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彼女はくノ一! 第五話 (11)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(11)

 その嵯峨野先生のとりなしがいいきっかけとなって、香也と楓は釈放された。
 担任の岩崎先生と一緒に生徒指導室を出たところで、三人で一斉に肩を落として盛大にため息をつく。
「……んー……疲れた……」
「……子持ち……三人の、子持ち……」
 ぶつくさと譫言のようなことを呟きはじめる香也と楓を横目に、岩崎先生は香也たちに向き直る。
「……でも、先生、狩野君のこと、見直しちゃたなぁ……。いつもはあれだけど、いざとなるとやっぱり男の子ねー……。
 先生、狩野君が落ち着いて、はきはきしゃべることができると思ってなかった……」
 聞きようによっては失礼なことを、いう。
「……んー……今日のは、まともにつき合うのも馬鹿らしかったし、はやく解放されたかったから……」
 香也はぼそぼそとそういって、「じゃあ、部活に戻ります。なんかあったら 美術室にいますから」と去ろうとする。
 楓も、岩崎先生にぺこりと頭を下げて香也の後を追う。
『……狩野君、あれで……』
 後に残された岩崎先生は、香也への評価を改める。
『自分の興味が向かないことには、とことん消極的だけど……いざとなればそれなりに、頭も廻るし、機転も利く子だったんだぁ……』
 岩崎先生の香也への印象は、他の学校関係者と同じく、「静かで目立たない、これといって特徴のない生徒」というものだった。だが、つい先ほどの生徒指導室での出来事を思い起こす限り……教頭先生を含む教師数人に囲まれて、あれだけ堂々と「自分は無関係」と言い切れる生徒が、校内に何人いることか……。
 岩崎先生は、「表面的な印象では、生徒の本質はわからない」……ということを、香也に教えられたような気がした。
『……まだまだ、経験が足りないな……』
 完全に香也と楓の後ろ姿が見えなくなってから、岩崎先生は、自分の頬を、両手で挟むようにして、軽く叩く。

「……なんですの、それ……」
 香也と楓が生徒指導室に呼び出されていた頃……。
「……はぁ? あのお馬鹿くノ一の隠し子? あの三人が……。
 そう、そう……ふーん……あの、玉木さんがねー……うふ。うふうふうふ。
 いえ、貴重な情報の提供、感謝しますわよ……茅」
 茅からのたれこみ電話を受けた時、才賀孫子は、狩野家の自室について制服を私服に着替えているところだった。
 着替えをすませ、普段、手入れする時以外は押入の奥に放り込んでいる自分のライフルを取り出して、本来は暴徒鎮圧用などに使用される、ゴム製のスタン弾をカートリッジに詰め始める。命中すると弾丸自体が放射状に裂けて的へのダメージを拡散する、という代物で、殺傷力や貫通力はないが、ダメージは通常の弾丸とたいして代わりはない、とも言われている。
 ライフルの準備がほぼ終わったところで、狩野荒野から電話がかかってきた。
 短いやりとりで、「玉木の現在地は、商店街の眼鏡屋」ということで、意見が一致する。というか、昨夜、玉木と三人娘の一人がそんなことを約束していたのを、二人同時に思いだす。
 荒野は、直接その眼鏡屋のほうに向かうといって、通話を切った。
「……この子を使うのも、久しぶりですわね……」
 孫子は、準備を終えたライフルの銃身に軽く口づけをし、まさか剥き出しのまま持ち運ぶわけにもいかないので、ゴルフバッグにつめて家を出た。

 楓は香也が美術室に入ったのを確認した後、「急用ができた」といって香也と別れた。
 そして、荒野へ電話をかける。
「……今、先生たちから開放された所なんですが、玉木さんの居場所に心当たりは……」
『今、商店街で探している。昨日の話だと、三人娘と一緒に眼鏡屋に来ている筈だ』
「了解しました。そちらに急行します」

『……お仕置きなのです……』
 楓に中には、玉木への怒りが沸々と煮えたぎっている。先生方が放送部員を差し押さえた、といっていたので今まで深く考えていなかったが……玉木が昨日のノリとの約束を守っていたら、今頃、玉木は校内にいない筈なのだ……。
 玉木は、昨晩のうちに「号外」の原稿をレイアウトまで含めて仕上げ、他の放送部員たちにはそれを放課後、プリントアウトしてばらまくように指示して、自分は直帰したのだろう……。
 そのバイタリティは、認めるが……。
 楓にしてみれば、香也と自分を、全校的ネタをしたのは、とうてい看過できるものではなかった。
 楓は校門を出て、足早に商店街のほうへと向かう。

 楓が眼鏡屋の前まで着いた時、すでに玉木の元には、荒野が立っていた。
 正確には、玉木と荒野の間にはさらに二人、三人娘のうちのテンとノリがいいて、ノリは玉木のすぐ前に、テンは例の六節棍を構えてなにやら荒野と押し問答をしている。
 楓は気配を消して、手近にいたテンの背後に歩み寄り、
「……お仕置きなのです……」
 と叫んで、テンの体を問答無用で放り投げた。
 ようやく楓の接近に気づいた荒野が、ぎょっとした顔をして、「馬鹿!」と楓に向かって叫びながら、放り投げられたテンの体を追いかけるように跳躍、空中で抱き留めて、着地した。
「……お仕置きの邪魔するですか!」
「場所柄を考えろっての! 注目されてるじゃないか!」
 言われて、楓ははじめてそこが夕方の、人通りの多い商店街であったことを思い出す。
 周囲が見えなくなっていたことを自覚した楓の頬が、かぁー!、と熱を持った。
「で、でも! 今回の玉木さんは……やりすぎです!」
「それは、おれも認める」
 照れ隠し気味に叫んだ楓に、荒野も頷き返した。
「だけどな。
 それ、今ここで無理に始末つけなけりゃならないことなのか?」
 荒野は冷静に指摘し、ゆっくりと首を振った。
「人目、ということ以外にも……こいつらにも事情説明して納得して貰わないと……こいつら、お前らを、理由もなく玉木を襲う悪人だと思ってるぞ……」
 荒野は、胸の中に抱きしめたままだったテンの体をひょいと持ち上げ、楓に示した。荒野に拘束されて顔を赤くして暴れていたテンは、いきなり荒野に背後から持ち上げられて、バツが悪そうな表情をして楓と目を合わせた。
「……い、いいから、とりあえず、離せって……」
 荒野に捧げ持たれながら、テンはそう叫んで、また、手足をばたばたと振って暴れ出した。
 荒野のような異性に抱きつかれた、ということと、楓と二人がかりでいいように玩具にされている、という事実とに、気恥ずかしさを感じているらしい。
「どんな事情があろうが、こうなったら、もう同じだよ!
 ガク、一旦飛び出していったら、ボクたちでもなかなか止められないんだから!」

[つづき]
目次

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Comments

> 野に吉いてら着替えをすませ、普段、手入>れする時以外は押入の奥に放り込んでいる>自分のライフルを取り出して、

・・・野に吉いてら?

  • 2006/04/28(Fri) 22:07 
  • URL 
  • #-
  • [edit]

なんじゃこりゃ?

なんでこんな文字列が入ったのか、不明。
いつものようになんかの誤変換かなーっとか思っていろいろ考えてみたんだが、それらしい候補思いつきませんでした。
よって、さくっと削除。
ご指摘ありがとうございました。

  • 2006/04/28(Fri) 22:17 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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