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第五章 「友と敵」(47)
マンションに戻って制服を着替えてから、荒野は涼治に電話をかけた。三人のことを、問い合わせるために、だ。
『……おお。無事にそちらに着いたかね……』
「無事に着いたか、じゃねーだろ! なんなんだよ! あいつら……」
『古い知り合いが引き取っていた子らでな。
その知り合いが亡くなったので、引き取ることにした。
まあ、不憫な子らだ……可愛がってやってくれ……』
……じじい……あくまでとぼける気か……。
「……あいつら、おれたちを倒せと誰かに命じられたそうだけど……」
そう思いながらも、荒野も粘る。
この手の駆け引きついてには、荒野と涼治は年期が桁違いだ。だから、まともに太刀打ちできるとは、初めっから想定していない。
それでも、食い下がれるところまで食い下がるつもりだった。
『おお。元気のいい子らでな。あんまり元気がいいから、なんならお前たちに挑戦してみろ、と、けしかけてやった……。
お前たちにとっても、いい退屈しのぎになったろう……』
「あんなの、退屈しのぎにもなりやしませんよ……。
最初はおれと楓で相手したんだが、しまいには楓一人に任せておいて十分でした……」
『……なに?』
それまで平静だった涼治の声に、珍しく動揺が走った。
『そんな筈は……。
うん。そうか、あの子ら……』
……お前らを油断させるため、わざと手を抜いたな……。
と、涼治は、言い切った。
荒野は無言で通話を切り、キッチンで茶器の準備をしていた茅に「一足先にお隣りにいっている!」と一声だけかけて、全力疾走でマンションを出た。
挨拶もそこそこに、靴を脱ぐのももどかしく、狩野家の玄関を抜け、まっすぐ台所に向かう。
真理と楓がエプロン姿で夕食の準備をしているところだった。
「楓! 無事か!」
「無事って……なにかあったんですか? 加納様?」
「あの三人は!」
「……あの子たちなら……香也様と一緒にお風呂に入っていますけど……」
荒野はやはり後を見ずに風呂場へと向かう。
脱衣所にはたしかに見覚えがある三人の服と香也の服が、乱雑に脱ぎ散らかしていた。
それらを一足に跨ぎ越して、がらり、と、引き戸を開ける。
と……。
「きゃー!」
「えっち!」
「へんたい!」
荒野は三人娘にさんざん騒がれた末、洗面器や腰掛け、お湯などを浴びせかけられた。
三十分後……。
「わはは。そうか。
カッコいい方のこーや君は、この子らのこと、男の子だと思っていたのか……」
茶碗と箸を持ちながら、羽生譲は、
「こんなに可愛いのにねー!」
「……ねー!」
と、頷きあう。
あって間もないというのに、三人娘とすっかり意気投合していた。
一端マンションに戻って着替えてきた荒野は、茅とともに狩野家の食卓に招かれている。
荒野は、いいわけをする気にもなれず、「あの時」の状況を思い浮かべつつ、黙々と箸を使う。
『……あの時、おれが飛び込んでいかなければ、香也君の貞操が、非常にやばかったような気がするのだけど……』
荒野が飛び込んでいった、「あの時」……。
全裸の香也の上には、全裸の三人娘に馬乗りになっており……どうみてもそれは、「じゃれている」とか「巫山戯ている」という雰囲気などではなく……少なくとも三人娘のほうは、明らかに性的な興奮状態にあった。
あのまま、放置していたら……十中八九、その場の勢いで、とんでもない乱痴気騒ぎが勃発していたことだろう……と、荒野は予測するのだが……。
香也のために、この場では口を噤むことにする。
『……しかし、香也君も……』
荒野は、つくづく、そう感じた。
『……女性に無理矢理……という状況に陥ることが、やたらと多いよなぁ……』
女性に好かれる割には、女難の相がある。
『……こんなことが続くと、そのうち女性不信になるぞ……彼……』
その香也は、いつもより一層肩を小さくすぼめ、ちょこちょこと箸を使っては、小さく、そっとため息をついている。
真理、楓、孫子……などのこの家の住人の他に、玉木珠美とメイド服の茅、それに、今夜は珍しく在宅していた、二宮荒神なども、にこやかに食卓を囲んでいた。
この場で上機嫌でないのは、香也と荒野くらいなものだろう。
「……んでな、タマちゃんの作業の方も、こっちの作業のほうも、ようやく終わりが見えてきてな……こうして三人も新しい住人が増えたことだし、歓迎会と完成披露も兼ねて、今度の週末に庭でバーベキューパーティでもやろうかなーって……」
羽生譲がみなにそんなことをしゃべっている。機嫌が良いのは、今やっている作業の終わりが見えてきたから、ということも、あるらしい。
『……なにかというと、宴会やりたがるなぁ……この家の人たち……』
それについては、平和でいいことだ……と、荒野は思う。
『……しかし、こいつらは……』
荒野は、今日知り合ったばかりの三人娘に目を向けた。
今は、三人でじゃれ合いながら、真理の料理に舌鼓をうっているが……そうしていると、年齢相応の無邪気な表情をみせるのだが……。
……いろいろと、得体が知れない。
涼治の反応も意外だったが、それ以上に……。
『……こいつら……一体、なにを企んでいやがる……』
それとも、見かけ通り、「なにも考えてない」のか……。
いずれにしろ……また一つ、荒野の心配の種が増えたことだけは、確かだった……。
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