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第五章 「友と敵」(55)
玉木の家にガクを預けた後、荒野は気配を絶って町中を疾走する。気配を絶って……とはいえ、白昼、市街地で全力疾走するのは、久しぶりのことだ。
走りながら、携帯電話を取り出す。
まずは、孫子にかける。呼び出し音三回で、孫子が出た。
「おれだけど……もう、いい十分だろ? 玉木はこちらで保護した。あいつには後でちゃんと謝らせるから……」
先ほど、用件だけを告げて通話を切られたばかりだから、荒野は勢いこんで話し出した。
『……わたくしのほうが停めても……あの二人は、止まらないのではなくて?』
孫子はそれだけいうと通話を切り、後は呼び出しても出なかった。
……どういう結果になるかは解らないが……後はもう、やつらがやりたようにやらせてみせるしかないか……と、荒野は腹を括った。
と、すれば……荒野がやるべきことは、観察と監視である。周囲に、余計な被害を出さないこと。被害がでそうになったら、即座に食い止めること……ということにさえ、気をつけていれば……。あとは、楓、孫子、ノリ、テンの戦い方を……じっくりと観察しておけばいい。
これから付き合いのためにも……ということもあったが、楓と孫子に関しては、ある程度手の内は分かっているが、最近、新しい師匠についてからの成長についてはよく把握していないし、ノリ、テンについては、未知数の部分のほうが多い。
そう思えば、今回の騒動は、荒野にとっては「デメリットばかり」……とも、言い難いのであった。
『……正確だなぁ……』
ノリは孫子の弾道を、そう評価する。そして、昨夜、背筋を伸ばして食事をしていた孫子の姿も合わせて思い起こし、
『冷静で几帳面な、常識人』
と、孫子の性格を規定した。
……もっとも、孫子の性格に関するノリの評価に関しては、荒野あたりが聞いたら即座に否定しそうな気もするが……とりあえず、異論を挟みそうな荒野は、この場にはいない。
『……だとしたら……』
出来るだけ、誰も思いつかないような……突拍子もない、反撃方法が、いい……。
ノリはひと目を避けるように、細く曲がりくねった裏道を走っているに、同じように気配を絶ちながら孫子のいる方向に向かっている楓の背中に遭遇する。
楓のほうは、ノリに背中を向けていることと、それに、なにやら考え事をしているらしく、ノリの存在に気がついた様子はなかった。
それを幸いに、ノリは楓の進路を避け、楓から少し距離をとって、併走するような感じで孫子がいると予測される地点に向かう。
すると今度は、テンと合流することになった。三人とも、同じ地点から出発して同じゴールを目指しているのだから、どこかではかち合う筈なのだが。
ノリは早速、先ほど屋根で目撃した破片のこと、そこから推測されることなどをテンに報告する。テンの反応は、ノリの推測を面白くなさそうな顔をして拝聴した後、頷いただけだった。ガクがああいう状態になっている以上、なんらかの薬物が使用されたことはほぼ確実なわけで、その物証がみつかったとしても、今の時点で事態が好転するわけでもない。せいぜい、孫子の手口の一つが明らかになった、という程度のことでしかないのだった。
ノリとガクは、なにか困ったことがあると、テンにどうすればいいのか相談することにしている。普段、ぼーっとして反応が薄いように見えるテンは、そのような相談事の際、特に考えるそぶりも見せずに即答することが多かったが、その回答はかなり確実な打開策であることが多かった。
そんな普段の経験から、ノリとガクは三人のブレーンとしてのテンを信頼している。
そのテンは、今回、
「確実な方法と、トリッキーな方法がある」
と答えた。
孫子の性格を「冷静で几帳面な、常識人」として読んでいたノリは、即座に、
「トリッキーな方法にしよう」
といった。
その後、テンが口にした策は、たしかに「トリッキー」な物だった。
荒野は、いくつかのルートを想像し、その一つでノリとテンの姿をみつけた。
二人は、気配を絶っていることで安心しているのか、それともそもそも「後をつけられる」という経験に乏しいため、警戒心が働かないためか、荒野の存在に気づいた様子はない。
二人は、走りながらしばらくなにやら話し込んだ後、顔を見合わせて頷きあって、一足跳びに近くの家の屋根に昇った。
『……おい!』
荒野は心中で小さな叫び声を上げた。
荒野には、二人の動きはかなり不用心なものに思えた。
案の定、二人に向かって次々と銃弾が飛来するのを、荒野は視認する。
孫子は、弾丸数に余裕があるらしく、弾丸をケチっていなかった。また、最初の銃弾から予測される位置からも、やはり若干の移動を行っているようだった。
しかし二人は、軽々と孫子の狙撃をかわし、むしろ、孫子の注意をどこかにひきつけようとするかのように、ことさら挑発するような動きを見せながら、少し離れた場所へと移動していく……。
『……あの二人……』
なにか、考えがあるらしい……と、荒野は思った。
「ノリ……荒野にーちゃんが、出てきた。追跡されている……」
テンは鼻をうごめかせて、小さな声でノリに告げた。
「荒野にーちゃん、邪魔する? 使える?」
ノリは、背後に視線を向けないように気をつけながら、テンに聞く。
「……どっちも、なしだと思う……。
荒野にーちゃん、孫子おねーちゃん以上に冷静だし……でも、今回は様子見してくれるかと……」
テンの答えを聞いて、ノリは小さく笑った。
「なぁんだ。毒にも薬にもならないってやつだね」
「そうだね」、とノリに同意しながら、テンはさらに続けた。
「……あと、遠くから、こっちをバラバラに見ている奴らが、いっぱい……」
「それは……気づいている……」
三人の中で一番遠くまで見通せるノリが、テンの感触を裏付けた。
「……そっちはあれ、じっちゃんがいってた奴らじゃないか?」
「うん。ぼくらがどこまでやれるのか知りたい奴ら、予想以上に数が多いみたいだ……」
そう返事をしながらも、テンは、
『……遠くで見ているだけの奴らよりも……荒野おにーちゃんの側にいたほうが、面白そうかな……』
と思いはじめている。
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つづき]
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