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彼女はくノ一! 第四話 (21)

第四話 夢と希望の、新学期(21)

「……ゴスロリ……」
 そう呟いた羽生譲は、咀嚼していた豚の生姜焼きを豆腐とわかめの味噌汁で喉の奥に流し込んだ。
「……うーん……見た目、インパクトがあるのは確かだけど……。
 思いっきり趣味に走った提案だな、ゴスロリ子ちゃん……」
「……ゴスロリってなんすか?」
 そうした事柄に疎い荒野は、キャベツのみじん切りを箸で摘みながら、誰にともなく尋ねる。
「黒くて、ひらひらーっとしてて……。
 あれ、一言でいうと、孫子ちゃんがこっちきた初日にやっていたような恰好。
 リボンやフリル目一杯あしらった黒めのファッション・スタイル……」
 羽生譲は里芋の煮っ転がしを小鉢からとりながら、その筋の愛好者が聞いたらその場で卒倒するか怒り出すような、皮相的かつ大雑把な説明を荒野に行った。
 それでも、「孫子ちゃんがこっちきた初日にやっていたような恰好」という具体例を提示されたので、荒野は「ああ。ああいうのか……」とすぐに了解する。
「……茅はどうだ? ああいう恰好?」
 荒野は内心で「ああいうの似合うの、女の子だけだもんな……」と思って、かなり楽観的な気分になっていた。
 今度は、自分がモデルになる必要はない、と。
「……別に構わないの……」
 茅は白菜の自家漬けを口に運びながらあっけなく同意した。
 基本的に、自分がどういう恰好をさせられるのか、あまり関心がないらしい。
「……じゃあさ、今回は女の子二人でいこうよ。以前とは変化をつけてさ……」
 正直、もう学校で「猫耳」呼ばわりされるのに飽き飽きしていた荒野は、自分にとって有利な方向に話しを進めようとする。
「才賀も、実はそういう格好、したいからそういう提案するんだろ?
 茅と才賀の二人ゴスロリ……絵になるじゃぁないか……」
 荒野がそう水を向けたのは、孫子と茅がモデルを務めれば、自分にまで出番が回ってこないだろうと踏んだからだ。
「……孫子ちゃん、やるの?」
 羽生譲は荒野の言葉にインスピレーションを受けたのか、一旦箸を置いて居間の隅に放置してあったスケッチブックを手にした。
「衣装提供は是非お願いしたいけど、それ以外にもモデルやってくれるとなると……おねーさん萌えて燃えちゃったりしちゃうなー……って、柏姉の真似」
 顔が小さく手足が長い才賀孫子、長髪で綺麗な顔立ちをした茅が、ツーショットでいかにもごすろりーな格好をしているイメージが羽生の中で発酵しつつあった。
 ……才賀孫子は手足の長さを強調するため、ノースリーブでミニ。ただし、タイツなどで手足は覆い、出きるだけ皮膚は露出させない。それでも、ほっそりとしたボディラインは強調できる筈だ。いっそ、造り物の黒い翼でも背中につけるか。小悪魔、ないしは、墜天使のイメージで……。
 ……茅は、孫子とは反対に長袖にロングスカートのオーソドックスなドレス姿。もちろん、ごてごての過剰なまでのフリル&リボン付き。シュルエットを人工的な物にするため、古くさいガーターベルトやペティ・コートも、あえて使う。ちょっと退嬰的なメイクとあわせ、十九世紀的のちょっと退屈しているご令嬢、って感じで……。
 箸を置き、羽生譲は、しゃこしゃこしゃこ、と、スケッチブックにシャーペンを走らせる。
 イメージが沸いてきた時はこんなもんだ……ということを解っているので、食事の途中でスケッチをし始めた羽生譲を、狩野真理も狩野香也もとがめ立てはしない。黙々と食事を続けている。
「……そうだ。くノ一ちゃんはどうする?」
「……んんっ!
 わ、わたしですかぁ……」
 いきなり羽生に尋ねられた楓は、慌ててご飯を嚥下した。
 楓は、今までの会話の流れが、イマイチ飲み込めていない。
「……んじゃあ、くノ一ちゃんもな……」
 羽生譲は楓がまごついているうちに、さっさと「楓も参加する」ということに独断で決定してしまった。
 目を爛々と輝かせ、シャーペンを走らせる。
 茅が清楚で孫子が小悪魔。それなら楓は……。

「……これ、本当にわたしが着るんですかぁ……」
 数日後、羽生譲がどこからか調達してきた衣装を手に取った松島楓は悲鳴に近い声を上げることになる。
 羽生譲が楓のために用意したのは、真っ赤なエナメルのボンテージ・スーツだった。
「……くノ一ちゃん、わたしと違って胸あるしメリハリのある体型しているから、こういうボディラインがくっきり出る格好も十分いけると思うぞ……」
 羽生譲は、楓からクレームが来るとはまるで思っていないらしい。
「ほれ。目の回りだけ隠すマスクもあるでよ。これもつければ妖しさ爆発、これで今日から君も女王様だ!
 はいはい。今日は企画書用の写真撮るだけだから、ちゃっちゃと着替えてくださいねー。三人娘さんあんどカッコいいほうのこーちゃん……」
「……なんでおれが……こんな……」
 加納荒野も、手渡された衣装を手にしたままぶつくさ言っていた。
 が、そうした抗議の声は仕切モードに入った羽生譲の耳には届かないのであった。
「……んー……無理……」
 企画書用写真の撮影は、平日の夜、狩野家で行われたので、香也もこの騒動を炬燵に入りながらぼーっと眺めていた。
 香也は、ひきつった顔をして棒立ちになっている荒野と楓に向かって訳知り顔に説明しはじめた。
「……羽生さん、ここまで入っちゃったら、モデルなんか自分のイメージ具現化するための道具としか考えてないから……」
 羽生譲は、道具が文句言っても受け付けないよ、と、香也はいっている。
「はいはい。なんでもいいからさっさと着替える! これでマスターのOKが出れば、本番は明後日なんだから……」
『……香也君も別口で昔、羽生さんの被害にあっているのかもしれないな……』
 加納荒野はそう思うことでなんとか自分を納得させることにした。
 そして、手にしたチョコレート色のスーツに着替えるために別の部屋に向かった。
『……どっから調達してくるんだろう……こんな凄まじい色の衣装……』
 荒野のために用意されたスーツは、茅のものと合わせるためか、古くさいデザインのスリーピースで……古くさい、というのは、言い方を変えればオーソドックスな、といいうことでもある。
 色のコーディネートを除けば、一番「マトモな」衣装である、ともいえた。
 ……町中では、絶対に着たくはないが……。
『……まあ、こんな機会でもなけりゃあ、こんな色のやたらフリフリした服、着る機会もないだろうし……』
 茅と孫子は意外にノリノリらしく、早々と着替えて日傘や黒い翼を振りながら羽生の指示に従ってポーズをとっている。
 楓だけが納得いかないとかいった表情をして、「……あぅあぅ……」とか途方に暮れながら、いつまでも立ちつくしているのであった。

[つづき]
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  • 2006/05/19(Fri) 00:59 
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