2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第四話 (24)

第四話 夢と希望の、新学期(24)

 放課後、楓が部活のために実習室に行くと、堺雅史やパソコン部の生徒たちの他に、見慣れない生徒も何人か入り交じって末端に向かってなにやら作業をしていた。
「なにしているんですか?」
 楓が顔見知りの堺雅史に声をかけると、堺は振り返り、
「これ、この間話してた、放送部のお手伝い」
 と説明してくれた。
「もう明日なんだよね。いきなり放送部の人たちがこれ編集してくれっ持って来てさ……学校のマシンに動画編集ソフトなんて入っていたかな?」
 堺は楓に放送部員が持ち込んだDVDディスクを示す。
「OSに付属してきしょぼいのなら……。
 なんなら、フリーのをちょっと検索してダウンしてみますか?」
 楓が何の気なしに提案すると、堺はこっそり頷いた。

 学校のネットワーク・システムには、当然のことながらそれなりの防壁とかフィルタリングが掛かっていて、海外の素性の知れないフリーソフトを落とすこと自体、容易ではないのだが……初日、そのあたりのシステムに触れた楓は「こんなザルみたいなシステムを公共の場で使うなんて!」という不満を持ち、勝手にその場で書き換えてしまった。
 その時、気の弱いところのある堺は、おろおろしながらも楓の作業を見守るばかりだった。
 結果、従来のシステムよりセキュリティも強化され、レスポンスもかえって良くなったくらいなのだが……楓は、学校のシステムの管理キーを、正規の管理者ではないのにもかかわらず、自分でも持つような仕様にしてしまった。
 おまけに、楓は英語も堪能だったので、なにかあると海外のフリーソフトをダウンロードして使用する、というのも日常茶飯事となっている。
 もちろん、システムを改良したとはいっても、もともと楓の知識はセキュリティ方面に偏重しており、従来のシステムに加え、二重三重のフィルタを追加したくらいなので、ウイルスやワームを掴まされるようなへまもしない。

「うん。いざとなったら、ね。それよりも今は、囲碁の中継をどうやったらわかりやすく見せられるか、っていうの相談しているんだけど……」
 もともと囲碁のルールについて知識のある視聴者が圧倒的に少ない、というのが前提となっているので、放送部のほうでもいろいろもめているらしい、と、堺は楓に説明した。
「……そんな専門的なこと放送しても誰もわからないでしょ?」
 案の定、眼鏡をかけた二年生の女生徒が喚いている。腕章をしているところをみると、放送部らしい。
「だからな、パソコン部はそういう内容のことはわかんねーんだよ! ストリーミングとかネット配信については協力するけどな、放送する内容についてはそっちの領分だろうが!」
 パソコン部の二年生も、放送部の眼鏡の女生徒に反撃する。
「いいか? もともと囲碁なんて、ルール知らない者にとっては退屈なもんなんだよ! 延々と盤面ながしてみろ。五分もせずに眠たくなること請け合いだよ! 某教育テレビをみてみろ!」
「その辺は狭間先輩に解説頼んだわよ! 先輩、そっちの方面にも詳しいんだから!」
「じゃあ、後の部分で面白くするのはお前らの仕事じゃねーか! こっちに当たるんじゃねー!」
 楓は堺が止めるまもなく、怒鳴り合うように言い合いを続ける二年生たちの間に入り、「……あのぉ」と片手を上げた。
「その、狭間先輩ですか? 解説する人、確保しているんなら……」

「……なるほど……囲碁のネット対戦システムを使うのか……」
「……ええ。国内にも海外にも、フリーで使えるのがいくらもありますから……」
 楓がアクセスしたページには、囲碁の盤面が映し出されている。
 一方のプレイヤー名が「toku^2」、もう一方が「sonshi」。
「本番の時は、お二人が置いた石をそのままこの盤面に置いて、その先輩に解説してもう時に使って……後は、中継画面とうまくつないでメリハリをつける……というのは……」
「……この一年生のほうが、文句ばかりのあんたなんかよりよっぽど役にたつじゃない……」
 眼鏡の二年生が先ほどまで言い合いをしていた二年生の男子を睨みつけると、そのパソコン部の二年生は、
「……やってられっか!」
 と捨てぜりふを吐いて実習室から出ていった。
「……いいから、放っておきなさい。
 ああいう威張るだけの人間はどこにでもいる。
 でも、わたしたち、ああいう手合いには用はないの……」
 出ていった二年生を追おうとした楓たち一年生を、その放送部の二年生が止めた。
「初対面、だったけ? わたし、二年の玉木珠美。あなた、使える一年生さんはなんていうの?」
 楓が名乗ると、玉木は目を細めていった。
「わたしたち、昨日撮ってきた動画の編集も、今ここで、やっつけたいんだけど……あなたたち、なんか手っ取り早い方法、知らない?」

「……ええと、マニュアルには、プロの使用にも耐える速度とクオリティって書いてありましたけど……話半分でも、OS付属のソフトよりは使えると思います……」
「なんでもいいから。ちゃっちゃとやっつけちゃいましょう……」
 ダウンしたばかりのソフトを、楓が手慣れた操作でインストールしている横で、玉木が楓を煽っている。
「これね、編集するデータ。トクツーの取材映像とか入っているんだけど、長いし演出とかないから、これから効果とか音とかつけて、ショーアップすんの……じゃんと素材も別に用意しているから……」

「……接続環境に差があるはずだから、中継画面が多少荒くなるのはしかたないんじゃないか?」
「高画質のがほしければ、あとで配布するDVD見てもらうか?」
「うん。高画質のビデオ数台と安物のウェブカム用の端子沢山設置して、中継用のはウェブカムをメイン、後で配布するのはビデオメインに編集、という感じかな?」
「中継は、かろうじて表情の変化が分かる、という程度が現実的じゃないかなぁ……盤面については、別の解説画面でフォローできるわけだし……」
「……あと、玉木たちが撮ってきた取材映像を合間合間に入れれば、結構間持つんじゃねー……」
「ああ。素材については余裕をもって撮って来たって話しだからな……」
 向こうのマシンでは、堺たちと別の放送部員が話し合いながら、中継画面のデザインやインターフェースなどを詰めていた。

「……えーと……ここから、二十五秒後あたり、だして……そう、ここいら……ここまでは、切っていい。
 このカットとこのカットを繋げて、その次に……」
 玉木は自分たちが撮ってきた映像については大体覚えているのか、細切れの動画を全部再生することなく、矢継ぎ早に楓に指示を下して切ったりはったりを繰り返している。
 楓は、慣れないソフトということもあって、ショートカットキーを駆使して玉木の指示に遅れないようにするのが精一杯だった。
「……うーん。さすが学校のマシンねー。レスポンスがいい……
 単体のマシンで編集すると、動画とか重くて重くて……」
「マシン自体はそんな高性能じゃないんですけど……」
 楓は実習室を振り返って玉木に説明する。
「これだけのマシンがありますから、サイズの大きなファイル扱う時には、並列処理をするようにしているんです……」
 そのように改造したのは実は楓自身だったのだが、それは玉木に説明しなかった。

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび


↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのよん]
Muhyoo-Japan! WA!!!(総合ランキングサイト) ブログランキングranQ アダルト列島No.1 創性記 あだるとらんど 大人向けサーチ Secret Search!  裏情報館 /">Hな小説リンク集

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ