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彼女はくノ一! 第五話 (37)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(37)

 朝食が終わり、皆でお茶を飲んでくつろいでいると、誰からともなく「今日、プールに行く」という話しがでてくる。
「茅様が、泳ぎを憶えたいそうで、そのお付き合いでわたしも……」
 と楓が言えば、三人組も、
「プールで泳ぐの初めて!」
 と、はしゃぎはじめる。
 なにも言わないが、孫子も同行することに決定しているのか、妙に表情が柔らかい。もっとも、表面に出さないように努めてはいるようだが、実は、内心はかなり嬉しそう……というのは楓も同様で、時折、なにやら思い出したように、にやら、と頬が緩む。
「ほー……そんで、どこ行くの?」
 羽生譲が興味本位でそう聞いた。
 真冬の今、みんなで遊びに行けるような遊泳用プールは、県外のかなり遠くに行かなければない筈だったが……。
「市民プール、とか言っていましたけど……」
 楓の答えを聞いて、羽生譲は反射的に、
『……あんなセコいところ……』
 と思ってしまい、次の瞬間、そう思ってしまった自分を少し恥ずかしく思った。
 遊びに行く、というよりは……茅が泳ぎを習う、ということが第一義であり、後の人たちはあくまで便乗しているだけなのだろう。
「ええっ、とぉ……」
 羽生譲は、視線を上に反らせて、質問を続けた。
「誰が……あと、何人くらい、行くのかな?」
「はっきりしているのは、茅様、柏さん、わたし、この三人……」
 楓は、指折り数えながら答える。綿密な打ち合わせをしているわけでもなく、楓にしても、はっきりとした人数は把握していなかった。
「……それに、わたくしも、同行いたしますわ……」
 才賀孫子も、湯飲みを傾けつつ、そう答える。
「……それに、香也様……」
 楓がそう続けたので、香也は飲みかけていたお茶を吹き出しそうになった。
「……どうしたんですか?」
 楓が、怪訝そうな表情を浮かべ、香也に顔を向ける。
「……んー……」
 と、香也は例によってひとしきり唸ってから、
「……ぼく、その話し、今はじめて聞いたんだけど……」
 と答えた。
 三人組が「えー!」と声を揃えた後、「おにーちゃん、行かないのぅ……」といかにも残念そうな口調でいう。
 楓は、「あっ」という表情を浮かべてから、香也ににじり寄り、香也の腕を取って、自分の胸を押しつけるようにして、抱きかかえた。
「そういえば、そうですね……でも、今、言いました。
 香也様……みんなで一緒に、泳ぎに行きましょうよぉ……」
 と、香也の耳元に息を吹きかけるようにして、囁いた。
 香也が、むず痒いようなそれでは済まないような感覚を背筋に感じてぶるっと体を震わせると、
「……ねぇ……ここまで来て、断る……なんてことは、ないですわよね……」
 負けじと、孫子も楓の反対側の腕を取り、自分の体を香也に擦りつけながら、囁く。
 三人組も立ち上がって香也のほうに殺到してくる体勢に入ったので、香也はあわててブンブンとかぶりを縦に振った。朝っぱらから真理や羽生の目の前で組みつほぐれつのバトルロワイヤルを演じるよりは、大人しく一緒にプールに行く方がまだしも平和だ。それに、どのみち今日の午後は庭でバーベキューをやる予定だったので、半日は潰れる予定なのだったのだ。それを考えれば、一日まるごとつき合うのも、そう悪くない選択であるように思えた。
 そんな香也たちの様子を面白そうに見ていた羽生譲は、「プールまで意外に遠いし、人数多そうだから……」といって、その場で真理と相談し、ワゴン車を出してくれる、と申し出てくれた。

 家の前で加納兄弟や樋口兄弟、飯島舞花と栗田精一と一端合流し、少し話してから狩野家の人々と加納兄弟はワゴン車で、舞花と栗田は自転車で、樋口兄弟は狩野家に残って午後の準備を手伝ってくれることになった。
 樋口明日樹は少し寂しそうな様子だったが、香也が声をかけたときには、
「すぐに三島先生や玉木たちも来るっていうし……」
 といって微笑んで見せた。
 その三島先生は、なんでも材料を安く揃えるあてがあるとかで、朝から車で外出している、という話しだった。

 プールの駐車場に着いてワゴン車を停めると、途端に三人組と浅黄が元気よく飛び出していく。少し遅れて年長者たちが後を追い、男女に分かれて更衣室に入った。
 着替えてプールサイドに出ると、すでに女性陣は全員着替え終わっていて、いつものように舞花と荒野が立ち話をはじめる。三人組は「プールって、変な臭いがする!」、「海に比べると、全然狭い!」とかなんとか、わいわいしゃべりながら香也の周りに集まってくる。全員、ここの規則に従ってスイムキャップをかぶり、首や額にゴーグルをかけていた。そうしてスイムキャップに髪をまとめて、水着姿でいると、三人のボディラインが否が応でも強調されているようで、こうして近くに寄られてみると、香也はこの子たちと初めての会った日、一緒に風呂に入った時のことなども連想してしまい、少しドキドキしてくる。
 すぐに三人にならって楓や孫子も近寄ってきて、初めて彼女たちの水着姿を目の当たりにした香也は、いよいよドキドキしてくる。楓は、背はあまり高くはないものの、水着を着ていると、普段は隠れがちなぼん、きゅ、ぼん、な体型であることがはっきりと分かってしまい、孫子は孫子で、一応黒のワンピースではあるものの、キュッとキツイ角度のいわゆるハイレグというヤツで、足の長さを強調していた。
『……ここにいる全員の……』
 全裸姿を拝んだことがあり、なおかつ、裸同士ですり寄られた経験がある香也は、そうした過去を連想しないように気を静めるのに、大変な努力が必要だった。香也自身も水着である、ということは、反応してしまえば、即座にその事実が周知のものになってしまう、ということで……そういう情けない状態だけは、回避したかった。
 この場で勃起などしようものなら……例えば、この三人組の性格などを考慮すれば、香也のその部分を指をさしながら「あー! おにいちゃん、大きくなってるー!」などと無邪気に大声で叫んでも不思議ではない。
 そんな事態は、断じて避けたかった。
 自宅から直接こっちに向かった柏あんなや堺雅史も、準備運動のラジオ体操が流れる前にプールサイドに出てきた。
 柏あんなは部活で着用しているのと同じ競泳用の水着、堺雅史は香也と同じ、なんの変哲もない、体育の授業で使用している、学校指定の水着だった。
「……しかし、まあ……こうしてみてみると……」
 羽生譲が勢揃いした面子をゆっくり見渡して、わざとらしく感嘆してみせた。
「……よくもまあ、臆面もなく……タイプの違う美少女ばかりが集まったもんだ……」
 それから、「よ! 果報者!」といいながら、平手で香也の背中を叩く。
 パシィン! という小気味良い音がした。
 香也が痛がって自分の背中をさすろうとしていると、
「……プール……水着……やっぱり、ポロリが……」
「……ありません!」
 楓、孫子、舞花、あんなの四人が、一斉に声を合わせてツッコミをいれた。

[つづき]
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