろう……」
 源吉の傷を見ていた三島百合香が、自分の言葉通り、消毒し終わった傷口を絆創膏でふさぎ、救急箱の蓋を閉める。
「……ねぇねぇ。わたしぃ、佐久間って初めて見るんだけどぉ……みんな、おじいさんみたいな感じなの?」
 シルヴィ・姉崎は、佐久間源吉への好奇心を隠そうともしない。
 佐久間と直に接触した者は一族でも稀少な存在であり、この場で得られる情報は、他の姉へのいい手みやげになる……と、シルヴィは考えている。
「さて。
 佐久間は一族のはずれもの。この老いぼれは佐久間のはずれもの……。
 能力的には、この老いぼれを凌駕する佐久間はいくらでもおります」
「その代わり、他の一族とつるむような佐久間は源吉さんくらいなもんでしょ?
 他の佐久間は、佐久間以外の一族の者を金蔓くらいにしか見てないし、必要以上に関わろうとしない……」
 源吉の供述に、荒野はそう答える。
 長年、加納涼治とつるんでいた源吉のような存在のほうが、佐久間の中では例外的な存在なのだ。
「……うん。凄いねえ。これが佐久間の実力かぁ……」
 源吉を攻撃することをすぐに諦めた……というよりは、成果がまったくでないので、すぐに飽きた……荒神は、おとなしく元居た椅子に座り直して一人頷いている。
「……なにが最弱、だよ……。
 こんなの、ほとんどオールマイティーなのと変わらないじゃないか……。これからは、不敗の佐久間とでも名乗り給え!」
 最強、の異名をとる荒神は、何故か嬉しそうな口調でそう呟く。
「その源吉さんでさえ、佐久間の中では突出した存在ではない、っていうことになると……」
 荒野は何事か考え込んだ振りをした。
 実は、佐久間に関しては、荒野は以前から情報を収集していた。その過程で幾つかの信じがたい事例も採取していたし、「佐久間という正体不明の存在」に関する、自分なりの推論や対策も用意していた。
「他の佐久間も……実は、結構人前には出てるでしょ?
 その後、大抵は目撃者の記憶を封印しちゃうんで、目撃例が極端に少なくなる……」
「……さて……。
 その質問には、お答えできませんな……」
 佐久間源吉は、不敵に笑って荒野の質問をはぐらかした。源吉の自信に満ちた笑顔が、荒野の推論が認めているようなものだ……とは、思ったが。
「だけど、そこまで他人の動きや意識を簡単に制御できる、ということになると……」
 シルヴィは、軽く眉をひそめた。
「ようするに、天敵がいないということで……退屈なんじゃない?」
「佐久間が他の一族と関わりを持つ理由は大きく分けて二つ……」
 源吉は、シルヴィの質問にそう答えた。
「先ほど挙げた資金の確保、というのが一つ。もう一つは、一族の元には、最新の情報が常に集まるからです……」
 一族は、情報を集め、それを売買することで利益を得る。今も昔も、最新のニュースや、本来は秘匿され公開されない筈の情報は、それなりの金額で売買される。つまり、一族には、世界中から貴重な情報が集まる……。
 その一族の情報源を利用するために、一族の仕事を手伝っている……。
「……佐久間の多くは、一族の仕事の他に生計の道を持ち、一般人に紛れて平穏に暮らしております。大多数の佐久間にとって、一族の仕事を手伝うのは……面倒で面白みのない義務、と捕らえておりますな……」
 たいていの佐久間は、若い頃、何年間か一族と関わりを持ち、その後はすぐに元通りの生活に戻るのだという。
「ちょうど、そう……感覚としては、兵役、みたいなものですな……」
 その言葉が本当なら……半生を、加納涼治と組んで一族の仕事に取り組んで過ごした源吉は……自分でも言うとおり、佐久間の中でも、そうとうの「はずれもの」ということになるのだろう。
 佐久間のライフスタイル、などは勿論想像の外にあったが……他の部分は、おおよそ、荒野が推察が裏付けられた形だった。

 佐久間の能力は、他の一族が漠然と想像しているよりも、よほど高い。大体、他の一族は、佐久間のことを「催眠術師に毛が生えたような」能力しか持たないものとして、見下している。
 が、それは……誤った先入観だ……。
 佐久間は身体能力こそ「最弱」かも知れないが……その短所を補って有り余る長所を有している。加えて、なによりも、用心深い……。

 では……その佐久間の一員である源吉を、涼治は何故、長年従えていられたのか?

 否。
「従わせていた」のではなく、源吉が自発的に協力していたのだ……と、荒野は結論する。
 涼治は、源吉を動かすために、なんらかの……源吉にとっては魅力的な報酬を用意し……源吉が自発的に、涼治に協力したくなるような好条件を提示したのだろう……。
 荒野は、そう結論する。
 戦闘行為で、荒野たちが束になっても荒神に敵わないように……この場にいる全員が源吉に立ち向かっていたところで、結果は見えていた。
「最強」の荒神さえ指一本触れられないのなら……源吉は、この場にいる全員に「源吉を攻撃できない」という強い暗示をすでにかけている……と、想定した方が、いい。
 つまり、源吉は、こちらをいいように扱えるが、こちらは、源吉には手を出せない……。
 荒神がいうとおり、下準備を終えた佐久間は、まさしく「無敵」……。
『……でも……』
 それならそれで、やりようはある……と、荒野は思う。
「……いよいよ、本題なんだけど……」
 荒野は紅茶を一口啜って、故意にゆっくりとした口調で話し始める。
「源吉さん、今後、半永久的に……少なくともおれが生きている間は、狭間紗織とその係累の身の安全を保証する、っていったら……今後、おれたちの記憶を封印しないで貰える?」
 交渉事は加納が得意とするところだ。
 そして、この交渉の場で荒野が有利な点といえば……自分の「若さ」くらいしか、思いつかない。
「……その上で、これからする質問に、答えられる範囲内で答えてくれると、ありがたいんだけど……」

[つづき]
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