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彼女はくノ一! 第五話 (24)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(24)

 三人の身柄を全て確保し追えた時、屋上にいた三人を追い込みはじめてから、十分もたっていなかった。
 シルヴィは楓の腕の中で気を失っているガクの体を受け取る。
 短時間とはいえ、あれだけ激しく動いた直後なのだ。楓の体に、疲労が残っていない筈はなかった。
 二人して、気配を絶って三島たちが居る保健室に戻る。
 シルヴィがガクを抱えているのを確認すると、ノリとテンが眼を見開いた。
 楓は、やはり疲れているのか、しゃべるのは専らシルヴィに任せている。
 シルヴィが先ほどの顛末を説明すると、ノリとテンは意味ありげに顔を見合わせて、こわごわと三島に治療を受けている楓の背中に視線を向けた。
『……この子たち……』
 自分たちより強力な者がいない狭い世界で育ってきた三人だけに……程度の差こそあれ、怖いもの知らず、なのだろう……と、シルヴィは予測する。そして、ここにきて、どうやら自分たちでは太刀打ちできそうもない存在……天敵になりうる存在に、出会った……。
 と、すれば……。
『……どんどん、厄介な存在になるわね……』
 シルヴィは、荒野が酷い勘違いをしている、と思っている。
 茅、ノリ、テン、ガク……こうした、先天的に突出した能力を持つ子供たちを、隔離した環境下に置いて育ててきたのは……彼らを守るため……ではなく、反対に、彼らが暴走した時、周囲に被害を与えることなく「排除」するため……なのではないだろうか……。
 彼らが一族全体にとって危険である理由は、大きく分けて二つ。
 まず、彼ら自身の個体として能力が、他の一族に比較しても強大なものになりうる可能性がある、ということ。
 もう一つは、そうした存在である彼らが、自らの能力を誇示しはじめたら……今まで秘匿していた一族の存在自体も……彼らに引きずられ、衆目に曝されることになる、ということ……。
 最初の可能性をあらかじめ潰しておくために、わざと、他の一族なら受けて当然の知識や教育を、彼らには受けさせなかったのではないのか……。
 茅は、体術全般に加え、一族特有の基本的な技が伝えられていない。
 別に育てられた三人は、一通り基本的な技は習得しているようだが、その技を効果的に生かすためのメソッドや思想を欠いている。
 どちらにせよ、彼らの教育方針に意図的な欠落があるのは確かであり……「何故、そのような欠落があるのか?」と考えた時……シルヴィには、たった一つの解答しか、思い浮かばない……。
『……強力すぎる存在に、しないため……』
 いざ、その存在を抹消しようという時……手こずることのないように、あえてウィーク・ポイントを設定した……。
 そう考えるのは……穿ちすぎだろうか?
『……でも……』
 彼らは……少なくともノリとテンは……今、「恐れ」を知った。
「恐れ」を知った、ということは……今まで以上に用事深くなった、ということっで……逆にいうと、どんなに突出した能力を持とうとも、警戒心を知らなければ、たいした脅威ではない、ともいえる……。
 小さな変化、ではあるが……ノリとテンは、「警戒すべき存在」を認知したことにより……一段と、容易ならざる存在へと変貌した、とも、いえる。
『……コウ……わかっている?』
 彼らは、まだ、子供だ……。
 子供は……こうして社会に出て、様々な人々や出来事に触れたはじめたことで……どんどん成長していく……。
 そして、十分に成長した彼らを、他の一族の者たちは、どのような眼で見始めるのか……。
『……あなた……長老から……。
 とんでもない時限爆弾を……預けられているのよ……』
 現在のところ、荒野は、まだ、自分たちの正体が町の人々に知られることしか、警戒していない……。
 しかし、それ以外に……茅やあの子たちと行動を共にすることで、自分の所属する一族全体と対立する可能性があることに……荒野は、気づいているのだろうか?
 そこまで考えたところで、シルヴィは、その構図に見覚えがあることに、気づいた。
『……これって……』
 突出した能力を持つマイノリティと、凡庸な能力しか持たないマジョリティ……という構図は、まさに……「一族」と「一般人」の関係ではないか……。
『違い、は……』
「一族」が自らの存在を「一般人」に対して秘匿しているのに対して……茅やこの子たちは……それこそ、生まれた時から「一族」の監視下にある、ということだ。
 かくいうシルヴィ自身、そうした監視網を構成する一員であるわけで……。
『……長老は……コウに、一体なにをさせたいのか……』
 考えているうちに、シルヴィは、どんどん訳が分からなくなってくる……。
 今の時点で、彼らを一カ所に集め、社会に順応させることで……一族が得ることができるメリットを……シルヴィは、思いつけなかった……。
 むしろ……あえて、彼らを成長させ、より手がつけられない存在に育てようとしむけている……ようにしか、思えない……。
『なにかを、させたい……のでは、なくて……』
 ……本気で、コウがこの先、どんな選択をするのか……見守っているだけなのではないか……。
 ふ、と……シルヴィは、そんなことを思った。
 そうした、突出した戦力になりうる人材を……荒野が、今後、どのように扱い……どのような関係を結ぶのか……。
 長老だけではなく、一族のうち、かなりの人間が、この土地での荒野たちの動向に、注目している……。

 で、荒野やその周囲の人間たちが実際にこの地でやっていることが……三島のいう「Japanese Lave Comedy!」とかいう他愛ない馬鹿騒ぎであるあたりが、かなりアレなんではあるが……。

 シルヴィがそんなことを考えている間に、三人は保健室から出て行き、楓はベッドに潜り込んで寝息をたてはじめている。
「お前さん、なんかいいたそうなツラしているな……」
 三島は、シルヴィに新しいお茶をいれてくれた。
 シルヴィは、三島に、今まで考えていたことを話し始める。三島は、事情は知っているが、一族内部の者ではない。
 そういう意味では、憶測でしかない内容を語る相手として、ちょうど良い距離に立つ人物だった。

[つづき]
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