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彼女はくノ一! 第四話 (26)

第四話 夢と希望の、新学期(26)

 徳川篤朗が自分が持ち込んだ末端に向かって凄い勢いでコードを書き始めたので、楓はDVDとUSBメモリーにコピーしてきたバックアップデータを羽生のマシンのハードディスクに落とす。篤朗のものを別格とすれば、手元にあるマシンの中で一番高性能なのは羽生のマシンだった。いくら分散処理するといってもハードディスクのシークタイムは高速な程、良い。

 そうこうするうちに、篤朗といっしょに来た加納荒野が「これ、たったいま収録してきたばかりの動画……」とDVDを持ち込んできたので、それもハードディスクに落とす。
 荒野は羽生の部屋の状態を見渡して、
「……しかし、凄いことになっているなぁ……」
 と感慨深げに呟いた。
 羽生のデスクトップから放射状にLANケーブルで繋がれたノートパソコン数台が雑然と畳の上に放置されており、楓はパソコンデスクに、篤朗は畳の上に座って自分の膝の上に持ち込むのノートパソコンを置いて作業している。
「……おお。やってるやってる」
 様子を見にきた羽生譲も、一瞬沈黙したが、すぐに楓が向き合っている画面に動画が表示されていることに気づく。
「あ。動画編集やるんか? じゃあ、終わったらこっにも使わせてくんない?
 この間の撮ったごすろりーな動画、ちょっち編集してみたいから……」
 マンドゴドラのマスターは羽生が持ち込んだテスト映像を一目見るなりいかつつい顔を崩して笑い、しばらくして笑い納めると、「これ、いい! 絶対受ける! 是非、この線で!」と即座にGOサインを出してくれた。
 バレンタイン・デーまであまり間がないため、本番の収録日は今度の日曜日、つまり明後日に予定されている。
 羽生譲は、数日前にテストとして収録した動画についても、良いショットを吟味し、背景などを合成して使用するつもりだった。
「……ええ、構わない……と、思いますけど……」
 楓は曖昧に言葉を濁す。
 それよりもまず、明日、使用する予定の動画の処理が終わらないことには……そしてその作業は、玉木珠美の指示を仰がなくてはどうにも進められないのであった。
「おばんでーっす!
 こっちに松島楓さんと加納荒野君その他諸々がいるって聞いたんですけどー……」
 その時、玄関のほうで玉木珠美の声がした。

「おお。凄い凄い! みんな協力的だなあ! おねーさんは感激だぞ! なんだ、トクツー君まで手伝ってくれてるのか!」
 ひとまず荷物を台所に置いてから、私服姿の玉木珠美が浅黄にまとわりつかれている茅に案内されて、羽生譲の部屋にやってきた。
「おお。楓ちゃん、でかした。もう準備万端だな!
 今ちょっと晩御飯の支度をちゃっちゃと終わらせてくるから、もうちょい待ってな!」
 と叫んで、すぐに台所のほうにとって返した。
「……なんだか、騒がしくて忙しない子だな……」
 顔を出したかと思ったらすぐにとって返した玉木珠美を、羽生譲はそう評した。
「羽生さん、彼女とは気が合うと思いますよ……」
 加納荒野は羽生譲にそう請け合った。羽生譲と玉木珠美は、性格的に似ている部分が多いと思う……。

 荒野が台所のほうに様子を見に行くと玉木珠美と飯島舞花が肩を並べて料理を作っている最中だった。
「おにーさん、玉木、新鮮な魚介類どっさり持ってきてくれたよ……」
 荒野の姿に気づいた飯島舞花が、振り返ってそう告げる。
「玉木の家、商店街の魚屋さんだって……」
「新鮮な、というと語弊があるな……売れ残りかけていたのをまとめて強奪してきただけだから……」
 フライパンを揺すってオリーブオイルで生の米を炒めていた玉木は、振り返らずに舞花の言葉を訂正した。
「よし。あとは……」
 玉木はフライパンの中身を平らにならし、持参してきた貝やゲソ、魚の切り身などを適当に表面に散らして、サフランを落とし、フライパンに水を注ぎ、弱火にする。
「……これで、炊きあがるのを待つだけ……飯島、後は頼む。
 わたし、作業のほうに戻る」
「ん。もうすぐ柏も来るし、任せて……」
 玉木は舞花の返事も聞かずにばたばたと羽生の部屋に戻った。
 飯島舞花のほうは、フライにするつもりなのか、牡蠣に衣をつけているところだった。
「忙しない奴だなぁ……」
 荒野は、玉木の背中をみながらそういった。
「彼女が騒がしいのは、前からだから……」
 舞花がそういった時、玄関のほうで柏あんなと堺雅史の来訪を告げる声が聞こえた。

 台所に向かった柏あんなと別れて堺雅史が羽生譲の部屋に向かうと、そこはすでに臨戦状態で、LANケーブルで繋がれた複数のマシンを駆使して松島楓、徳川篤朗、玉木珠美の三人が作業にいそしんでいた。
 玉川珠美は松島楓の後ろに立って楓に指示を出して編集作業をさせながら、手元のノートパソコンで荒野たちが収録してきたばかりの篤朗のインタビュー動画をチェックしている。徳川篤朗は二人から少し離れた所で猛烈になにかをタイピングしている。羽生譲もいて、どてらの懐に手を入れながら、玉川珠美のやり方を興味深そうに見学していた。
「来たか、パソコン部の一年」
 堺の存在に気づいた玉木珠美は、顔も上げずに堺に声をかけてきた。
「もうちょい待て。もう少しで楓ちゃんがやっている、才賀の分の処理が一段落するから……そしたら、今日撮ってきた徳川のほうの作業に移る……そしたら、君の出番だ……」
「……なー……。
 玉川さんとやら……」
 突如、それまで黙って作業を見学していた羽生譲が、玉川珠美に声を掛けた。
「今、楓ちゃんがやっているの、一通り編集終わったら、コピーしてわたしにもいじらせてくんないか?
 このままでも面白いけど、エフェクトとかBGMつけるともっとよくなるでよ……」
「……助かりまーす、おねーさん。
 こっちはそこまで手がまわらないもんで……」
「おねーさんではなくて、羽生譲。
 もしくはにゅうたんと呼んでくれい……」
 玉川珠美と羽生譲は目を見合わせて不適に笑い合った。

「……そいいや、才賀はいないの?」
 羽生の部屋にも台所にも身の置き場なし、と判断した荒野は結局居間の炬燵に戻ってきた。居間では、狩野真理が茅がいれた紅茶を飲みながらくつろいでいて、その横に相変わらず浅黄にまとわりつかれている茅、大きな体を小さくして炬燵に入っている有働勇作がいる。
「才賀さん、最近、夕方……夕食の前くらいになると、金髪の先生と一緒に外出するのよ。二十分くらいですぐに帰ってくるけど」
 真理が、何気ない噂話でもするように荒野にそういった。
『……結局、そうなったか』
 シルヴィ・姉崎が孫子のどこまで一族の技術体系を伝えるつもりかはわからないが……荒野は、そう聞いてもあまりいい気分にはならなかった。

[つづき]
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