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髪長姫は最後に笑う。第五章(76)

第五章 「友と敵」(76)

 羽生譲から借りてきたDVDを「とっとろ、とっとろー」というメインテーマの合唱付きでめでたく観終わると、徳川浅黄は欠伸をしだした。いい具合に、眠たくなったようだ。
 荒野は全員に風呂に入るように命じ(この時、荒野と三人の間に「覗くなよ!」「覗くか!」という心温まる会話が発生した)、荒野以外の全員が入浴している間に、来客者たちの人数分、新しい歯ブラシを用意する。
 それから、物置にしている部屋のベッドからマットレスを引っぺがしてきてリビングの床に直接置き、普段使っているベッドからも同じようにマットレスを引っぺがしてきて隣に置く。その上に敷き布団を置き、シーツをかけ、その上に毛布と掛け布団を置く。
 人数は多いけど、荒野自身と茅以外は、子供子供した体格だし、これでなんとかなるだろう……と、思った。つまり、寝具が足りないので、この状態で雑魚寝である。
 他の連中が長風呂から出てくると、入れ替わりに荒野が下着とパジャマを持って風呂場に入り、ざっとシャワーを浴びる。

 翌朝、目覚ましもセットしていないのにも、茅は、いつもの時間にぞもぞと起きだした。茅の動きに反応した三人が、次々に目を醒まし、身じろぎしたのを、荒野は感知する。荒野は頭だけを起こし、左手の人差し指を口の前に立て、熟睡している浅黄を指さす。灯りはついていないが、三人とも夜目が効くのか、小さく頷くのが分かった。一足先に布団から抜け出した茅は、足音を立てないようにして、着替えの置いてある隣に部屋に姿を消す。三人も、そろそろと布団から抜け出した。
 茅はすぐにスポーツウェアに着替えてリビングに帰ってきて、そのまま外に出ようとする。三人とパジャマ姿の荒野もそれにつづく。
 玄関のところで茅と三人が靴を履いて出て行くのを確認すると、荒野はドアノブを押さえながら、そっと閉めようとした。
 廊下に出た三人が、荒野に向かって「来ないのか?」というジェスチャーをしたが、浅黄が寝ている布団のほうを指さすと、こくこくと頷きはじめた。
 寝ている浅黄一人を残して、全員が外出するわけにはいかないのである。
 そんなわけで荒野は、茅と三人が帰ってくるまで、寝たままの浅黄と二人きりで、横になって過ごした。

 出て行ったのは夜明け前だが、帰ってきたのはあたりが明るくなってしばらくしてからだった。出て行ったのは四人だったが、帰ってきたのは茅一人だった。
 汗だくになって帰ってきた茅は、汗に濡れた下着とスポーツウェアを脱いで洗濯機に放り込み、全裸になって浴室に入る。
 茅がシャワーを浴びているうちに、浅黄ももぞもぞと目を醒ましはじめたので、荒野は布団を出て着替え、茅の着替えを脱衣所に置き、朝食の準備をはじめることにした。
 昨夜のカレーはまだ多少、鍋の底に残っていたが、二食続けてカレーというのもなんなので、常備している材料で作れるもの……を、頭の中でリストアップし、その中から、フレンチトーストをチョイスして作ることにする。
 朝食の準備をしているうちに浅黄が本格的に起きだしたので、椅子に座らせて暖めた牛乳をいれたマグカップを渡し、テレビをつける。テレビでは、ニュースなのかバラエティなのかよく分からない半端な番組ばかりで、浅黄はつまらなそうな顔をしてリモコンを手に、頻繁にチャンネルを変えていた。
 茅が風呂から出てきて、ちょうど朝食の準備も整ったので、三人で「いただきます」と唱和して朝食になる。茅と浅黄はどうでもいいようなことをにこやかに話しながら(と、いっても、主として話したのは浅黄で、茅はそれに相槌をうっていただけだが)、荒野は黙々とフレンチトーストとサラダにカフェオレ、という食事を摂った。
 食後、茅が浅黄と一緒に歯を磨かせている間に食器を片付ける。その後、二人と入れ替わるようにして洗面台に向かい、歯を磨き顔を洗う。
 リビングに戻ると、そろそろ週末の朝恒例のお子様番組の時間に突入していて、茅と浅黄はテレビに釘付けになっている。
 荒野は時計を確認し、
「……あと三十分くらいで、家をでるんだろ? そろそろ、用意しなくていいのか?」
 と、二人に声をかけた。
 浅黄は知らないが、茅は毎朝、外出前の身支度に、二十分以上かける。
 茅は頷いて、「浅黄、お願い」といった。
 浅黄はテレビから視線を離さないまま、とことこと茅の背後に回り、茅の髪を指で軽く梳いてから、三つ編みに編み始める。
「今日は、編むのか?」
 荒野が怪訝そうな顔をして尋ねる。
「プール、帽子かぶらないと、入れないって言われたから……」
「帽子……スイムキャップのことか?」
 言われてみれば、公共の施設なら、衛生上の理由がどうのこうのと、規則がうるさいのかも知れない。
 浅黄が茅の髪を編み上げる前に、ドアホンのチャイムが鳴った。
 あの三人が迎えに来たのかな? と思って開けると、飯島舞花と栗田精一が立っていた。
「……なんだ、お前ら……朝っぱらから……」
「いきなりなんだ、はないだろ、お兄さん……」
 何故か、飯島舞花の機嫌は良さそうだった。
「みんなでプールに行く、っていうから、こうして集まってきたんじゃないか……」
「ちょっと待て! プールはいいけど……
 みんなで……だって?」
「ちゃんと、荒野の分の水着も用意しているの」
「……聞いてないぞ! 茅!」
「お。おはよー、茅ちゃん、浅黄ちゃん。
 ちゃんと髪まとめて用意しているねー……って、お兄さん、わたしら、いれてくれないの?」
「お。おお……。
 お茶かコーヒーくらいしかないけど……」
「それでいいよ。セイッチとちゃんとご飯くってきたから……」
 どうやら、週末であるのをいいことに、栗田精一は飯島舞花の家に泊まっていったらしい。
『同じ泊まりでも……こっちのお子様合宿とは、えらい違いだな……』
 と、荒野は思った。
 新しいお客は二人とも「コーヒーでいい」といってくれたので、荒野は自分の分もいれて、三人分のコーヒーをペーパーフィルタでいれる。
「……で……」
 ケトルでお湯を落としながら、荒野は舞花にいった。
「さっき、みんな……って、いってたな?
 あと何人くるんだ?」
「うーん……全部で、何人になるんだろ?
 お隣の人たちは、真理さんと二宮先生を除いてだいたい来るみたいだけど……。
 羽生さん、真理さんからワゴン車借りてくれるっていうし……」

[つづき]
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