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彼女はくノ一! 第五話 (16)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(16)

 テンは孫子に首根っこを掴まれたまま、つま先立ちの高さにまで持ち上げられる。
 テンを目前にかざしたまま、孫子は楓のほうに突進していった。
 楓は、相変わらず手持ちの六角を景気よく「こちらのほう」にぶち込み続ける。
 逃げ場を封じられ、否応なく六角が降り注ぐ方向に真っ正面から突進していくテンは、ダース単に六角を必死になってたたき落とさなければならないハメになった。一つでも取りこぼせば、命中して痛い思いをするのは自分なのである。痛い思い……程度で済めばまだいいが、楓の投げる六角をまともに自分の肉体で受け止めたら、肉がひしゃげる、骨が砕ける、血管は引きちぎられる……で、最悪を予想すれば、一生引きずる障害を残す……ということも、考えられた。
 テンは、悲鳴をあげながらも必死になって棍をふるい、六角をたたき落としつづける。

 テンの脇に熱く焼けたライフルの銃身が押しつけられる。孫子は、そのテンの脇からライフルの銃身を突き出し、突進しながら、楓に向かって断続的に発砲した。走りながら、ということで、狙い自体は正確さにかけたが、楓への牽制にはなる。
 楓は、孫子の銃撃を見切って身をかわしながら、手持ちの武器を投げつけるペースは落とさない。
 おかげでテンは、それまでの生涯で最大の恐怖を味わうことになった。
 孫子は、楓の目前にまで迫ると、今度はテンの体全体を容赦なく楓に叩きつける。
 楓は孫子に無象長に投げられたテンの体をやはり軽々と避けた。楓は、その場で跳躍して孫子とテンの頭上を飛び越える。
 テンの体は孫子の束縛から逃れ、地面に転がった。
 テンという楯も失い、跳躍中に楓が放った攻撃がいくつか、孫子のライフルに命中しはじめ、耳障りな音を立てた。
 楓が着地する頃には、弾倉を入れ替える間もないし、精密機械でもあるライフルにいくつものシャレにならない衝撃を受けた、と判断したのか、孫子は体のを楓のほうに向き代えながら、ライフルから手を放し、空中で器用に回転させて、まだ熱い銃身を片手で掴む。同時に、もう一方の手で、腰のホルダーからコンバットナイフを抜きはなった。
 楓と孫子が、激突する。
 次の瞬間には、今度はほぼ同時に跳び下がり、五メートルほどの距離をとって一瞬睨み合ってから、お互いの目を見つめ合ったまま、凄い勢いで走り去っていった。

 後に残されたテンは、しばらく地面に座り込んで動けなかった。

 テンが気づくと、いつのまにかすぐ側に荒野が立っていた。
 荒野は「あの二人は、あまり刺激するな」、「落ち着いたら、ノリを回収して帰れ」、「なにかあったら電話で連絡しろ」ということをテンにつげ、自分は「あの二人の様子をみてくる」と言い残して、すぐに姿を消した。

「……おー……うどーちゃんかぁー……どうした、今頃?
 え? 学校? 家に呼び出しの電話はいったけど、例によって居留守つかって貰っている。ま、そっちの件は、明日一日、じっくりとしぼられて反省文大会でもするさ。
 え? 銃声、のようなもの? この近くで?
 近藤ビルって……ああ。あそこのぼろいのか。知っている知ってる。
 うん。つい今し方? ああ。近いし、いくいく。すぐいく。用意したらすぐでてく。
 うん。詳しい事は現地ででね……」
 玉木は電話を切ると、デジカメ、ボイスレコーダー、ビデオカメラ、それに「放送部」のロゴが入った腕章……などの取材用具一式をバッグに詰めはじめる。そして、未だ寝息を立て続けているガクの顔に悪戯描きをしている弟と妹に向かって、
「……おねーちゃん、近所に用事出来たから、ちょっとでてくるな。
 おねーちゃんが留守の間にその子が起きたら、電話一本いれてくれ……」
 と声をかけて家を出た。

 近所の主婦・Aの証言。
「大きな音? 聞いた聞いた。十分くらい前かね。ぱんぱんぱん、って、パンク音みたいなのが何度も続けて……。
 え? あれ、近藤ビルの近く? そんなに近かったの……。
 いえ、事故とかはなかったみたいよ。救急車もパトカーもきてなかったし……」
 OL・Bの証言。
「……聞いた聞いた。うちの会社の入っているビルのすぐ側で大きな音がしたんで、慌てて音のしたほうの窓、開けて外をみてみると、なんか子供が道路の座り込んでた。
 音が出るモデルガンとかで遊んでたのかなーって思って、あまり気にしなかったんだけど……。
 うん。その前後は、全然静かだったよ。いつもの通りっていうか……」
 学生・C、Dの証言。
「その音、帰る途中で聞いただけどさ……」
「すぐ近くで聞こえたんで、二人して音のしたほうにかけてったんだよな」
「そしたら、うちの制服着た女と、軍服……」
「馬鹿。あれ、戦闘服っての。都市迷彩の」
「そうそう。そういうコスプレしてナイフとモデルガンもった女が一瞬現れて、あすぐどっかいっちゃったんだよな……」
「見えたの、ほんの一瞬だったから……夢でも見たんじゃないかと思ったけど……」
「二人一緒に、同じ幻覚みるのというのもなあ……」

 近藤ビルに行くまでの間、玉木は通りががった人々に簡単にインタビューして回る。カメラを廻しさえしなければ、足を停めて付き合ってくれる人の数もそれなりにいた。
 基本的に、この辺の人々は愛想が良く親切だ。事件や刺激が少ない田舎町ということもあり、玉木の「放送部」の腕章をみると、「あれ、結局なんだったの?」と玉木に聞き返してくる者も少なくなかった。
 証言してくれた人々の大半は、「音を聞いた」だけだったが、まれに、その音の前後に、関係ありそうな幾人かの人物を目撃した、という証言が得られた。
 そうした人々の証言に共通しているキャラクターは、「子供」と、「学校の制服姿の女の子」、「野戦服の女」……。
 このうち、制服の女子と野戦服の女は、組み合っている所とか、塀の上を走っているところとかが目撃されていた……。

『……ひょっとすると……』
 玉木は、商店街周辺で、年末、囁かれていたある噂を思い出す。
 ……サンタとトナカイが、以前、ショッピングセンターで暴れた二人組と同一人物である、という噂……。
 その噂は、二人が大量のお客を商店街に呼んでくれるようになった頃から、誰に命じられたわけでもないのに、自然に自粛するような空気が出てきて、すぐに下火なり、今ではほとんど忘れ去られているが……。

[つづき]
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