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彼女はくノ一! 第五話 (18)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(18)

 家に着いてからもガクは、こんこんと眠り続けた。
 しかたなくノリとテンが玄関で有働からガクの身柄を預かり、二人で風呂場まで運んでいく。脱衣所でガクの服を脱がし、風呂場に運び入れてシャワーで冷水を浴びせると、ようやく、ガクが悲鳴をあげながらとび起きた。
 首を振って髪にかかった水滴をはらっているガクに、
「顔、ちゃんと洗ったほうがいいよ……」
 と、ノリが手鏡を手渡す。
「……顔?」
 ガクは、首を傾げつつノリから手渡された手鏡を覗き込んだ。
 一瞬、息を呑んでから、
「……なんじゃこりゃー!」
 と、絶叫する。
「……すごいよね、今のガクの顔……余白が残っていたら、ボクもなんか描いたのに……」
 二人のそばで成り行きを見守っていたテンが、いかにも残念そうな声で呟いた。
 最初にガクの顔に落書きをした孫子は、素知らぬ顔をして湯船に浸かっている。
 同じように湯船に浸かりながら、楓はテンのほうから視線を逸らしている。
 テンは、洗顔石鹸を盛大に泡立て、執拗に顔を洗い始めた。

 風呂から上がる頃には、落書きのほとんどをなんとか落とすことができた。洗いすぎて、顔の皮膚がひりひりしたが、顔一面に落書きをつけたままよりは、よほどマシだ。
 それからみんなで夕食いただき、それが終わると、今度は荒野が皆をマンションのほうに誘った。
 ノリ、テン、ガクの三人は荒野たちのマンションの中に入るのは初めてだったので、物珍しそうにキョロキョロあたりを見回した。有働と玉木も荒野たちのマンションに入るのは初めてだったが、何の変哲もない室内の様子よりも関心を持っている懸念事項があったため、三人のようにキョロキョロあたりを見渡す、ということもなかった。
 茅が紅茶を用意しているうちに、とても成人にはみえない三島百合香という小さな女性(前に荒野に聞いた通り、自分たちより小さいくらいだな、と、三人は思った)が分厚い封筒を持って騒がしく入ってきくる。
「全員揃ったから……」と前置きをし、荒野はまず「今日の騒ぎの元凶は、玉木の号外だから……」と、、玉木に、「明日にでも、迷惑をかけた全員にマンドゴドラのケーキを奢るように」と申し渡した。
 玉木は「……ケーキくらいなら……」と不承不承頷き、三人の少女は無邪気に歓声をあげた。

 それから、荒野に即される形で、有働と玉木が、今日、不審に思ったことについて、その場にいた全員に説明した。
 それは、三人と楓と孫子が抗争した際にでた騒音とか、目撃者の証言とか、遺留品などの物証とかだったが……確かに、「……適当にごまかせない所まできているな……」と思わせるだけのものを、玉木と有働は掴んでいた。
 荒野は、この土地に来てから今までのことをかいつまんで玉木と有働に話して聞かせた。途中で、三島が、楓が、才賀が、口を挟み、荒野の話しを補完していく。
 ついでに、孫子が半壊したライフルをゴルフバッグの中から取り出したり、あくまでマンションの室内でも可能な範囲内で楓や三人が軽くトンボを切ったり棍を振り回して演舞して見せたりした。
 室内でも可能な範囲、とはいってもこの面子が間近で動くとなると、風圧だけでも十分な迫力と説得力がある。なにしろ、平然と発射されたライフル弾をたたき落としてしまう連中なのである。

 そうした本物の持つ迫力に気圧された、というわけでもないが、玉木と有働は、時折質問をした以外、おとなしく荒野たちの話しを聞いていた。
 延々と、自分たちが漠然と予想していた以上に詳細な内容を当事者の口から聞いているのだが、玉木と有働はそのことに対してはむしろ、感謝するよりは呆れ返っているように見えた。
 あるいは、次々に提示される情報量が多すぎて、頭の中で処理し切れていないようにも、見えた。
 新参者の三人も、今まで荒野、茅、楓、孫子の事情についてよく知らず、また、理解しようという努力もしていなかったので、荒野たちの話しをかなり興味深く拝聴することができた。
 話しが現在、つまり、学校に通いはじめて、四人が現在の境遇と生活になんとかなじみはじめた時に、自分たち三人が来て……今日の騒動が起こって……収束する……というところまで済んだ時、荒野は、
「……そんなわけで、おれたち、このまま静かに普通の学生として暮らしたいだけなんだ……協力してくれると、有り難い……」
 と、玉木と三人に向かって頭を下げた。
 今日の騒動の元凶となった「号外」を作った玉木、楓と孫子をたきつけ、対立させて騒動をさらに大きなものにした三人は……荒野が淡々と事情を説明し、命令や強制をするのでもなく、素直に頭をさげて「お願い」をしてきたことで、かなりばつの悪い思いを味わった。

 話しがだいたい終わった時には、あと数十分ほどで日付が変わる、という時刻になっていた。
「……残りの話しや質問があったら、明日以降に……」
 ということになり、玉木は有働に送られて、後の面子はそれぞれの居場所に帰っていく。
 とはいっても、三島は同じマンション内の部屋だし、他の人々はお隣りの一軒家という至近距離だったが。

 三人組と楓と孫子は、物音を立てないようにそっと玄関から家に入り、それぞれの部屋に戻る。楓と孫子は狭いながらも個室を与えられており、三人は、共同で一部屋を使っている。
 三人は押入から布団を出して敷き、今日、真理に買ってもらったばかりの真新しいパジャマに着替えて布団の中に潜り込む。
 昼間暴れ回り、夕食後にも荒野たちのマンションで長話につき合っていたため、披露の溜まっていたノリとテンは軽い寝息をたててすぐに熟睡し始めた。
 夕方に熟睡していたせいか、ガクだけがいつまでも眠ねず、かといってすぐ隣りに寝ている二人を起こす気にもなれず、布団の中でにじんまりともせずに過ごした。
 しばらく目を閉じて寝返りをうつなどしていたが、ついにどうにもじっとして横になっていることに飽きてしまい、他の二人を起こさないようにそっと寝床を抜け出して部屋をでる。
 寝静まった家の中で他にすることもなく、いきたくもないトイレにいき用を足す。
 それでも一向に眠気が訪れないので、足音を忍ばせてこの家の人々の寝顔を覗いて廻る。
 真理、羽生、楓、孫子……楓と孫子は、平常時であれば自分が眠っている所に誰かが侵入してくれば、すぐそれと察知し飛び起きる筈だったが、この日ばかりは久方ぶりに全力を尽くして戦ったので、ガクが忍び込んでもぐっすりと熟睡したままだった。
 孫子の部屋で一瞬、「……落書き、しちゃおうかな……」と考えないでもなかったが、楓と孫子を怒らせるとどういう怖い目にあうのか、風呂場で湯船に浸かっていた時、仲間のノリとテンに延々と聞かされていたので、あやういところで思いとどまる。
 最後に入った香也の部屋で、急に昨夜の風呂場での出来事を思い出し、カッと体が熱くなる。
『……昨日は、なんかみんなはしゃいでいたなあ……』
 香也が、家族同然に育った「じっちゃん」以外に、はじめて間近に裸をみた異性であるから……という照れ隠しが、大きかったのだろう……とは思うが……。
『……自分で、自分のあそこ……お兄ちゃん鼻に擦り付けちゃったんだよなぁ……』
 そんなことを思いながら、寝ている香也に顔を近づけ、まじまじと顔を見つめる。
 それだけで、心臓が大きく脈打った。
 見ているうちにどんどんおかしな気分になってきて、慌てて香也の顔から目をそらす。
 すると、今度は首筋に目がいく。
『……ちょっとくらい、いいよね……』
 真冬の、夜中である。
 じっとしていると、流石に寒い。
 ガクは、そっと香也の布団をめくり、その中に潜り込んだ。
 香也の体温で暖められた布団の中は、暖かかった。
 それ以上に、香也の匂いがした。
『……お兄ちゃんの匂い……』
 ガクが香也の首筋に顔を密着させても、香也は目を覚まさない。
 ガクは、香也の胸のボタンをそっと外し、香也の胸に耳を密着させる。
『……お兄ちゃんの、体温……お兄ちゃんの、心臓の音……』
 そうしていると、それまでまるで眠くなかったのが嘘のように、猛烈な眠気に襲われた。
 ガクは、特に深く考えることもなく、そのまま香也の胸に顔を密着させて、眠りはじめる。

[つづき]
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