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彼女はくノ一! 第五話 (17)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(17)

 有働勇作と合流した後、玉木珠美は情報交換をする。先に近藤ビルについていた有働は、玉木がその辺の道端で様々な不審物を発見し、種類別にビニール袋に入れて保管していた。
 ガタイがでかくて口べただからなにかと誤解されがちだが、有働はこれで地道な調査とかは得意だし、機転もきく。玉木とつるむことが多いのも、同じ放送部に所属しているからというより、志望する進路がだいたい同じ方面だからだった。性格的な向き不向きを考慮して分業しあうことが多いが、有働と玉木はお互いの能力に対しては全幅の信頼を置きあっている。
 現在、放送部の部員数が多く、時に逸脱をしながらも活発な活動を行っている理由は、この二人が揃っていて、活発に動いているから、という原因によるところが大きい。先日の孫子と徳川の囲碁勝負のように、なにかというとイベントを計画し、実行にまで持っていってしまうバイタリティに引き寄せられた連中が多かった。

 二人して、五寸釘の親玉みたいな細長い金属片や硬いゴムで出来たひしゃげた十字型の破片とか、ビニール袋の中に集められた意味ありげな不審物を覗き込みながら、「さてこれらは、いったいなんのためにここに残されたのだろう?」と揃って首を捻っていると、近藤ビルの中から玉木の知っている子供が二人、寄り添うようにして出てきた。
 近藤ビルに入っているテナントは、地元中小企業の事務所であり、そのビルと子供の取り合わせはいかにもミスマッチだった。共用部分の廊下や階段などには出入りできるだろうが、ビルの中には、子供が興味を示すようなものが、全くといっていいほどない。
 そう思って、玉木がその二人の子供の顔を確認すると、驚いたことに、昨日、狩野家で知ったばかりの……その存在をネタにして玉木が「号外」を作るきっかけになった子供たちだった。三人のうち、ガクは玉木の家で弟と妹の落書き帳になっている。さっき別れたばかりの残りの二人が、揃って、ここにいた。
 二人は、玉木の存在に気づくと、その場に棒立ちになって硬直した。
 その二人のほうから、「オモチャのちゃちゃちゃ」の可愛らしいメロディが鳴り響く。二人のうち、もう一人に肩を貸している方(たしか、テンといった。テンの肩に体重を預けるようにしてすがりついている方が、ノリ)がごそこそポケットをさぐり、携帯を取り出す。
 そして、少し話し込んだ後、
「……かのうこうやから……話しがあるって……」
 と、携帯を玉木に差し出した。
 渡された携帯で加納荒野と話しながら、玉木は、
『……絶対、偶然……ってことは、ないよな……』
 と思った。

 携帯で荒野に指示された通り、四人で一端玉木の家に向かい、まだ目を醒まさないガクを有働に背負わせる。
「女の子の体に公然と密着できるなんて、滅多にないことだぞ。役得だなあ、ウドー君!」
 と玉木が茶化すと、
「……役得と感じるほど、まだ膨らんでません……密着しているからこそよくわかりますが、ほぼ、真っ平らです」
 有働勇作は、真面目な顔をして答えた。
 傍でそんな会話を聞いていたノリとテンは、馬鹿にされていると思ったのか、有働にかみつきそうな顔をしていたが、ガクを背負って運んでくれていることを考慮すると、怒りを表面化できないので、なんとも複雑な情けない表情をしていた。

 商店街のはずれで、学校から帰る途中らしい、狩野香也、樋口明日樹、加納茅と出くわす。
 玉木たちも狩野香也の家へ向かう途中だったし、学校の最終下校時刻をいくらか回ったくらいの時刻だったので、偶然とはいっても、十分にあり得る偶然だった。
 玉木と二人の子供たちは、自分の知っている範囲内で今日の出来事を問われるままに三人語った。それを聞いた香也と明日樹がなんとも複雑な表情をし、茅だけが一人澄ました顔をしている。
 玉木にとって、香也と明日樹の反応はまだしも予測できたが、茅が動揺を露わにしていないことに関しては、違和感を持った。
 そういえば、この茅という子は、あの徳川に、囲碁で圧勝しているのだ。それも、経験はなく、見よう見まねのぶつけ本番だ、と、自称していた。
『……この子が……転入生四人の中で、一番得体が知れないのかも……』
 玉木は、そう思う。
 他の三人も謎や疑問に思う点は多いのだが……他の三人は、それまで経験したことをなんとなく匂わせる言動を、多少の差こそあれしているのだが……茅の場合、そうした「過去を推測させるもの」が、極端に乏しいような気がするのだ。
『……こりゃ……カッコいいほうのこーや君の説明が、ますます楽しみになってきた……』
 どのように予測しても、荒野の説明はかなり突拍子のないものになるだろう。そもそも、今、玉木の前にいる、荒野たち転入生四人組や、それに、この、三人の子供たち……の存在自体が、どうしようもなく、「変」なのだ。
 どこか、嘘っぽいというか、日常性から乖離している、というか……。
 それら、「変」で「非現実的」な人々が、どこから、なぜ集まってきたのか……という説明も……やはり、「変」で「非現実的」なものに、なってしまうのではないだろうか?
 例えば、説明を聞いた後、玉木が容易に信じられなかったり、信じたとしても、玉木自身が「……これは、公表できないな……」と思ったりしてしまうような……。
 そんな、複雑怪奇な事情が、彼らの背後にはあるような気がした。

 狩野家の前につくと、玄関前に、荒野、楓、孫子、が揃っていた。
 軽く挨拶や会話をかわしていると、庭のほうから「バイトの帰りに荒野たちと合流した」という羽生譲もやってきて、玄関を開けて、全員で入ろうとする。
 出迎えた真理は、楓と孫子、それに、三人の子供たちの様子をみて、顔をひきつらせ、その場で「風呂場に直行して、お風呂できれいにしてくるように」と言い渡した。
 汗と埃にまみれた五人の様子は……それほど、酷い有様だった。
 五人が風呂に入っている間に、玉木は例によって自宅から持ち込んだ食材を真理に渡し、真理と一緒に夕食の手伝いをした。羽生譲は奥に引っ込み、香也は明日樹を家まで送りにいった。
 家が自営業をやっている関係上、玉木が弟や妹の食事を用意する機会も多く、本格的な料理をした経験こそないものの、玉木も、包丁の扱いや簡単な味付け程度なら、経験もある。
 今まで一方的に御馳走になってばかりだったので、たまには自分でも手伝いたかった。
 有働は、居間で荒野や茅となにやら話し込んでいた。

[つづき]
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