2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

髪長姫は最後に笑う。第五章(24)

第五章 「友と敵」(24)

「面白いモン見せて貰ったから、今夜はわたしらが御馳走する」
 といって、三島百合香とシルヴィ・姉は三島の車に乗り込んで去っていった。
 荒野と茅は自転車を持って帰るなければならないことと、浅黄を連れていることもあって、同行しなかった。
 荒野のママチャリの荷台の上に浅黄を乗っけて、荒野と茅は自転車のハンドルを手で押して帰路についた。歩いてもどうせたいした距離ではないし、同年配以上の人間ならともかく、浅黄のような小さな子を乗せて慣れない二人乗りをするのは危なっかしく思えたからだ。
 自転車の荷台に浅黄をちょこんと乗っけて、カラカラと押していくと、昼間、はしゃぎすぎたのか、浅黄はすぐにうとうととし始めた。荒野は片手でハンドル、もう一方の手で浅黄の体を支えながら、慎重に自転車を押していく。
「この子がいて、先生が食事の用意する、ってことは……また、みんな集まるんだ……」
 荒野の言葉に、茅は頷いた。
「玉木と徳川、堺と柏、それに、狭間先輩が来るの」
 堺と柏たちまで来るとなると、飯島たちも来るんだろうな……と、荒野は思った。なんだかこの辺の連中は、なにかあると狩野家に集まるようになってきている。
「荒野……。
 浅黄は、奉仕戦隊メイドール3のファンだったの」
「……そ、そうか……。
 よかったな、同好の志がみつかって……」
 そんなことを話しながら、荒野と茅はマンションに戻った。

 マンションの駐輪場に着く頃には浅黄はすっかりおねむモードに入っていて、仕方がないから自転車を片付けると荒野が抱えてマンションの部屋に上がった。
 浅黄の体をソファの上に横たえ、毛布を掛けてから私服に着替え、茅に紅茶を入れて貰ったり交代でシャワーを浴びたりする。帰宅してから小一時間ほどした所で、茅と荒野の携帯に「狩野家に来い」というメールが複数殺到してきて、浅黄を起こして三人で狩野家に向かった。
 その日のメニューはぶりの照り焼き、ひじきの煮付け、麻婆春雨、それに味噌汁代わりの治部煮で、とりたてて御馳走、というわけではなかったが、どれも白いご飯に良くあって食が進んだ。
 人数分のぶりとひじきははカラオケの帰りに自宅に寄った玉木珠美が強奪してきたもので、麻婆春雨は昼間出番がなかった柏が、それ以外の料理は三島百合香が調理した、という。柏は、昨日の生春巻きや回鍋肉など、中華系やエスニックな料理が得意らしい。食事の時にそんなことをいうと、柏は、「うちのおねーちゃんがそっちのほう得意だから……」といった。柏あんなは、姉の柏千鶴から料理を習っている、とつけ加えた。
「……そういや、他の放送部の面々は?」
 荒野が玉木に尋ねる。いつも玉木と一緒にいる、というイメージがある有働勇作のでかい体も見あたらなかった。
「あんな大人数で押しかけられるか」
 と答えた後、玉木は、
「……明日の撮影には、みんなノリノリで協力することになっているから、よろしく」
 とつけ加え、荒野を憂鬱にさせた。
『そういや……明日、だったよな……』
 マンドゴドラのCM撮り、本番。
「ネットでもかなり好評だったって話しだろ?」
 孫子と篤朗の試合を中継していた時間、バイト先のファミレスで働いていた羽生譲が、誰にともなく尋ねた。
「……凄いことになってましたよ、アクセス数……」
 松島楓の説明によると、ユニークユーザー数は最初、せいぜい数百程度のオーダーだったのが、時間がたつにつれてどんどん膨れあがり、最終的には十万人を超える人間が中継のサイトにアクセスしてきた、という。
「ネット囲碁のサイト利用したんで、そっちから流れてくる人も多かったですし、三割近くが外国からのアクセスでした……」
「……ヒカ碁みたいな展開だな」
 楓の説明に、羽生譲はそんな相づちを打った。
 それ以外にも、口コミを行った者が相当数存在していたらしい。
 囲碁の対局場面の合間に孫子や篤朗の動画、それに、マンドゴドラのCMのテスト映像が流れていたわけで……事情を知らなければ、なにかのパフォーマンス映像だと思えたかもしれない……。
「才賀さんの映像が流れると、ぼーんとアクセス増えるんです」
 荒野は見ていないが、孫子の伯父である才賀鋼蔵から送られてきた映像を玉木が編集して流した、という。
「わかいかったよー。ご幼少のみぎりの才賀さん……」
 玉木珠美はそう持ち上げ、その後、ぼそりと、
「……ロリ掲示板からリンク張られるのも道理だとな」
 などと不穏なことをつけ加える。
 セキュリティ周りに関しては特に力を入れていたので、動画のダウンロードやコピーはまず不可能で、リアルタイムで見るしか鑑賞の方法はなかった筈だ……と、担当した楓と篤朗は請け負った。そっちの方面では楓もかなりの腕前と知識を持っているのだが、加えて、篤朗を出し抜くとなると、かなり難しい筈であり……。
 もちろん、今日使用した動画データなども、すでに学校のマシン上から「完全に」削除している。
 普通の「削除」ではなく、篤朗や楓が「削除」したと断言るのなら、ハードディスク上の痕跡を辿ることも、かなり難しい……というよりは、やはり不可能に近いのではないか、と、荒野は思った。
 学校のマシンに対してそこまで執拗にデータ・ザルベージかける者も、まず、いないだろうが……ネット配信、などという大がかりことをする割に、変に気を遣っている所もあり、で、その辺の基準や加減の仕方が荒野にはまるで理解できないのだった。
「そういや、明日……放送部のやつら、って、なんで来るの?」
 荒野が改めて玉木に水を向けると、
「なんで……って……。
 面白そうだし、羽生さんが人手欲しい、とかいうし……」
 玉木はそう答え、その後、羽生が、
「……いや、人手欲しがっているのは、わたしというよりは、写真館のご隠居なんだけどな……。
 ご隠居、この前のでデジタルに興味持ったのはいいが、どうにも手元不如意でなぁ……誰か手取り足取り教えて差し上げる若いの、欲しかったのよ……。
 ご隠居、写真の腕は確かなんだがなぁ……。
 それに今回はスタジオ撮りじゃなくて野外撮りなんで、なにかと雑用が多くてな。タダで使える助手は、余分にいるに越したことはない……」
「……野外……あの恰好で、外に出るわけですかぁ……」
 初耳だった荒野は、思わず悲鳴に似た声を上げた。
「あれ? 言ってなかったっけ?
 ……まあ、外、っていっても、すぐそこの、うちの庭、なんだけど……」
 羽生譲は荒野の狼狽ぶりにはあまり頓着せず、恬然と答えた。

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび


↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのはち]
Adult Link*Link 【アダルトXアダルト】相互リンクNAVI ADULT-STEP.JP ERO=MIX @SEARCH 無料アダルト総合情報サイト~アダルト・ザ・ワールド アダルト専門 リンクアダルトサーチ アダルトサーチ PB SuperNAVI ADULT asa.tv
uroko.jpg
real_peeping.jpg

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ