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彼女はくノ一! 第五話 (0)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(0)

「で……ぼくたちは、その加納本家直系が擁する二人を圧倒すればいいってわけ?」
「そうらしいな」
「なんだよ、野呂さん。やる気のない返事だなぁ……」
「……あいつらとはちょっと因縁があってな……。
 正直、ここまで案内するのも、あんま、気が進まないんだ……」
「あいつら? 本家の直系は分かるけど……女のほうにも?」
「ああ。昨年末、ちょっと売り込みに行った……。
 あの時はまさか、お前らのお守りを押しつけられるとは思わなかったからなぁ……」
「別にいいじゃん。うちの年寄りどもから、たんまりギャラふんだくっているんでしょ?」
「お前らのお守りなんざ、はした金じゃあ割に合わねぇって……。
 今までおれがどれほど苦労したと……」
「そんな情けない声ださないで欲しいなぁ……。
 こんなに可愛い子ばっかで、嬉しかったでしょ?」
「そういう台詞はあと十年たってから言え。
 ガキが別嬪でなにが嬉しい……」
「あ。今、ガキっていった……後でいじめてやろう……」
「後で、は、なしだ。おれは、お前ら降ろしたらとっととずらかる。
 荒野たちだけならまだしも、ここいら、最近は最強とか姉とか、性質の悪い奴らの巣窟になっているんだ……。
 もう料金分の仕事はしたし、どいつもこいつも、料金外の仕事で関わりになりたくない連中なんでね……」
「野呂さん……本当にいっちゃうの? ここでお別れ?」
「お別れ、だ。しがない雇われ稼業の身でな……。
 今度会うときは敵になっているかも知れねぇな……」
「もうちょっといなよ。せめて、引っ越しが終わるまでは……」
「いいや。お前らも、そろそろ自分たちだけで生活する術を身につけるべきだ。
 基本的な社会ルールは十分に仕込んだから、後は、自分らで憶えろ。
 さあ、降りた降りた。おれが貰ったギャラでは、お前らに一般社会のルール教えて、この町に降ろすところまで、だ。
 加納が抱えているお前らの同類は、もう普通に学校に通うところにまでいっているって話しだぞ。お前らもさっさとそこまで慣れろ……。
 さ。降りた降りた……」

 預かった兄弟たちを指定された場所で降ろし、野呂良太は車を発進させ、数キロ走ってから適当な路肩に停車し、連絡用に渡された携帯で雇い主に「任務完了」の連絡を行った。今回野呂が引き受けた仕事はここまで、で、それ以上、やつらの面倒をみることも打診されたのだが、あまり深入りすると決定的に加納本家と敵対することになる、と判断した野呂は、その仕事は引き受けなかった。
『……それにしても……』
 この雇い主に対する最後の連絡を終えた後、野呂は車を発進させながら、心中で呟く。
『荒野のヤツも、あの姫さん世間に馴らすのに、あんな苦労したのかねぇ。
 まあ、だとしても……』

 ……あいつはたった一人、こっちは三人だもんなぁ……。

 三人の手のつけられないガキどもから解放された野呂良太は、東京方面に向けて車を走らせる。

[つづき]
目次

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