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彼女はくノ一! 第五話 (2)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(2)

 その日の放課後、楓の携帯に荒野からの呼び出しメールが入った。あらかじめ決めて合った符丁でで「緊急」、「マンドゴドラに集合」とのみ記されている。
 放課後、楓は部活にでているか、茅の帰りを待って美術室で時間を潰しているかのどちらかで、この日は部活がない日だったので、楓は美術室にいた。
 香也たちには、
「……加納様に呼ばれたので、今日はこれで失礼します」
 とのみ告げて、楓は鞄を持って美術室を後にした。
 途中の廊下で、茅とも合流する。
「茅様もですか?」
「荒野に、マンドゴドラに呼ばれたの」
 二人は頷きあって、昇降口でもどかしげに靴を履き替え、マンドゴドラへと急ぐ。といっても、茅の歩速に合わせたため、せいぜい早歩き程度の速度だったが。

 楓と茅がマンドゴドラにつくと、荒野がレジで精算を済ませている所だった。
「……いったい、どうしたんですか?」
 楓は、荒野に尋ねた。
 マスターとの取り決めにより、荒野と茅は、この店ではフリーパス状態になってる筈で……。
「……こっちが聞きたい。
 こいつらの尻拭いだということはわかっているんだけど……こいつらが何者なのか、おれ、知らないんだ……」
「いやいやいや。この子たちも悪気があったわけではないようだし、あんまり叱らないでやってくれ。
 今、うちの店もネット通販の開始に合わせてカードの取り扱い、準備しているところでな。この子たちは、タッチの差で間に合わなかったな……」
 と、荒野の説明に付け加えたのは、顔なじみのマンドゴドラのマスターだった。
「……ええっ、とぉ……」
 楓は荒野の隣りに固まって居心地悪そうにしている三人の子供たちを指さし、
「この子たちが、このお店で飲み食いして、カード払いができなくなって……」
 荒野を指さし、
「加納様が、とりあえず立て替えている……」
「……そういうこと……」
 と、荒野は頷く。
「さて、ここの支払いも無事済んだし、いったい君たちがどこの誰で、この加納荒野になんの用事があるか、向こうでゆっくり聞くとしようか?」
 すっかりしょげ返っている三人の子供たちは、おとなしく荒野の後についていった。

 荒野は、楓と茅、それに三人の子供たちを連れて、河原まで歩いていった。
 三人の意向がわからない以上、常に荒事に備えなくてはならない。まだ日が暮れきっていない夕刻の町中で、全力でぶつかり合うような真似は避けたかった。ここなら、町中とは比較にならないほど人目が少ないし、第一、周囲に対する物損がほとんどない。
「……それで、このおれが加納荒野……」
 荒野は、土手の斜面に腰掛けて、三人を睨みつけた。
「こっちの髪の長いのが、加納茅。もう一人が、松島楓。
 おれの名前を知っている、ということは、こっちの二人も知っているな?」
 三人の子供たちは、こくこくと頷いた。
「ではあらためて、聞こう。
 君たちは、何者で、なんのためにおれを捜してたんだ?」
「ボ、ボクらは、さ、捜してたっていうか、なんていうか……」
「テンちゃん、駄目! 自己紹介されたらこっちも名乗らなけりゃイケナイんだぞ!」
「ノリ! こいつら、どうせこれからブチノメスだけだろ……」
「ガクもそういう言葉遣い駄目!」
 たちまち、荒野たちをそっちのけで、三人だけで議論を始める。

『……このまま放っておいて、帰ろうかな……』
 半ば本気で、荒野はそう思った。
「……帰ろうか、茅……」
 荒野が小さくそう呟くと、それまで勝手に騒いでいた三人の子供たちは、「帰らないでぇ!」、「見捨てないでぇ!」、と、一斉に荒野にすがりついた。
「……じゃあ、さっさと目的、お前らがここに来た目的、いってみろって!」
 荒野が怒鳴ると、三人は一斉にその場で硬直し、「きをつけ」の姿勢になる。
 ……こいつらの名前と正体を知るのは、かなり後になるだろうなぁ……と、荒野は予感した。かなり確実な、予感だ。
「名前は後でいい! 帰っては駄目、というのなら、おれたちとなにがしたいのか、さっさという!」
「「「はっ! はいっ!!」」」
「きをつけ」の姿勢のまま、三人は声をハモらせて、答えた。
「「「ボクたち、荒野さんたちを倒しに来ましたぁ!」」」

『……ようやく、結論かい……』
 と、荒野は思った。
 それにしてもなんと緊張感のない……対峙していて、やる気の削がれる刺客であろうか……。

「……というご所望だから、楓、それから茅。
 ……いくよ……」
 茅は頷き、楓は、
「……あ、あのぉ……」
 と言葉を濁した。
「茅は、とりあえず、鞄みておいて。
 楓、早く準備しろ。
 外見で判断するな。こいつら、『姫』である可能性が高い。
 油断していると、足下を掬われるぞ……」
 荒野が重ねていうと、楓はようやく頷いて、どこからか一連の六角を取り出した。紐で結ばれた六角は、重い鞭、としても扱える。
「茅の身は、極力守るつもりだけど……こいつらの戦力は未知数だから、いざという時は、できるだけ自分の身は自分で守ってくれ」
 荒野は「いざというときには、逃げろ」という意味を込めてそういった。
 茅は、
「大丈夫。茅、足手まといにはならないの……」
 と頷いた。

[つづき]
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