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髪長姫は最後に笑う。第五章(54)

第五章 「友と敵」(54)

「……おお、タマ……帰ったか!
 つい今しがた、学校から電話があって、また呼び出し食らったぞ! 今度はお前、なにやった!」
「今、いろいろややこしいことになっているから、学校の呼び出しは、なんか理由つけて明日以降にしておいて……」
「……って、あれ? ケーキ屋んところのモデルさんじゃないのか、お前の後ろにいるの?」
「うん。このモデルさん。学校での、知り合い」
「じゃあ、おれたちは、今日はここで……」
「……ちゃんと、後でなにがあったか教えてよ……」
「……あ……ああ……また後で、連絡する……」
 玉木珠美を家にまで送り届けた荒野たちは、ぞろぞろとうお玉の裏口から離れた。
『……いくら才賀のヤツでも、親御さんがいる家に銃弾放り込むこともないだろう……』
 と、荒野は思った。
 つまり、これで玉木の身は、当面、安全だということだった。
「で、お前らは……どうするんだ?」
 荒野は、楓とノリとテンに尋ねた。
「おれはもともと、玉木の安全確保、それに、取り乱したお前らが目立つような真似をしないよう、見張るために来たわけだけど……。
 玉木が家に入った今は、もう目的達しているようなもんだしなぁ……」
 荒野は、意味ありげなニヤニヤ笑いを顔に浮かべていた。
 暗に、「どちらかに、荷担するつもりはない」といっている。
「もちろん、誰かが必要以上に目立つような真似をしようとしたら、力ずくで止めるけどな……。
 ノリとテンは、ガクに加勢するんだろ?
 楓……お前は、どうする?」
 荒野が楓に尋ねた時、荒野の携帯が軽やかな呼び出し音を響かせた。
「はい……ん。おれだけど……え? もう? あ、ちょっと……って、もう切りやがった……」
 荒野は、小さく息を吐いて手の中の携帯を見つめた。
「……才賀……もう、ガクを倒したって……。
 一方的に自分のいいたことだけいって、切りやがった」

 数分後、荒野、楓、テン、ノリの四人が孫子が示した場所に向かってみると……額に油性マジックで「バカ!」と大書きされ、それ以外にも顔中に落書きをされたガクが、道ばたで平和に寝息を立てていた。
 この挑発行為は、テンとノリの闘争心に火をつけた。口汚く孫子を罵りながら、二人は奇声と気炎をあげる。
 そんな二人をみて荒野は、
「……お前ら……も、勝手にやってろよ……。
 あ。せいぜい目立たないようにはしておけよな……」
 呆れたように言い放って、寝息を立てているガクを背追い、楓には「ガクの身柄を、一旦玉木の家に預けてくる」と言い残して去っていった。

『……楓にも、そろそろ自分で考えて動いてもらわなけりゃな……』
 十分以上の実力と、不釣り合いに過小な自己評価に基づいた優柔不断と自己判断回避癖。その消極的な性格故に、本来持っている能力を十分に発揮しきっていないのが、楓の現状だ。
 それに……。
『……大きな力を奮う者には、相応の責任が伴う……』
 楓ほどの力を得た者が……いるまでも他人の判断を仰いでからでなくては動けない……というのは、極めて危険な事でもあった。早急に、楓に自立心を植えつける必要を、荒野は感じている。
 だから荒野は、この機会に、なんの助言も与えず、楓自身の判断で動くようにしむけた。

『……えっとぉ……』
 テンとノリとともに取り残された楓は、いつまでも文字通り地団駄を踏んで孫子の悪口を言い続けている二人を目の前にして、途方に暮れていた。
『……いつまでもこんな所にいると、いい的だと思うんだけど……』
 それを二人に助言するべきなのか否か……楓は、決めかねていた。
 楓が、孫子の側につくか、それとも二人の側につくのかを、まず決定しなければ……そうした些細なことすらも、判断できないのだ。
 だが、楓には、十分に悩む時間も与えられなかった。
 三人は、慌てて跳びさすって、散る。
 三人が固まっていたあたりの地面にゴム製のスタン弾が突き刺さり、十字型に破裂した。
『……やっぱり……』
 孫子がガクの顔に落書きをし、ガクを放置した場所を荒野に知らせた理由は……残りの二人を怒らせ、冷静な判断力を失わせるため……つまり、挑発。
 もう一つは……。
『……標的を、労せず一カ所に集めるための、囮……』

『……ふむ……』
 ノリは、遮蔽物の多い地上を別々に逃げはじめた楓とテンとは違い、一人だけ近くの民家の屋根に飛び乗った。見通しの良い場所に出れば、それだけ狙われやすくなるわけだが、先ほどの着弾で、だいたいの狙撃位置は掴めている。だとすれば、注意を向けていれば良い方向も自ずと明らかになるわけで、ノリの目と速度を持ってすれば、発射弾を確認してから逃げることも可能だった。
 それより、ノリはガクがどのような方法で、あのように無傷でしとめられたのか、その方法のほうが気になった。三人の中で一番力が強いガクは気分屋の直情型で、怒りに我を忘れた時のガクが、どれほど御しがたい存在であるのかは、ノリとテンは過去の経験からよーく思い知らされている……。
 視力のいいノリは、屋根の上にきらりと光る破片をすぐに発見した。
 その破片は、帯状に細長く分布していて、その帯を延長すると、ちょうどガクが倒れていた地点になる……。
『……なるほど……遠方から、薬を打ち込んだか……』
 解ってしまえば、実に単純な方法だった。
 だが、自分の接近戦能力に過剰気味の自信を持ち、銃弾ぐらいは余裕ではじき飛ばせるガクは、敵の姿を認めたら、なりふり構わず直線的に突進していたろう……。
「ガクを相手にした場合」という条件付きだが……効果的な手段だった。
 一瞥して相手の手の内を読み、「冷静、かつ、油断をしない相手」と孫子を評価したノリは、すぐに楓やテンと同じように、地上の上に飛び降りた。
 ノリ飛び降りるのと同時に、それまでノリがいた場所を、孫子のスタン弾が通過していく。

[つづき]
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