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第四話 夢と希望の、新学期(16)
次の日から、狩野香也の朝は騒がしいことになった。
以前なら目覚まし役は誰か手の空いている者が交代でくる、という感じだったが、その日の朝は何故か松島楓と才賀孫子のユニゾンで起こされることになる。
「……いや。今日はわたしが起こしますから……」
「……いいえ。わたくしが声を掛けておきますから、あなたは先に準備をしておきなさい……」
というか、彼女らの言い合いが部屋の外から聞こえてきて、目を醒ました。昔に建てられた日本風の家屋である狩野家は、各部屋が襖で仕切られているだけで、防音はないに等しい。
何事か……と寝ぼけ眼の香也が思っているうちに、がらりと襖が開き、制服姿の美少女二人が真剣な面持ちで入ってきて、横になっている香也の傍らに仁王立ちになる。
香也が目を醒ましていることに気づくと、二人はあかるさまに人為的な作り笑いを浮かべて挨拶を口にする。香也は、そんな二人の様子を不審に思いながらも、急いで半身を起こした。寝たままだと、二人のスカートの中身が丸見えだったからだ。
松島楓が白、才賀孫子が黒、だった。
『……いけないいけない』
「……んー……おはよう……」
香也はそう思いつつ、二人に挨拶をし、
「……着替えるから、一旦出てくれると助かる」
といった。
実は、朝の生理現象のおかげで、二人が居る前だと、布団から下半身を出すに出せない状況にあった。そんな香也にとって、寝起きからスカートの中身を見せつけられるのは、目に毒もいいところだ。
「……そんなこといって、また二度寝するんでしょ……」
才賀孫子は、香也の様子にまるで頓着せず、素早い動きで掛け布団をはぎ取る。
『……あ……』
そして、パジャマの薄い布地越しに膨らんだ香也の股間を目にし、真っ赤になって後ろを向いた。
孫子がはぎ取った掛け布団が、どさりと香也の上に落ちる。
「ご、ごめんなさい!」
孫子は耳まで真っ赤にして、ギクシャクとした足取りで部屋を出て行った。
「……あのぅ……」
松島楓は、身をかがめるようにして香也に小声で話しかけた。
「それって、すぐ自然に治るもんなんですか? なんなら、小さくするお手伝いしましょうか?」
と、なにか棒状のモノを手でしごくような仕草をする。
こちらはこちらで、男性の生理というモノに無知かつ天然だった。
「いいから! 先に向こう行ってて!」
二人とも、親切心でしてくれることだとは思うが……香也にしても、声を大きくしたくなるのだった。
『……明日から、目覚まし早めにかけよう……』
しかたなく、そう決意する香也だった。
その日も集団登校だった。香也は、この日ほどこの新学期から始まった集団登校をありがたく思ったことはない。どういう理由か知らないが、今朝から、才賀孫子は以前にも増して松島楓に対する対抗意識を剥き出しにして香也に構いつけるのだ。松島楓のほうも、さらにそれに対抗してさらに敵意を燃やす……という、いわゆるマッチポンプ状態で……二人の間にあって標的にされる香也は、たまったものではなかった。
『……これで、三人だけで登校するようになったら……』
学校に着く前に草臥れはてるな、と、香也は思う。
幸い、三人だけでないと、孫子も楓もそれなりに他の人たちと話してくれるので、結果的に、香也の負担は激減した。
「……絵描き……」
そんなことを思っている香也の袖を、加納茅が指で摘んで香也の注意を引いた。茅は、香也のことを「絵描き」と呼ぶ。口頭では、加納荒野と紛らわしいからだろう。
「……なにかあった? 体調悪そう」
茅の黒目がちの瞳でじっと見つめられて、香也は少し狼狽した。
『……そんなに具合悪そうに見えるのかな?』
「……んー……大丈夫。なんでもない」
口に出してそういうと、茅は「そう」と素直に頷く。
「体温がいつもより二度くらい低下しているの。自覚症状がなくても気をつけるの」
『……ようするに、血色が悪い、ということかな?』
香也は、茅の言葉をそう解釈した。
まさか、実際に体温が見えるわけでもあるまい。
その加納茅は、意外に松島楓と仲が良く、教室内でも、二人でいる事が多かった。
二人とも、初日からクラス内に一気に友人が増え、休み時間などは常時数人に取り囲まれている状態にあったから、二人一緒にいることで、ある程度精神的な防波堤を築いた形になり、ちょうどいいのかも知れない。
見ていると、楓は女生徒に、茅は男子生徒に声を掛けられることが多い。
楓は、始業式の日に羽生譲の同人誌を持ってきた二人組の女子(例によって香也はフルネームを記憶していなかったが、たしか牧野と矢島、とかいった)とすでにお友達状態であり、それが呼び水になってクラスの女子に馴染んでいる形だった。
茅は、一見無表情で無愛想だが、声をかければ誰にでも分け隔てなく接するので、大体は好感を持たれている。口数が少ない割にときおりかなりずれた発言をして、周囲に笑われたり指摘されたりしている。それと、記憶力がよく、一度聞いた名前は忘れず、誰彼構わず呼び捨てにするので、なおさら印象が強いのかも知れない。
平坦な口調で、茅のような美少女からいきなり名前呼びされると、誰でも一瞬ぎょっとした表情になるのだが、すぐに、茅が誰にでも分け隔てなくそうしていると気づき、クラスのみんなはすぐに慣れたようだ。ただ、担任の岩崎硝子先生が泣きそうになってお願いしたので、茅も教師にだけは「先生」をつけて呼ぶようになっている。
そして、楓も茅も意外に、天然だった。
二人の会話はまるで漫才のような様相を呈することがあり、それも、クラスメイトには受けが良かった。
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つづき]
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