2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

髪長姫は最後に笑う。第五章(64)

第五章 「友と敵」(64)

 荒野との電話を切るのとほぼ同時に、シルヴィ・姉が網の塊を担いで保健室に入ってきた。
「……なんだ、それは……」
「例の三人の片割れ。とりあえず、ここに置かせてね」
 そういってシルヴィはベッドの上にその塊を置く。
「まだもう二人、残っているから……」
 といって、呆然としている三島百合香を残し、シルヴィは保健室から出ていった。
 ……数十秒後、はっとなにかに気づいたように、三島は机の上からハサミを手に取り、ベッドの周りのカーテンを閉める。
「……誰だかしらないけど、今、ほどいてやるからな……」
 そういいながら、網をハサミで切り始めた。
「……どおもぉ、センセー……」
 網を切り顔の部分が露わになると、中に入っていたテンは、脳天気な表情で三島百合香に挨拶をした。
「……お前ら、なぁ……」
 三島は、呆れながらも携帯で荒野を呼び出す。
「ああ。荒野か。
 一匹目、早速こっちに運ばれてきたぞ。
 こいつらにいいたいことあったら、直接いえ……」
 そういって、網の中から顔だけをだしたテンに、携帯を差し出した。

 テンが自発的に網にかかった後、当然のことながら、二人は別々の方向に逃げ出した。しかし、例のクスリが散布されているおそれのある屋上へは出ることはできなかったので、下に降りるしかない。シルヴィは風向きを考慮して、校庭があるほうとは反対側に二人を追い込んでいた。
 ぶら下がった窓枠から手を放せば、その下はすぐに学校の外周を囲んだ塀になる。
 その塀を、二人は反対方向に逃げ出した。
 楓は、躊躇せずガク一人の後を追う。
 それに気づいたノリが振り返り、楓の気を引こうと投擲武器を用意しはじめると……。
「……はぁーい……」
 足と手の部分に、なにかひも状のモノが絡みついていた。
 見ると、化繊を編んで作ったらしい、細い紐の両端に重りをつけたモノが、手と足に絡みついていた。
『……楓おねーちゃんに気を取られている隙に……』
 別の人間に、狙われていたらしい。
「……ごめんねー。
 ヴィ、アラゴトは苦手だけどぉ、背後からこっそり忍び寄るのは得意なのぉ……」
 金髪青眼の女性が、身動きをかなり制限されたノリの前に姿を現す。
『……うわぁー……ガイジンさんだー……』
 そう思いつつ、ノリは体のバネだけを使って跳び、その女性から距離を取ろうとする。手足の動きを制限されていても、その程度は、できた。
「……だめよー。オイタしちゃぁ……」
 空中に飛んだノリの体に、紐状のモノが巻き付いた。手足に絡んでいるモノとは違い、今度の紐状のモノは意志を持っているかのようにノリの体を締め付ける。
 みると、その一端を、金髪の女性がしっかりと握っていた。
「痛い思い、したくはないでしょ?
 別に取って食おうってわけじゃないしぃー……」
 体の動きをかなり制限されながらも、ノリはなんとか塀と校舎の間の、幅の狭い隙間に着地する。
 金髪の女性は、相変わらず手にした鞭でノリの体を縛めながら、塀の上からノリを見下ろしていた。
「……ただちょっと、コウがあなたたちにお話ししたいこと、あるっていうだけだからぁ……」
『……鞭使い……か……』
 ノリは、観念する。
 幸い、極端な害意はないようだし……体の自由が効かない今の状態で相手をするのは、分が悪すぎる……と、感じた。

「……センセ、二人目、お願い……」
 二人目のノリは、せいぜい、手足を拘束されている程度で、テンほどには厳重に梱包されてはいなかった。テンの時と同じく、シルヴィはノリの体をベッドに放り出すと、すぐに廊下に出て行く。
「……ノリは、あの人に捕まったの?」
 先に確保されたテンは、ようやく網を切り、身体の自由を取り戻したところだった。
「うん。楓おねーちゃんがガクのほうに向かっていったから、テンを援護しようとしたら、その隙に、これ、やられちゃった……」
 そういって、テンに自分の手首に巻き付いた紐を見せる。
「ノリ……油断したな……」
「だ、だってしょうがないじゃないか! 楓おねーちゃんにあんな仲間、いるとは思わなかったし……」
「……でも……ノリ……その人の気配、まったく気づかなかったんでしょ?」
「……うっ……うん……」
 二人は同時にため息をついてうなだれた。
 テンは、指折り数えはじめた。
「……かのうこうや、楓おねーちゃんや孫子おねーちゃん……」
 ノリも、それに続ける。
「……荒神のおじさん、さっきの金髪のおねーちゃん……のらさん……」
 ノリとテンは再度、顔を見合わせてため息をついた。
「……じっちゃんは、島を出たって、ボクたちに適うヤツ、そんなにいないっていってたけど……」
「……ボクらより、強いヤツなんて……ゴロゴロいるじゃん……」
「……で、でも!」
 ぱっと顔を上げて、ノリが明るい声でいった。
「……まだ、ガクがいるよ!
 昨日はガク、早めに眠っちゃったから、実力発揮できなかったけど……今日は最後まで残っている。ガク、ボクらの中では、一番強いんだから!」
「たしかに、ボクらの中では、ガクが一番強いけど……」
 しかし、テンはノリの言葉に同調せず、「……やれやれ」といった感じで、首を左右に振る。
「……ノリたちは……昨日の楓おねーちゃんの様子、見てないからなぁ……」
「……え?」
 ノリの表情が、ひきつった。
「……楓おねーちゃん、って……そんなに……」
 ノリのほうにしてみれば、昨日、直接対決した孫子の抜け目の無さ、のほうが、印象に強いのだが……。
「……強いし、それに、いざとなれば、容赦しない……」
 テンは、キッパリとノリに断言した。
 なにしろ、昨日……楓は、味方である筈の孫子ごと、ノリに大量の六角を投げつけたのだ。
 いくら、テンが挑発した結果、とはいえ……テン自身は、ノリとガクに同じ事ができるのか? ……と、いうと……。
 テンが簡単に昨日の顛末を説明すると、ノリの顔が覿面に青ざめる。
「……そ、そんなの!
 ……適うわけないじゃん!」
「……しかも、ガク……今、楓おねーちゃんとさっきの金髪の人、二人を相手にしているんだ……」
 叫びだしたノリに、テンは冷静に指摘する。
「……おーい……お前ら……」
 湯飲みを二つのせた盆を抱えた三島百合香が、二人に呼びかけた。
「……お前ら、勝手に学校に入ってきた部外者で、今は授業中なんだってこと、忘れるなよ……。
 もう少し静かにしろ……そっちの二人目は、今、紐を切ってやるから……」

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび


天然むすめは、素人にこだわる完全オリジナル素人サイト!
↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのじゅうよん]
Easy-Meana ブログの惑星アダルト KUKURISEARCH GAMERS NET CG-Pocket ギャハハランキング! M-navi ■アダルト総合サイトアダルト教室■ アダルト検索城 あんぐらサーチ

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ