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髪長姫は最後に笑う。第五章(62)

第五章 「友と敵」(62)

 荒野による小一時間ほどの「三人探し」は見事な徒労に終わった。
 為す術もなくなった荒野は、まずマンションで待機している茅に電話をかけ、「三人が狩野家に帰っていないか」確認してもらい、次いで、楓にメールを打って「三人の行くような場所に心当たりはないか?」と尋ねてみた。
 ちょうど、五時限目と六時限目の間の休憩時間だったこともあり、メールを送信してからいくらもしないうちに楓から電話があった。
『……あの三人、ついさっきまで、この教室にいましたぁ!』
 荒野が電話を受けるのと同時に、何故か楓が、急いた様子で話し始めた。
『加納様! なんであの三人が学校に来ているんですか!』
 楓の剣幕と、話されている内容を理解し、荒野の目が点になる。
「……学校に……その教室に、いた……だと……」
 しばらく唖然としてから……荒野は、低い声で答えた。
「……あの三人がなぜ学校にいたのか……出来れば、本人たちに聞いてみたいね……じっくり……」
『……あ……ああああ、あの……加納、様?』
 荒野の機嫌が覿面に悪くなったことを察した楓が、動揺してどもりはじめる。
『き、教室に来ていた、と、いっても……大人しく、他の人にみつからないように見学していただけで……。
 そ、そりゃあ……岩崎先生や他の人たちのの視線をかいくぐって、ことさらに飛んだり跳ねたりしたから、わたしの心臓的には、すっごぉく、悪かったですけぉ……』
「楓、命令だ」
 荒野は電話越しにぴしゃりと楓に命令した。
「あの三人を、一刻も早く引っ捕らえろ。授業を放棄しても構わない。さっきまでそこにいた、ということは、まだ学校付近にたむろしている可能性が高い。
 三人全員が無理なら、ガクにだけでもいい。放課後になる前に、合って話しておきたいことがあるんだ。
 おれも、すぐにそちらに向かう」

 楓にはそう命じたものの、荒野は、楓一人では荷が勝ち過ぎるだろう、と思っていた。「能力」の問題ではない。相手が三人であり、楓は一人しかいない、という「数」の違いは、どうにもしようがなかった。同じような背格好をしたあの三人が、本気で目くらましをし始めれば、楓でなくともいいように翻弄されるのは目に見えている。
『……本当なら、頼りたくはないんだが……』
 荒野は学校に向かいながら、電話で茅に簡単に事情を説明した後、もう一人、学校にいる関係者に電話をかけて、協力を要請した。

「……やつらの居場所、目星ついたか?」
 学校付近の人通りの少ない路地裏で、荒野と楓は待ち合わせをした。
 一端、急用を用意して早退した関係で、私服の荒野がのこのこ学校内に舞い戻るわけにもいかない。この時間に制服姿で学校の近所をうろついているのもそれなりに目立ちはしたが、楓のほうはなんとでもいいわけが可能だった。
 楓は、荒野の問いかけには、静かに首を振るだけだった。
「……校舎内は一通り探してみたんですけど……それらしい気配は……」
 楓がそういうのなら、すでに校舎内にはいない可能性が高い……と、荒野は思った。いくら広い、といっても、楓の気配を読む感受性は、下手すると荒野よりも鋭敏なくらいだ。
 あの三人のような非凡な存在なら、二十メートルや三十メートル先からでもかぎ取れるだろう。それに、楓の移動速度が加われば、校内を一通り走査しても時間的にいくらもかからない筈だった。
「……校舎内にいない、とすれば、すでに学校を出たか……」
「……部室棟とか、体育館あたりはまだ調べてないんじゃない?」
 突如、楓の背後に人影が現れた。
 その人影の気配を察知できないまま背後を取られた恰好の楓は、ギョッとして、慌てふためいて振り返った。
 知らない間に背後をとられる、ということは……楓の属する世界では、相手に生命線を握られる、というのに等しい……。
「……はぁーい!」
 気配を読むことに長けた楓にさえ、気取られずに現れた人影は、楓と目が合うと、片手を挙げて軽い口調で挨拶をした。
 シルヴィ・姉だった。
「気にすることないわよ。
 埋伏と探索とが、実戦力には乏しい姉の得手なんだから……」
 二宮や秦野のように荒事を得意とはしないかわりに、息を潜めて自身の存在を秘匿し、とことん情報を収集して生還することを得意とするのが、姉や野呂だった。足や反射神経に秀でた野呂は単独行動での潜伏や先鋒に、身体能力的には他の六主家に劣る姉は、独自のコネクションや薬物、技の体系を持っている……と、言われている。
 が、当然の如く全ての手の内を外部の漏らしてはいないから、部外者には全容は窺い知れない。
『……この人……』
 楓は、内心で冷や汗をかいている。
『……その気になれば……』
 先ほど、声をかけられるまで気づかなかった……ということは、楓をどうにでも出来た、ということでもある。
 正面からぶつかったら……シルヴィは、「最強」に直に手ほどきを受けているほどの実力を持つ楓の、敵ではない……。しかし、「暗殺」という手段に訴えられたら……。
『……防ぐ、手だてはない……』
 強さ……とは、所詮相対的なものであり……様々な方向性の強さが、ある……と、楓は思った。
 六主家の人々というのは……本当に、凄い……。
「……コウがわざわざ頼み事をしてくれるなんて、日本に来てからはじめてじゃない?
 オネーサン、ウレシーワー、オトート、ヨヤク、アマエテクレタノネン」
 後半のイントネーションは、いかにも、といった態の、わざとらしいガイジン・カタコト・アクセントだった。
「本当は、後が怖いから、甘えたくはなかったんだけどね……」
 対する荒野は、いつもと同じように冷静な態度を崩せなかった。
「この手の鬼ごっこは、昔から得意だったろ?
 ヴィ、対価は払うから、あの三人を捕まえる事に協力してくれ。
 時間が……ないんだ……」
 六時限目が終わり、放課後になるまで、三十分ほどしか残されていなかった。
「いいのよー……対価、だなんて……」
 ヴィ、こと、シルヴィ・姉は、婉然と笑う。
「他ならぬ、コウの頼みだもん。
 それに……あの子たちも、なかなか面白そうな子たちじゃない……」
「……飼い慣らせるんなら、ヴィにくれてやってもいいぞ……」
 半ば本気で、荒野はそういった。
 もっとも、あの三人がシルヴィ・姉の手に負えるとは、まるで思っていなかったが……。
『……あいつら……』
 茅や楓よりも、よっぽど手強いからなぁ……ある意味……。

[つづき]
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