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髪長姫は最後に笑う。第五章(49)

第五章 「友と敵」(49)

「鳥でしょー。魚でしょー。畑も作ったし、田んぼも作った。
 みんなでおいしいもの、いーぱいつくったし、摂ってきた……」
 荒野たちの不審そうな表情にも気づかない風で、ガクは自慢そうに続けた。
「……田んぼや畑、それに魚はともかく……鳥って……みんなでハンティングでもやったのか?」
 羽生譲が、鉄砲を構えるジェスチャーを交えながら尋ねた。
「ううん。
 そういう鉄砲じゃなくてね、こう」
 テンがにぱーと笑いながら、羽生の言葉を訂正する。
 いいながらテンは、なにかを投げる動作をしていた。
「礫投げとか印字打ちっていってね……じっちゃんは、古来からある由緒正しい技で、本来なら鳥獣を相手に使うもではないっていっていたけど……」
「……みんなそこそこいけるけど、一番巧かったのは、ノリだな……。
 ノリは、目が遠いから、一番遠くまでねらえるんだ……その代わり、手元とか近くはぼやけるらしいけど……」
 ガクはテンの言葉に補足説明をした。
「……ああ……。
 遠視、かぁ……」
 それ以前の、突拍子もない部分はスルーして、玉木はそんなところで反応した。そろそろ、三人娘の突拍子もない設定に思考が麻痺しはじめているのかも知れない。
「……じゃあ、明日あたり、おねーさんと一緒に、眼鏡屋さん行こうか?」
 玉木は、ノリのほうに顔を近づけ、優しい口調でいった。
「……近くのもんも、すかっとくっきり見えるようになるぞ……」
 玉木自身、眼鏡をかけているし、多分、自宅が商店街にある関係で、なんとなく自分が懇意にしている店に客引きしてしまうのだろう。
 玉木にそういわれたノリはきょときょととあたり、特に、仲間であるテンとガクの顔を見回す。テンとガクは、「いいんじゃないか?」というように頷いた。
 それを確認してから、ようやくノリは「う、うん」と玉木に返事をする。
「……そっかぁ……じゃあ、明日、学校に引けたらこっちの家に寄るから……」
 と玉木はいいかけ、それからなにかに気づいたかのようにハッとした表情になた。
「……あ。そういや、学校!
 君たち、こっちでの学校はどうすんの?」
 三人の娘たちは意味ありげな表情を浮かべ、お互いの顔を見合わせた。
 そして、同時に立ち上がって胸を張り、
「「「……ボクら、春から、新入生やります!」」」
 と、宣言した。

 三人が、この春から、荒野たちが通う学校の新入生として入学する……ということを周囲の人間が理解するまでに、またしばらくの質疑応答を必要とした。

 三人について……理解できたか、それとも納得できたか、ということはとりあえず置いておいて……一通りの質問をし終えると、食後のお茶会はお開きとなり、香也はプレハブへ、羽生と玉木は羽生の部屋へ、荒野と茅は茶器を抱えて自分たちのマンションへと、それぞれに散っていった。
 三人は居間に残り、テレビのリモコンの争奪戦を賑やかに開始した。

 マンションに戻り、茶器を洗って片づけると、荒野は茅に三人の印象と心証について問いかけてみた。
「邪気は、ない。害意も、たぶん、ないの」
 茅の答えは明瞭だった。
「でも、潜在的なチカラは、大きい。とても、大きい……」
「……ようするに、敵には回すな、ってことか……」
 荒野は軽くため息をついた。
 能力がどうこう以前に……先ほどの風呂場の一件を感挙げても分かるとおり……あの連中、お隣りの家に、少なからず波紋を呼び起こす存在にはなるだろう……。
「……に、しても……」
 もちろん、どんな状況下に於いても、敵は少なく、味方は多い方がいいわけで……『敵に回すな』、というのは分かるのだが……。
 いずれにに、せよ……。
「……やっかい……だよなぁ……」
 ソファに体を投げ出した荒野の頭を、「いいこ、いいこ」といいながら、茅が撫で回していた。

 翌朝、いつもの時間に起き、軽く室内ストレッチを行ってから、茅と外に出てランニングをはじめると、お隣りの狩野家からあの三人が飛び出てきて、茅と荒野に併走しはじめた。茅と荒野のようなスポーツウェアではなく、昨日と同じ半ズボンにハイソックス、パーカー姿だった。
「お前ら、ひょっとして、手持ちの服、少ないのか?」
「いや、それなりにあることはあるんだけど……そういう服は、ないなぁ……」
 三人を代表して、ガクが荒野の服を指さしながら、答えた。
「昨日、真理さんに預けたカードで、適当に見繕って貰え。
 どのみち服は必要になるし、真理さん、女の子の服、見立てるの好きだし……」
「うん。相談してみる」
 三人は、意外なほど素直に頷いた。
「……それからな……」
 早朝の朝は、人通りが限られる。
 いい機会だから……と、荒野は三人に話しかけてみた。
「……これは、お願いなんだが……おれたちは、ここで、平和に暮らしたいんだ……。
 だから、お前らにも、できるだけ大人しく……目立たないようにして欲しいんだけど……」
「ああ……それそれ。
 ここに来る時、のらさんに、しつこいくらいに念を押された……」
「……のらさん?
 ひょっとして、野呂良太のことか?」
 速度を緩めず、荒野は目を見開いた。
 意外なところで、意外な名前が出てくる……。
「フルネームは……そんなん、いってたっけかな?」
 荒野とやりとりをしていたガクが首を捻ると、
「野呂良太、で、正解だよぉ、のらさんの本名……」
 ガクの脇を肘で小突きながら、ノリが小声で補足する。
「うん。じゃあ、その、のろりょうたとかのらとかいう人が、一月かけてボクたちにこっちの常識とかを教えてくれたから……その辺、大丈夫だと思うよ……」
 そう聞いて、荒野は突然、不安になった。
 野呂良太は……師弟の教育とか、そうしたデリケートな仕事にはまるで向いていないのだった……。
 それに、昨日のマンドゴドラの一件とかのことも、ある。
『……露骨に手を抜いたな……のらさん……』
 荒野は、内心でひそかに確信した。

[つづき]
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