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彼女はくノ一! 第五話 (9)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(9)

 狩野香也の場合、「学校で待っているいつもの日常」というやつは、ようするに「授業を受けて放課後まで無事にやり過ごし、下校時刻ギリギリまで部活をやって帰宅する」ということなのだが、この日は残念なことに「大過なく」とはいかなかった。

「……さて、今日は、昨日から狩野君の家に越してきた三人の少女について、狩野家の関係者にお尋ねしてみたいと思いまーす……」
 また、昼休みに玉木珠美が有働勇作を伴って、香也たちの教室に訪れたのだ。
「……んー……」
 玉木にマイクを突きつけられた香也は、唸った。
 それから急にはっとした表情になって、
「……楓ちゃん! 茅ちゃんに携帯、使わせないで!」
 と叫ぶ。
 この間みたいに才賀孫子までこの教室に召還されたら、それこそ目も当てられない……。
「……はっ!」
 楓は音もなく茅の席まで移動すると、今まさに茅が取り出した携帯を、すばやく取り上げた。楓にしてみても、孫子がちょくちょくこの教室にくる習慣ができてしまうのは、できれば避けたいのであった。
 茅は、いきなり自分の手から携帯が消失したことで、目をぱちくりさている。しばらくして楓を見上げたが、特に不満そうな様子でもなかった。……もっとも、基本的にポーカーフェイスである茅の表情は、かなり読みにくいので、本当に不満に思っているかどうかは、なかなか判断がつけにくい所なのだが……。
「ねー、ねー……」
 不審顔のクラスメイトを代表して、柏あんなが香也と玉木のほうに近寄ってきた。
「……その、狩野君の家に越してきた三人の少女について……」
「君の聞きたいことは、わかぁーる!」
 玉木はマイクに向かって何故か拳を効かせた口調でそういって、制服の胸ポケットから葉書大の紙の束を取り出し、景気良くあたりにばら撒いた。
「このプリントアウトを見よ!
 この、おめめの大きな子がガク、眠そうな垂れ目がノリ、吊り目がテンちゃんだー!
 この三人の女の子が、昨日から突然、狩野家に住むことになったのだねー!」
 玉木がばらまいたデジカメのプリントアウト用紙を手に取り、お互いに見せあっていた香也のクラスメイトたちが、一斉に「おぉおおおおおぉー!」とどよめく。
『……い、いつの間に……』
 プリントアウトの中の三人は、カメラに向かってにぱーっと笑いながらピースサインなど送っていた。たぶん、玉木は公然と三人を撮影したのだろう。
 食事と風呂の時を除いてプレハブに籠もっていた香也は、玉木がこのような撮影をしていたことにも気づかなかった。
「……そこで、だ、諸君!
 我が放送部としては、二年の才賀孫子さん、一年の松島楓さんという二大美少女に加え、さらに三人のろりっこが参入した狩野家の人々にその心境を問いただしてみることしたぁー!」
 再び、玉木は香也にマイクを突きつける。
 今や、香也のクラスメイトたちは香也と玉木を取り囲むようにして人垣を作っている。
「……んー……」
 と唸りながら、香也は、めぐるましく頭を働かせている。
 どういえば、この場をうまくやり過ごすことができるのか、と……。
「……かわいい子たちだとは思うけど、まだまだ子供だし……最初は全員男の子かと思ってたくらいで……」
 実際、香也は、三人に対し、特に思うとところはない。
 昨夜の風呂場ので騒動みたいなのは、できれば今後は勘弁していただきたいところだが……。
 香也の返答が面白くなく、なおかつ、どうやらそれが香也の本音であるらしい、と、判断した玉木は、人混みをかき分けて今度は楓のほうにマイクを突きつけた。
「……松島さん! 今後の抱負などをぉ!」
「……ほ、ほぉふ……ですかぁ?」
 不意にカメラと有働が構えるビデオカメラを突きつけられた楓は、覿面に狼狽した。
「……狩野君の周囲に突如現れた新たな美少女! しかも三人!
 この事態に関して、狩野家の先住人として思うところを訥々と吐き出したまえ!」
 あくまでハイテンションかつアグレッシブに詰め寄る玉木に、楓はさらにたじたじとなった。
「……お、思うところっていうか……子供の世話は、前に居たところで慣れてますしぃ……」
 以前いた養成所では後輩たちの世話を率先して焼いていた楓であった。
『……あー……だから、か……』
 そばで聞いていた香也は、なんとなく納得した。
 昨日、風呂場で……どうも、楓の叱り方が、手慣れていると思った……。
「……子供? 本当に彼女たちのこと、子供としか思っていませんか?」
「……子供、でしたよねー……香也様……」
 なんでそこでこっちに話しを振るのか、と、香也はその場から一目散に逃げ出したくなった……。ぎっしりクラスメイトたちが香也の回りを取り囲んでいたため、現実に逃げ出すことはまず不可能だったが……。
「……昨日、一緒にお風呂に入った時、どう思いました?」
 楓が無邪気にそう追い打ちをかけてきて、一瞬にして香也の顔から血の気が引いた。
「……なにぃー!」
「風呂だと! 一緒に風呂だと! この可愛い子たちと風呂だと!」
「はーれむだよ! ロリロリハーレムだよ!」
「それどこのエロゲですか!」
「てめえこのかのうおまえたった今から全クラスの男子の敵に回したからなそう思えいますぐそう思え……」
 ……などなど。
 香也や楓がなんらかの返事をする前に、クラス中のそこここから、怒号とも悲鳴ともつかない叫び声が上がる。
 男子生徒たちは嫉妬混じりの不満の声を、女生徒は主に「やーねー」とか「不潔」とかいう軽蔑の声とまなざしを香也に送る。
『……あ。あ。あ……』
 香也は急速に沸騰した周囲の反応を目の当たりにし、がくがく震えながら、落ち着きなく、あたりを見回した。
「……狩野君……」
 さも同情したような表情を作って、柏あんなが香也の肩に手をおいて、囁いた。
「……強く、生きるのよ……。
 ……ロリコンは、病気だと思うけど……」
 なにげに追い打ちをかけていた。

 一言でクラス中を騒がせた張本人である楓は、自分の発言のなにがこういう反応を引き起こしたのか理解できず、香也と同じように落ちつきなくあたりを見回していた。
 ……こちらはこちらで、天然だった……。

[つづき]
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