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第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(45)
一時を少し過ぎた頃、楓が昼食ができた、と、呼びに来たので、荒野はそれまでに仕上げたキャラクター案のラフ画を楓に手渡し、
「これ、今日の分。後で、アップしておいて……」
と告げる。これだけでも、意味が通じた。
楓は、今だにコンピュータに向かうことに苦手意識を持っている香也が、書き上がった絵のアップロードや他の制作者たちの意見をまとめてプリントアウトし、香也に渡す、などのゲーム製作にかかわる際のアシスタント的な役割を請け負っている。
居間には三人組も孫子の姿も、朝からバイト出ている羽生譲の姿も見えず、楓と真理と香也の分だけの食事が炬燵の上に用意されていた。親子丼にお吸い物、だった。お吸い物は、どうやら袋入りインスタントのようだったが、休日の昼食が簡単なものになりがちなのは今にはじまったことではないし、香也も特に味に拘るタイプでもないので、いつものように「いただきます」と唱和してから黙々と箸を動かす。
「……どう? こーちゃん? これ?」
真理が、なにやら子細ありげな表情をつくって香也に尋ねた。
これ、といって、盛っていたどんぶりを軽くあげているところをみると、どうやら、親子どんぶりの味について聞きたいらしい。
「……んー……」
香也は、例によってもごもごと口ごもってから、
「どうって……普通に、おいしいと思うけど……」
そういってから香也は、
『そういや、真理さん……どんぶり物は滅多に作らないよな……』
と思い当たった。
案の定、楓の顔が、ぱぁーっと明るくなった。隣に座っていた真理が、楓の脇を肘で軽くつついている。
「……これって、ひょうっとして……」
香也が、真理と楓の顔を交互に見ながら質問する。
「そう。今日は、楓ちゃんが、一人で作ったの……」
香也が楓のほうをみると、楓は、恥ずかしそうな顔をして目を伏せた。
香也は、「……なんか……昔のホームドラマみたいな……」と思った。
「……でね、ノリちゃんに順也さんの作品のコピーとか写真見せたら、なんか興味持っちゃってね……」
朝食の席では、もっぱら真理がしゃべっていた。香也はもともと口数の多いほうではないし、楓も人の発言を遮ってまでしゃべりたいことがあるわけではない。真理は、ノリが順也の仕事に感心を持ってくれたのが、純粋に嬉しかったらしい。
「……ノリちゃん、力持ちだし、学校がはじまるまで特にやることもないようだから……」
ひょっとすると、真理の個展巡業に、ノリを連れて行くことになるかも知れない、と、真理はいった。ノリは乗り気だが、まだ、三人組の他の二人、ガクとテンの意志を確認していないため、どうなるかは分からないが……二人が、ノリと二週間ほど離ればなれになることを承知すれば……真理は、ノリをつれて、この家を長期間空けることになる。
そう聞いても、香也は特に感銘を受けなかった。
あの三人はどうやら……本当に、小さな頃から一緒にいたようだが……それでも、いつかは離ればなれになる時が来るわけで……。
他の二人が承知すれば、ノリにとっては別の土地を知るいい機会になるのではないか……と、香也は思う。
そう思う香也にしてから、この近所と学校くらいいしか、よく知らないのだが。
香也たちが昼食を食べている頃、孫子は駅近くにあるマンションの一室にいた。
十五階建て、セキュリティ完備、その代わり、賃料もこの辺の相場の五割増し……という、土地柄に似つかわしくないコンセプトのマンションで、建造当初から近所の噂話では「どういう職業の人が、あんなマンションに入居するんだろう……」と囁かれていた。
その噂通り、実際に建物が出来てみても、入居者は半分も埋まらず、設備や普請が平均よりも立派な物だけに、閑散とした様子がかえってどうしようもない空虚さと荒廃とを感じさせる……という次第になった。
まだ新築であり、日曜だというに、「家族向け物件」をうたったそのマンションは、深閑として人の気配を感じさせない。
「んんっ……ふぁっ……はぁ。はぁ。はぁ……」
そんな、周囲のいかにも田舎じみた雰囲気に馴染まない真新しさを誇示するマンションの一室で、孫子は、油断すると喉の奥から漏れそうになる甘い吐息を堪え、息を整える。
なかなか、落ちない。
と、孫子の性感帯を医師に似た冷徹さで嬲り続けるシルヴィは、思う。
孫子に、自分の持っている技能を教えようと思いついたのは、シルヴィ・姉のほうだった。孫子は、素質……というより、それまでの経歴で伸張させてきた肉体的な能力に加え、なにより、モチベーションが高かったのので……通常なら習得に何年もかかるような技能も、通週間でおぼろげに初歩をマスターして、シルヴィを驚かせた。
六主家共通の基本技の原理は、一通り教えた。後は……いかに使いこなすか、という応用の問題で、こればかりは経験と個人差が物を言う。一石一長に教えられるものではない。事実、孫子は、「気配絶ち」をある程度見切ることはできるようになったが、自分では「気配絶ち」を使うことができない。
ある程度理論を理解している、ということと、自分で実戦してみせる、ということは、また別で……その「見切り」、にしても、例えばあの荒神の神業に近い(なんといっても、「声はすれども姿は見せず」を、同じ術者に対して平然と行ってしまうレベルなのだ!)「気配絶ち」には、通用しないだろう。
だから、後は、そうした基本的な知識をいかに効果的に使用するか、という応用……の、問題に、なってくる。
そう。
本当の問題は、そこから先、なのである。
六主家の基本技……以上の事、となると、後は、「六主家独自の技」に、なるわけだが……シルヴィの所属する「女系の姉」の技は、多く、性にまつわるものになる。
他に、本草学から錬金術までの知識体系を総動員した各種薬物の製造と使用……なども、「姉特有の技」なのだが、こちらの方はおいそれと部外者に教えられる性質のものではないし、仮に、そうした禁忌がなくとも、概要を伝えるだけでも何年もの月日を要する。
だから……当面、すぐに孫子の役に立ちそうな「技」となると、必然的に「性」に関わるものになり……聞けば、孫子は、まともな男性経験すら、ないという……。
シルヴィは、無理強いしてはいない。むしろ、「これ以上は……」する必要はないのではないか、と、孫子向かって忠告したくらいだ。
しかし、孫子は、シルヴィの制止に、首を縦には振らなかった。
だから、今、孫子は……シルヴィの閑散とした、生活感のない住居で、白昼だというのに全裸になって、頑丈な縄で四肢を拘束され……シルヴィに、体中の性感帯を刺激されながら、身内から湧きだしてくる快楽に耐えていた。
そうされながらも孫子は、屈辱にも折れず、快楽にも溺れず……気丈さを、保っている。
『……強い子だ……』
と、シルヴィ・姉は、思う。
しかし、この強さ故に……この子は、この先、かえって苦難を背負うのではないのか……。
そんな思いが、シルヴィの脳裏をかすめた。
そんな感慨を抱きながらも、シルヴィは、孫子から快楽を引きだそうと、冷静に手を動かし続けた。
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つづき]
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