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彼女はくノ一! 第四話 (28)

第四話 夢と希望の、新学期(28)

 食事が終わった後、二時間ほど作業を続け、一通りの作業について区切りのよいところまで終えると、客たちは迎えに来た自動車や乗ってきた自転車に乗って三々五々に帰っていった。その頃にはすでに、深夜、の一歩手前の時刻になっていた。
 客たちが帰った後、楓と羽生は二人で羽生の部屋に籠もり、構築されたシステムを使用して、共同でマンドゴドラのCMのテスト映像の編集や加工作業を行った。シーケンス毎のシーンを分類し、貼り合わせ、あるいは破棄し、そのままでは使えないカットも、背景に別の画像を合成したり、などの加工を試みることで使いようがないかどうか、検討した。
 玉木があくまで自分の主観を根拠にテキパキと判断を下したのとは対照的に、楓と羽生の二人は、「ここはこうしたら使えるのではないか?」とか「このカットは捨てていいのではないだろうか?」などのミーティングをしつこいぐらいに行った。時には背景用のカットを羽生がペンタブレットを取り出し、その場で「ほれ、こういう馬鹿らしい絵を入れると笑えるだろ」とかいいながら書き込んで動画と合成して見せたりする。
 二人が声高に漫才のようなやりとりをしながら作業を続けていると才賀孫子も寄ってきて、あれこれと口を挟んだりするようになり……また、使用可能なBGMを選択したり、BGMに合わせてシーン構成をしたり、と……と、マシンパワーが過剰気味な今のうちにやっておいたほうが良い事は多く、結局、その晩は三人ともかなり夜更かしをしてしまった。

 翌日、というのは孫子の試合が予定してある土曜日で、香也たちが通う学校はゆとり教育とかの影響で、ここ数年、変則的な週休二日制になっている。
 つまり、休日でもある土曜日の朝、ここのところ規則正しい香也は、久しぶりにゆっくりと朝寝を楽しむことが出来た。ここのところ、休みであるか否かに関わらず決まった時間に香也を起こしに来た人々が、こぞって朝寝坊していたからである。
 結局、松島楓、才賀孫子、羽生譲、狩野香也の四名は、午前十時過ぎ、昨夜やり残した作業をしに玉木珠美が訪問してくるまで快適な睡眠をとり続けた。

 玉木の来訪によって起こされた形の楓は、急いで顔を洗い、トーストとコーヒーだけの簡単な食事を摂り、昨日と逆の手順を踏んでデータをとりまとめ、あまりサイズの大きくならないものは圧縮して自分のメールアドレスに放り込んでおく。昨日と違うのは、編集済みでそのまま使用できる動画が多くなっているので、DVDに焼く量が圧倒的に少なくなっていることだった。昼過ぎまで家にいるという羽生譲は、連絡があればバックアップし忘れたデータを楓のアドレスに送ってくれる、といってくれたので、楓は安心して玉木と一緒に学校に向かった。
 楓の外出の準備が済むと、玉木は楓に自転車の後部座席に座るよういい、楓が腰掛けるのを確認すると、「うぉーりゃー!」と奇声を発して猛然と自転車をこぎ始めた。速度としては、楓が全力失踪した時の数分の一程度……と、楓は体感したが、それでも普通に歩いていく時間の半分弱で学校に着いた。
 速度はともかく、玉木が自分を乗せて走ってくれた、という厚意の部分に、楓は名鑑を受けた。玉木にとっては、部外者でありながらここまで身を入れて頑張ってくれた楓にこの程度の事をするのは当たり前だ、という感覚があったのだが。

 駐輪場に玉木の自転車を停め、二人でばたばたと放送室に入ると、有働勇作をはじめとする放送部員たちはすでに総出で昼過ぎに始まる中継の準備をしていた。玉木はそっちに合流して囲碁将棋部の部室にカメラを設置したりなんだり、の、作業に入り、楓は、昨夜やりきれなかった編集作業、それに、ストリーミングの準備にかかる。昨夜使用したソフトは楓と徳川篤朗の手によりアップデートされ格段に使い勝手が良くなっており、圧縮して自分のアドレスに放り込んでおいたそれらのデータを展開する。それから、篤朗が昨夜教えてくれたアドレスに接続すると、約束通りにサーバ領域が確保されているらしく、ストリーミング用の管理画面が表示された。ヘルプやマニュアルを参照しながら、楓がそのサーバのレスポンスなどを計測すると、とても良好な数値が帰ってきて、昨夜篤朗が「性能もバックボーンも折り紙付きなのだ」と豪語するだけのことはある、と納得するだけの数値をたたき出した。
 楓はマニュアルを見ながら、昨夜編集し終わった動画データを次々と篤朗が用意したサーバに転送し、続いて、編集作業を続行することになっている未整理の動画データを学校のマシンに落としていく。
 そうこうするうちに昼前くらいの時間になり、囲碁将棋部のほうの準備を終えた玉木たち放送部員がどやどやと楓の居る実習室に集まってきて、編集し終わった動画や未整理のデータを観たりしはじめた。
 玉木と有働以外の放送部員は、
「これ、一晩でやったのか?」
 と驚きを隠せない様子でざわめいていた。
「いやー。見せたかったなー。
 この子の家にいる人たち、みんな凄いのだよ……」
 と、玉木は楓に抱きつきながら、我が事のように自慢した。

 そんな時、大きなバスケットを抱え、コンビニのビニール袋を抱えた制服姿の加納兄弟が実習室に入ってきた。
 加納荒野は、
「これ、差し入れ。調理実習室の使用許可取ってないんで、簡単なものだけど……」
 といってバスケットを開けた。
 中には色とりどりのサンドイッチがぎっしりと詰め込まれており、ちょうど昼食の時間であったこともあり、放送部員たちは競うようにして加納兄弟が用意した食事を取り合った。
 茅はコンビニのビニール袋からソフトドリンクのペットボトルと紙コップを取り出し、紙コップを配って歩いた。
 サンドイッチを賞味しながら、交代で残った編集作業を片付けると二時を少しこえるくらいの時刻になっており、ポスターなどで告知しておいた中継用のURLアドレスにアクセスしてくる者もかなり増えてきた。そのアドレスに置いてあるファイルは、この時点では、
「中継開始は14:30を予定しております。
 それまでしばらくお待ち下さい
  ○○校放送部」
 と書いているだけの素っ気ないページだったが、解析用のタグは埋め込んでいたので中継開始時間が近づくにつれてアクセス数が増加していく様子が手に取るようにわかった。
 午後二時十五分頃、前後して才賀孫子と徳川篤朗が囲碁将棋部の部室内に入ってきた。中継の準備は完了していたので、二人が入ってきた様子は楓たちがいる実習室からでも、モニター越しに克明に観察することができた。
 実際に対戦をする孫子たちの希望で、対戦を行う囲碁将棋部の部室内には、最小限の人間しか入ってはいけない、という約束になっている。おかげで、低解像度のウェブカム用のカメラと三脚に固定した数台のカメラ、それにたった二人のカメラマンが手持ちのハンディビデオを持って待機する形になった。
 それでも、楓たちの居る実習室から、各カメラの映像を自由に切り替えるシステムはすでに構築済みであり、急造の中継システムにしては、完成度が高いほうだ……と、関係者たちはみていた。

[つづき]
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  • 2006/05/19(Fri) 01:24 
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