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彼女はくノ一! 第四話 (23)

第四話 夢と希望の、新学期(23)

 楓自身は茅の警護を第一の任務と心得ていたが、荒野は楓が心配しているほどには茅の安全面に気を払っておらず、いや、気を払っていない、というと語弊があるのだろうが、それでも楓から見ると変に鷹揚な所があって、例えば、平気で文芸部員だけで帰宅させたりする。また、茅一人で外出することも多いらしい。
 そのことについて、「茅の外出時には、せめて自分が同伴しても」と楓が荒野に申し出てみたことも、再三、あった。
 が、荒野が首を縦に振ることはなかった。
「……あのなぁ、楓……」
 そんな時、荒野は楓を諭すようにいう。
「お前の心配も分からないではないけど、相手はおれたちと同じ一族だぞ?
 その気になって力押しで来られたら、少人数のこっちは、遅いか早いかの差はあれ、あっけなくやられちまうって……」
 どだい、戦力差が違う……と、荒野はいう。
 だとすれば、今まで茅や荒野が無事でいる、ということは、相手方になんらかの理由や事情があって手出しできないでいるのか……それとも、誘拐などの強硬手段を使って茅を確保しても意味がないか、のどちらかだ、と。
「おれ、思うんだけど……茅の遺伝子とかは、とっくの昔に採取されていると思うんだよね……」
 茅が、今後どれほど潜在能力を開花させるか……それを確かめたくて、茅の存在を知るものは、あえて泳がせている……というのが現状なのではないか……。
 と、荒野は楓に自分の推測を話した。
「実際、茅、こっちに来てから、かなり変わってきているし……」
 話しをするようになった、人とつき合うようになった、感情が豊かになった……といった表面的な変化に加え、荒野を信用してきたようで、最近では、今まで隠していた能力……佐久間並の記憶力など……についても、隠すことなく荒野に話すようになっている。また、様々な経験を経ることで開花する能力もあるようで……。
「そういったことも含めて、どっかでじっと観察しているやつらがいるんだと思うんだ……」
 荒野は、仁明から茅を受け継いだ、茅の養育係……と、関係者からは見られているのではないか?
「……だから、当分は、茅に直接的には手出しをしてくる者はいないと思う……」
 荒野は、楓にはいわなかったが……この次、何者かが本気で茅に向かってくることがあるとすれば……それは、茅の最終性能試験の時か……それとも、茅が計画者たちの予想を超えた成長をみせ、一族全ての者にとっての脅威と見なされた時、だろう……と、みている。
 いずれにしろ、そのような時はシャレや冗談では済まないプレッシャーを受ける筈で……。
 しかし、茅自身がまだまだ成長しつつある今の段階では、余分な手出しをしてきても得をする者は誰もいない筈、でもあった。
 だから、その時までは……。
「お前は、今の生活を楽しめ……」
 荒野は、改めて、楓にそう命じた。

 思い返してみると、以前、荒野は涼治にも全く同じ事を言われている。
「お前は考えすぎだ」
「もっと、今の生活を楽しめ」
 と。

 その時の荒野がどこか釈然としない気持ちを抱えていたのと同じく、楓もあまり納得した風でもなかったが……それでも、なんとか荒野の言葉に頷いた。
 荒野と同じく、今の生活は楽しいし、それを謳歌すること自体には、異存がないのだろう。

 そんなわけで、楓は今の生活を楽しんでいた。
 荒野に相談した様に、不安材料がないでもなかったが……楓は所詮上の人間に指示を貰い、その元で動くことを当然として教育された側の人間である。多少疑問を持っていても荒野などに強く言われると、それ以上の詮索はせず、服従するのが習いになっている。
 最近、楓に体術を仕込んでいる二宮荒神は、そうした楓の思考停止体質を「下忍根性」と呼び、「そういう根本的な所から直していかないと、雑種ちゃんはこれ以上先にいけないよーん」などと嘯く。
 荒神は、すでに基本的な技術を習得し、最近は荒神との模擬戦のおかげで実践の場での勘や咄嗟の際の応用力もつけてきた楓の、一番弱い部分として、「判断力」を挙げる。誰かの指示を仰ぐことが習性になっているので、自分の判断で動く、という決断力に欠け……。
「そういうの、いざという時には致命傷になりかねないんだけどね……」
 楓を弟子、と認めた割には、荒神の言いぐさは他人事のような軽さがあった。荒神が気にかけているのはあくまで「楓の資質」であって、「楓本人」の進退についてはあまり興味がないらしい。
 それでも、
「雑種ちゃんは今、実質荒野君と二人で任務に当たっているわけでしょ?
 そんな時、自分自身で的確に判断できるようになっておかないと、いざという時身体がうごかないよーん」
 という具合に念を押すあたり、微妙に気にかけてはくれてはいるようだ。
 言われてみるまでもなく、荒野とは別行動を取ることが多いし、また、荒神や荒野をみていると、一流の術者とは、体術などの技術だけではなく、自分の判断で動ける者をいうのだ……ということも、理屈抜きで納得できる。
 荒神の性格を考えると、それだけ念を押されて進歩がなければ即刻見放される、という可能性も大きかったが……指摘され、自身も納得したからといって……それまで仕込まれた服従体質が即座に一掃される……ということも、ないのであった。
 それでも、楓は今までの自分の在り方に懐疑的になりつつある。
 香也や同じ学校に通う同じ年頃の生徒たちに比べ、自分はいかにも卑屈で、屈託が多い、と……。

「……そんなの、即座に改められなければ、時間をかけて変えていけばいいだけなの」
 そんな楓の悩みを、茅は一蹴する。
 最近、同じ学校の同じクラスに通うようになってから、楓は、茅と話す機会が多くなった。
「学校はそのための……自己形成と、学習のための場なの……」
 茅は首を巡らせて、休み時間中の雑然とした教室内を見渡すよう、楓の視線を誘導する。生徒たちは三々五々、適当に仲間たちでグループを作り、雑談に興じている。
「楓は、ここにいる生徒たちより、よっぽど高性能なの。でも、単機能。自我を抑圧するように教育されてきたの……」
 ……楓は、もっと自分自身のことを考えたほうがいいの……。
 と、茅はいう。
 茅のいうことは、荒神や荒野のいうことと重なっているようでいて、少しずれているような気もする。茅のいうことは時々難しすぎて、楓には理解しきれない時があった……。

[つづき]
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