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彼女はくノ一! 第五話 (42)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(42)

 テンは適当に食べ物を口にいれながら、あちこちから聞こえる人々の会話に聞き耳を立てている。
 カクテルパーティ効果、というものがある。
 複数の会話が同時進行している雑然としたパーティ会場などで、自分が興味をもっている話題のみがはっきりと聞こえる、というものだ。テンは「人間」そのものに興味があり、これだけ多種多様な関係が混在し、なおかつ、それぞれの「人間」の背景について予備知識をもっている、という状況は、これが初めてだった。加えて、テンには、見たもの、聞いたものをすべて記憶している、という卓越した記憶力の外に、常人の域を遥かに越えた鋭敏な聴力、同時進行する複数の会話を聞き分ける、説話の中の聖徳太子のような能力ももっている。
 一番最後の能力については、人口が極端に少なかった島ではよく確認できず、本土に渡ってきてから気づいた……と、いうより、他の、普通の人にはできないようだ……ということに、気づいた。
 この発見については、まだ、ノリやガクにも話していない。
 それよりも、今は、他の人の観察、だった。
 ここには、実に多種多様な「人間」がいる。
「つきあっている」という舞花と栗田、あんなと堺は、どうやら、昨夜の性行の回数を競っていたらしい。
 テンはそもそも今まで適齢の異性がいない環境で育ったので、もちろん、テンには性体験はない。今の家には香也という適例の男性がいる。好奇心の強いテンとしては、その適当な相手である香也にお願いして早く実地に体験してみたいところなのだが、在宅時の香也には大抵楓や孫子がへばりついているので、なかなか試す機会を得られないでいる。
 テンには一般人のいう「つきあう」という感覚、いわゆる、「恋愛」が、まだ理解できていない。ノリもガクも、そのあたりの理解度は、テンとあまり変わらないだろう。なにせ、ついこの間まで、自分たちとじっちゃんしかいない島にいなかったのだ。
 飯島舞花と栗田精一、それに、柏あんなと堺雅史の二組のカップルは、テンたちとさほど変わらない年齢(書類上では、一歳しか違わないことになっている。もっとも、テンたちは誰も自分たちの正確な年齢や生年月日を知らされてはいないのだが)であるのにも関わらず、周囲に大人たちがいる環境下で、自分たちの性交回数をあけすけに語っている……ということは、実際には、テンたちが教えられたほど、性的な情報は秘匿されているわけではない……と、いうことを意味するのだろうか? それとも、彼らとここにいる大人たちが、特別その手のことに寛容である、ということなのだろうか……。
 テンは、考える。
 データが、少なすぎる、と。
 テンは、まだ、「人間」について、あまりにも少数の例しか、知らない。その段階で一般論を推測しようとするのは、早計に過ぎるというものだ。
 春から通うという「学校」……には、数百人からの人間が、長時間、一カ所に集まる。いいデータ採取場になるだろう。だが、今は……。
 テンは、「みんな」のほうを振り返る。
 羽生譲の長身と三島百合香の短身が、なにやら意味が取りづらい奇妙な歌を歌いながら、そのメロディに合わせて激しく体を全体を使うようにして振り動かしている。
 三島百合香に誘われて、楓と孫子、それに茅までもが、その歌舞に加わった。真面目に意味を取ろうとしている聞いていると頭が痛くなるようなシュールな歌詞に合わせて五人の女性が激しく手足を揺り動かす様子は、統御されたヒステリー発作を目の当たりにしているかのような、一種異様な迫力があった。
 その様子を、有働勇作がビデオカメラに収めている。
 徳川浅黄も、彼女らの派手なパフォーマンスをみて、手を叩きながらはしゃいでいる。
 飯島舞花と柏あんなも三島に手招きされたが、首を振ってその場にとどまり、専ら見る側に回っている。
 香也は樋口明日樹からスケッチブックを受け取り、なにやら描きはじめた。例によって、「滅多に見られない光景」だから、簡単なスケッチを残しているのだろう。

 テンとガク、そしてノリは、お互いの表情を確認する。
 三人の顔は、抑えきれない好奇心に輝いていた。
 三人の表情は、
『やってみよう!』
 と言っているようなものだった。
 三人は、歌と踊りの輪に加わり、見よう見まねで歌い、踊りはじめた。

 そんな感じで、盛況のうちに用意した料理もあらかたなくなり、日も傾いて気温が下がりはじめたので、三人組の歓迎パーティも兼ねた庭でのバーベキュー・パーティは幕を閉じた。
 みんなで片付けをした後、居間の炬燵で寛いでいると、茅と荒野がマンションから茶器一式を用意してきて、残っている皆に紅茶を用意してくれる。茅はいつものようにメイド服で、いつもにも増して張り切っているように見えた。
 飯島舞花と栗田精一、柏あんなと堺雅史の二組のカップルは「楽しかったけど、疲れたから……」といって、帰って行った。結局、三人組少し遅れて歌と踊りの輪に入ってきた徳川浅黄は、疲れが出たのか、炬燵に入るとまた眠りはじめた。浅黄の様子を確認した荒野が、徳川篤朗の所に電話をかけて、浅黄をもう一泊させたほうがいいのではないのか、と、提案している。
 それ以外の者たちは、湯気をたてるティーカップを前にして、高揚の後の虚脱感にひたる時間を過ごしていた。
「おい、有働……」
 眠そうな目をした三島が、有働勇作に声をかける。
「いい加減、その騒がしいの、たたき起こせ……」
 三島百合香は自分のことを棚に上げ、未だに眠り続けていた玉木珠美を「その騒がしいの」呼ばわりする。
 どうやら、玉木の世話は有働がするもの、と、決めつけているらしい。
 有働は逆らいもせず、毛布にくるまって眠り続ける玉木珠美を揺すり起こした。
 玉木は、目を醒ましてしばらくの間はぼーっとしていたが、有働の顔を三分間ほど見続けた後、あたりを見渡してようやく頭がはっきりとしてきたらしく、
「宴会は! 肉は!」
 と有働の襟首を掴んでガクガクと揺さぶった。
「もう、終わりましたよ……」
 こうした扱いも慣れたものなのか、有働は特に動揺した様子もなく、柱時計を指さして玉木に答えた。すでに、夕方、といえる時刻になっている。
「あ。あ。あ……」
 玉木は、呻き、その後、叫んだ。
「わたしの肉を返せー!」
「……起きる早々騒がしいな、お前は……」
 三島はそういうなり、先ほど有働勇作が使っていたビデオカメラをケーブルで居間のテレビに繋ぐ。
「ん、じゃあ……せめても、宴の様子を見せてしんぜよう……。
 ……ぽちっとな、っと……」
 テレビに、有働に向かって「あーん」をして肉をねだっている玉木の顔が大写しになる。
 玉木は「うぎゃー!」と悲鳴を上げて、テレビに取り付いて自分の体で画面を隠した。

[つづき]
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