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彼女はくノ一! 第五話 (34)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(34)

 茅がまた早めに帰宅するというので、当然のように楓もお伴することになる。学校から二人で直帰して狩野家に入ると、徳川篤朗と徳川浅黄はすでに居間にいて、三人組と羽生譲と一緒に炬燵ででくつろいでいた。
 何故がテンと篤朗がオセロゲームの盤面を挟んで対峙しており、石を置いては凄い勢いでパタパタとそれまでに置かれた石をひっくり返している。
「あ」
 居間に入ってきた楓と茅の姿に最初に気づいたのは、ノリだった。
「おかえり、楓おねーちゃん。いらっしゃい、茅さん……」
「どう……したんですか?」
 まっすぐ帰ってきたのにもかかわらず篤朗が先についていたことにもそれなりに驚いたが、それよりも篤朗とテンがオセロ勝負をやっていることのほうが意外といえば意外だった。
「徳川篤朗」と「テン」、それに「オセロゲーム」……。
 なんというか、全然接点がなさそうな組み合わせに、楓には思えた。
「あー。楓ちゃん、おかえりー……」
 羽生譲も二人の勝負を観戦していた。それどころか、スケッチブックを広げ、なにやら文字を書き込んでいる。
「いやー……最初は、碁の勝負をやりたい、っていってたんだけど……。
 うちには盤も石もないし、代わりにこれ持ってきたら、二人で黙々と熱中し出しちゃって……。テンちゃん、こういうボードゲームそのものが初めてだってことだけど、オセロはルール単純だし、すぐ呑み込むだろう……っていってたら……。
 まごついてたのは、結局、最初の二、三回くらいかな? 後は、徳川君と互角……というよりも、勝率、後の方になるほど、テンちゃんのが上がってきている……。
 あ。また終わった」
「勝者、テンなのだ」
 篤朗は脇目もふらずに置いた石を回収にかかる。
「はい。これでテンちゃん、三十八勝。引き分けが五回、っと……」
 羽生譲はそういいながら、スケッチブックになにやら書き込む。
「……この二人……勝負のほうもともかく……石を置く速度が凄くて……。
 今では、一ゲームに一分かかっていないんじゃないのかな?
 さっきみたいに接戦でも、石を数えないで勝敗分かっちゃうみたいだし……」
 そういっている間にも、二人は交互に盤に間髪いれずに石を置いてはひっくり返している。新しいゲームも、盤面はあらかた埋め尽くされ、終盤に入っていた。
「勝敗なんてみていればわかるのだ」
「石を置きながら、ひっくり返しながら、一つ一つ数えているから、間違いようがないよ」
 篤朗とテンが、ほぼ同時にそういった。
「ええと……着替えてきます」
 楓はそういって、自分の部屋に向かった。
 茅は、自分の携帯をとりだして、心持ち弾んだ声で荒野に電話をかけ始めた。

 楓が制服から私服に着替えて帰ってくると、オセロゲームは終わり、全員で炬燵に当たって湯飲みを傾けていた。浅黄は、茅だけではなく、三人組にも人気で、チヤホヤされている。いや、チヤホヤされている、というよりも、三人も茅も、浅黄と同じレベルで遊んでいる……ように、楓には思えた。
「結局、どちらが勝ったんですか?」
「テンが五十勝したところでやめたのだ。経験を積めば積むほど強くなるのがわかったので、あれ以上やるのは無駄だのだ。テンは、まぎれもなく茅君の同類なのだ」
 篤朗は、「茅君の同類」という言葉を、やや強く発音している。
「さて、誰に聞けば素直に話してくれるのか……。
 君たちは……一体何者なのだ?」
 そういう篤朗に、楓はなにも言うことができなかった。
「何者、っていわれてもなぁ……」
 浅黄を中心にしてじゃれ合っていた輪から少し外れて、ガクが篤朗に問い返す。
「一言で何者だ、っていえるわけないじゃん。
 おじさんは、お前は何者だ、っていきなり言われたら、即答できるの?」
「このぼくは、まぎれもなく天才なのだ!」
 徳川篤朗は、白衣の中の薄い胸を反らして鼻息荒く即答した。
 ガクは、
「……聞いた相手が悪かった……」
 と小さくぼやいた後、
「じゃあ、茅ちゃんとテンは、その天才よりちょっと上の天才。
 そんで、いいんじゃないの?」
 と投げやりに答えた。
「別に異論があるわけではないのだが……」
 篤朗は納得しきれないのか、さらに質問を重ねる。
「茅君といい、そこのテン君といい……初めて目にするゲームを、あそこまで上手にやれる……というのは、こういう言い方もなんだが……明らかに、異常なのだ。
 ただ単に、ゲームが強い、というのなら、やり込んでいればなんとかなるのだが……初めてプレイするゲームが、滅茶苦茶強い、ということは……ルールを憶える記憶力と、それに、経験なしでもそれを補うシミュレートを頭の中で瞬時に行えるタイプの、特殊な頭の良さが必要なのであって……そうした特殊な知性の持ち主が、これほど近くに二人もいる、という偶然は……」
 偶然、と言い切ってしまうにしては……あまりにも、ご都合主義なのだ……。
 と、徳川篤朗は言い切った。

 しばらく、誰もなにも返答できなかった。

「……こう考えると、説明できると思うの」
 浅黄と向き合っていた茅が、顔だけを篤朗に向けていった。
「あるところに、ある目的のため、自分たちの能力を伸ばそうとした血族集団がいたの。
 ある集団は、足を早くすることを望み、別の集団は、力を強くすることを、さらに別の集団は、頭を良くすることを望み、それを至上の命題として自らを鍛え、鍛えた者同士で子孫を作り……何百年もかけて、血と能力を濃くしていったの……」
「……そのうちの、頭を良くすることを望んだ集団、というのが……茅君やテンなのかね?」
 篤朗の問いに、茅は首を振る。
「……正確には、その集団から遺伝子を抜き出して作られた、スピンアウト的な改良品……」
「人権無視も甚だしいし、いかにも嘘くさい話しではあるが……それなりに、辻褄はあうな……」
 徳川篤朗は、うっすらと、笑った。
「……なにより、実物が、目の前に二人もいることではあるし……。
 で、足の速いのと、力が強いのは……この中の、誰になるのだ?」
 篤朗があたりを見回してそういうと、ノリとテンは顔を見合わせた。

[つづき]
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