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彼女はくノ一! 第五話 (28)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(28)

 その日、楓は茅と一緒に下校した。
 帰る方向が一緒なため、と考えると不自然ではないのだが、今までは茅が時間いっぱいまで図書室に籠もっていて、極力、茅と一緒に下校するようにしていた楓も、自分の部活がない時は、美術室の香也のところで時間を潰し、香也、樋口明日樹、茅、楓の四人で帰ることがほほとんどだったため、実は二人きりで、こんなに早い時間に帰る、ということは珍しい。

「……でも、どうしていきなり泳ぎなんて……」
 そんな帰り道で、楓は茅に尋ねる。
「体を鍛えたいの」
 茅の返答は簡潔だった。
「ええっと……ですから、どうして……」
「強くなるの」
 茅は「なんでそんな分かりきったことを聞くのか」とでもいいたげな、憮然とした顔をしていた……ように、思えた。
 茅の表情は、読みにくい。
 荒野などは、茅の機嫌の善し悪しが分かるようだが……その他の人間にしてみれば、茅の表情は限りなくポーカーフェイスに近い。
「荒野のお荷物にならないために、強くなるの」
 その言葉を聞いた楓は「え?」という表情になる。
「……荒野のために、強くなるの」
 茅が確認するようにいう。そして、楓の方に顔を向け、
「楓は……どうして、強くなったの? なろうとしたの?」
 と、逆に聞き返した。
「わ、わたしは……」
 そんなことを改めて正面から聞かれた経験のない楓は、狼狽える。
「その……そうするのが、当たり前だったから……」
 いい成績を収めないと、施設から追い出されたから……。
「茅は、違うの」
 茅は再び視線を前方に向けて、言葉を継ぐ。
「茅は……荒野の足を、引っ張りたくないの。
 そのために、強くなるの……」

 マンションの前で一度茅と別れ、楓は狩野家に入った。玄関に靴があったことで、あの三人が在宅していることを知る。真理と羽生は、留守にしているようだった。自分の部屋に入り外出の支度をしていると、
「楓おねーちゃん……」
 と声をかけながら、ガクが襖を小さく開けた。
「……どこか、行くの?」
「うん、ちょっと」
 着替え終わった楓は鏡を覗き込んで髪型をチェックしながら答える。
「茅様とかお友達とかと、お買い物に……」
「……ついていって、いい?」
「他の二人は?」
 茅は、はじめてガクのほうに顔を向けた。
「羽生さんの部屋が片付いたから……二人とも、そっちに籠もってる。
 テンはネット、ノリはマンガに夢中……」
 ……それで、今日は三人とも家にいたのか……と、楓は納得した。
 昨日、無事作業を終え、マンドゴドラのマスターに動画データを焼いたDVDを引き渡した。そして、部屋の中に縦横に走っていたLANケーブルも外し、荒野と茅に借りたノートパソコンも返したので、今日から、羽生の部屋はかなりすっきりと片付いてしまった。
「……ガクはそういうのに興味ないの?」
「……あんまり……」
 ガクはそういって、ゆっくりと首を横に振った。
 こころなしか、しょぼーんとしているように思えた。
『……いつも三人一緒に行動していると思ったけど……』
 それなりに、嗜好は異なるらしい。
 他の二人は、それぞれ夢中になるものがあったが、ガクにはなかった。そのため、所在なくて暇を持てあましていたらしい……。
「……じゃあ、おねーちゃんたちと一緒にお買い物に行こうか?
 茅様と一緒に、水着買いに行くんだけど……」
「……水着!」
 ガクが顔を上げ、表情を明るくした。
「水着! 着たことないんだよね! 島では、裸で泳いだから!」
 三人と「じっしゃん」とかいう人しかいない環境なら……特に必要なかったのだろう。
「ね! ノリとテンも誘ってきて、いい!」
「もう聞こえているよ、ガク……」
「……家の中で、そんなに大声出せば……」
 いつの間にか、ガクの後ろに、ノリとテンが来ていた。
「……いい……と、思うけど……」
 楓は、少し考えこんだ。
「あなた達も買うのなら……お金は、大丈夫なの?」
「うん。真理さんが、無駄遣いしなければ、これを使ってもいいって……」
 ノリが、クレジットカードを楓に見せた。
「水着って、別に無駄遣いじゃないよね?」
 そんなことを話しているうちに、
「……ただいま帰りました……」
 という才賀孫子の声が、玄関のほうから聞こえてきた。

「……そう、あなたたちも行くの……」
 孫子は制服のまま、楓の部屋の前で腕を組んだ。
「いいわ。茅には、わたくしから連絡しておきます。楓は、加納にお願い……」
 そういって、孫子は自分の携帯を取り出した。
「はい。わかりました……」
 と、孫子の言葉に従おうとして、楓は、はっとあることに気づいた。
「……あの……そうすると、ひょっとして才賀さんも……」
「いくわよ、もちろん。
 あなたがたのような問題児の集団をそのまま行かせるわけにはいかないでしょ。……」
「……問題児の集団……ですか……」
 自分もその中に含まれてている……という自覚は、どうもないらしい。
 この場に加納荒野がいたら「お前がそれいうか、お前が」と言ったのではないか……と、楓は思った。

 孫子が支度するのを待って、全員でぞろぞろと集合場所のバス停に向かう。
 バス停には、すでに茅と柏あんなが揃って楓たちを待っていた。

[つづき]
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