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彼女はくノ一! 第四話 (19)

第四話 夢と希望の、新学期(19)

 いつもの朝、いつもの通学路。
「……お兄さんが料理研で、茅ちゃんが文芸、楓ちゃんがパソコン……」
 飯島舞花は指折り数えて転入生たちが入ったクラブを確認する。
「……で、才賀さんはどこ入ったの?」
「まだ、どこにも」
 両手で鞄を持った才賀孫子は、首を振った。
「誘われたり見学したりした所は幾つかあるのですが、これといった所がなくて……」
「うちの学校の場合だと、部活熱心にやらない人は、文化部にいって幽霊部員するのがパターンになっているね……」
 樋口明日樹も頷く。
「なんらかのクラブに所属しなければならない」という規則があっても、それで部活そのものが盛り上がっているわけではい。美術部など、明日樹と香也くらいしか、まともに来ている部員がいない。
「……そういや、おれ、何部にはいっていたっけ?」
 樋口大樹が明日樹に訪ねる。
「自分のことを、わたしに聞くな!」
 答えながら明日樹は、大樹のスキンヘッドを景気よく叩いた。
 明日樹も、実の弟に対しては割と容赦がない。
「で、才賀は、今までどこ見学したんだ?」
 話題を再び孫子に戻したのは、加納荒野だった。
「……吹奏楽、茶道、華道、マン研……」
 孫子は答えた。
 吹奏楽は、年末の商店街で孫子に音楽的な素養があり、ということで誘われたのだが、見学してみると孫子が満足できるようなレベルの部ではなかった。
 マン研は孫子にアシ経験があり、ということを聞きつけた香也のクラスメイト二名が早速「即戦力」として声をかけてきたのだが、そっちの趣味がなかった孫子は速攻で断った。
 茶道と華道は、孫子が自発的に見学に行った部なのだが、どちらも熱心にやっている部員が皆無に近い状態で、だらけきった雰囲気に、孫子はなじめそうになかった……。
「……才賀さん、なんでも出来る代わりに、周りに対する要求も高そうだもんな……」
 そうした孫子の話を聞いて、飯島舞花も頷く。
 こうして話しを聞いてみると、意識的なのか無意識的なのかは知らないが、荒野や楓、孫子の三人は、何故か、運動部に入ることを、最初から視野に入れていない。彼らの身体能力を考えると、多少手を抜いたとしても、他の部員たちとの間に格差がありすぎるからだろう……。
 加えて孫子の場合は、実家が実家だから、文化的な素養もここいらのような田舎町に住む学生とは比較にならないのではないだろうか?
「……前の学校では、部活なにやってたの?」
 ふと気になって、飯島舞花は孫子に尋ねてみた。
「特に、なにも……」
 孫子は首を振った。
「以前いたところは、部活にはさほど熱心な学校ではなかったので……」
 孫子が以前通っていた私立校は、名門の子女ばかりが通う、閉鎖的な女子校だった。いわゆる「お嬢様学校」という言い方もできたが、有形無形の規則で生徒を抑圧するそこの校風は孫子の好むところではなく、成り行きとはいえ、はるかに緩い校風の今の学校に転校してきたことには、孫子も素直に安堵を感じている。
「……やっぱり、文化部がいいの?」
「できれば」
 荒野の質問に、孫子は軽く頷く。
 確かに、負けん気が強い孫子では、運動部に入っても適当に手抜き、というのは難しかろう。

 転入生、加納茅のクラス内でのポジションは微妙だった。
 松島楓ほど他の生徒と馴染んでいるわけではない。
 が、完全に敬遠されているわけでもない。
 潜在的には、人気は高かった。
 授業の時間毎に教師をやりこめることができる生徒など、なかなかいるものではない。また、現在も絶賛放映中のケーキ屋のCM映像にも隠れファンは多かったし、始業式の日、狩野家を訪れた生徒たちは、「猫耳メイド姿でご奉仕してくれる加納茅」の噂を流布してもいた。
 これで、茅本人がもっと気さくで近寄りやすい雰囲気の生徒だったら、たちまちクラスの人気者になっていただろう。
「……絵描き……」
 しかし……。
「……んー……なに?」
「今日、茅は、帰りに文芸部のみんなとマンドゴドラに寄っていくの。荒野にもいっておいて」
「……んー……いいけど……メールは?」
「今の時間、荒野は料理中なの。料理中の荒野は携帯置いているの。伝言頼んだほうが確実なの。楓は掃除当番なの」
「……んー……わかった。ちょっと、調理実習室に寄ってく……」
 口の利き方がさり気なく命令調デフォルト、かつ、特徴的な語尾だった。
 その特徴的な語尾について、男子の多くは「にょ、とかではないあたり、まだマシだよなあ」とコメントし、女子の一部はひそかに「なのなのちゃん」と茅の事を呼称した。

「いい? ワックスがけは気合いだから……」
 クラスメイトの中でも、牧野と矢島のマン研コンビは松島楓といち早く馴染んだ生徒だった。席が近く同じ班、という事もあり、掃除当番も一緒である。
 そこで、廊下のワックスがけは初めて体験する、という楓に、二人は床のモップがけの要領を教えているところだった。
「……こうやって……」
 モップの毛先を、牛乳のような白い濃厚な液体に浸し……。
「……しぼって……」
 専用のバケツに付属したローラーに毛先を挟んで、余分なワックスを落とす。
「……あとは、気合いで……」
 牧野は、「でやーっ!」と奇声を発しながら、教室前の廊下を一往復分、駆け抜けた。
「……はい。今度は楓ちゃん、やってみて……」
 モップを手渡された楓は、見よう見まねでモップをワックスに浸し、絞る。
「……ええと、後は、気合いで……」
 そして、「でやーっ!」と奇声を発し……何故か、同じ箇所に突っ立ったままだった。
「こんな感じですか?」
「え?」
 突っ立った楓の後ろから、突如突風が吹いて牧野と矢島の前髪を踊らせた。
 風越しに薄目を開けてみると、確かに廊下には、一往復分、ワックスをかけた後が残されているのだった。

[つづき]
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