第五章 「友と敵」(99)
シャワーを浴びて泡を流し、お互いの体をまさぐり合いながら湯船に浸かった後、茅と荒野の二人は体を拭いてベッドのある部屋に移った。
そこで、大きなままの荒野自身に避妊具をかぶせて、抱き合い、長々と口唇を重ねる。
常人よりも鋭敏な感覚を持つ茅にとって、荒野との交合は、甘美にすぎる誘惑だった。だから、普段は極力自制するようにしているのだが、時折、その自制が効かなくなる。
みんなと一緒になって騒いでいる時は、いい。一時であれ、自分の特殊性を、意識から追い払うことができる。
しかし、そうして騒いでいる時間が賑やかであればあるほど、一人きりに、あるいは、荒野と二人きりになって、しんと静まり返った空間に身を置いた時……反動が、くる。
いつの間にかそばにいることが当たり前になった少年……荒野の肌に触れて、その存在を確かめたくなる。
荒野と素肌を合わせると、それだけで、茅は静電気に触れた時のような錯覚を感じてしまう。
顔を押し付けて、荒野の体臭を肺腑の奥まで吸い込むと、茅は、ものすごくゆったりとした気分になれる。荒野の匂いは、少し仁明の体臭に似ているが、ほんの少し、違う。茅が挑発して興奮して来ると、体臭の違いはさらに大きくなる。
茅は、荒野の身体の隅々までをまさぐり、その触覚や反応を覚えようとする。
指で、舌で……その他の部位で、荒野の体を探るのだが……そのような時は同時に、荒野のほうも茅の体に触れているので、より感じやすい茅のほうが、先に我を忘れて荒野にしがみついてしまう。
嗚咽をあげ、荒野にしがみつきながら、茅は、荒野の愛撫を、必死になって受け止めようとする。
荒野が触れる箇所すべてが、茅に熱を持たせる。
『……なんで……』
荒野が触れる場所は、ことごとく気持ち良くなっていくのだろう……。
快楽に身を任せながら、茅は、そんな疑問を持ってしまう。
自制しなければ……何度でも、いつまでも求めてしまいそうになって……そんな自分が、茅は怖かった。
「……はぁっ! ……んんっ! ……あっ!」
荒野が茅の腰を抱くようにして、ゆっくりと茅の中に侵入して来る。
侵入してきたものの硬さ、だけではなく、茅は、皮膚や耳で荒野の体温の上昇と血流が早くなったことを感知し、「荒野も……感じてくれている」ということを確信し、自分が荒野を悦ばせている、という事実が、さらに茅を高揚させる。
一度茅の中に深く侵入した荒野は、技巧も何もない、本能に任せた乱雑な動作で腰を動かし、茅の内を蹂躙する。
荒野に突かれるたびに、茅は白い体を踊らせ、
「……あっ! ふぁっ! ひゃ! ……」
とかいう鼻声を出してしまう。
暴れる茅を逃さないように、荒野は茅の両脚をがっしりと押さえ込み、さらに激しく動く。
荒野は荒野で、茅の肉に割り込み、穿つ感触を楽しんでいる。
茅のそこに自分を刻印するような激しさで荒野は動き、茅は、内部をかき回される感触に急速に昇り詰める。
背を弓なりに反らせ、硬直して「……きゅぅ……」と喉から息を吐く。
硬直した茅の乳首に荒野が甘噛みして歯を立てると、茅は、硬直したまま、ビクンビクンと痙攣したように体を震わせた。
荒野と結合したまま、茅の体から力が抜ける。
しばらくして、荒野が茅の体から離れようとすると、
「……まだ……駄目……荒野が、いってない……」
ゆるゆると起き上がってきた茅が、荒野に両手両足でしがみついてきた。
確かに、いまだ茅の中に刺さったままの荒野は、硬さを失わずにいたわけだが……。
「……今度は……茅が、荒野を……」
荒野に手足を絡み付けたまま、茅は重心を変えて、荒野の上に覆いかぶさる。
ばさり、と、長い髪が茅の顔の前に、帳のように落ちる。その、ほつれた髪の向こうに見える茅の眼光は鋭くて、普段とは違うあやしい光をたたえていた。
完全に荒野の上にまたがると、茅は「んん!」といううめき声を出した。
上になるといつもより深く入る分、茅が受ける刺激も大きくなる……ということに、茅は気づいた。
しかし……。
「……荒野を……」
気持ち良くする……と、決めていた茅は、荒野の肩に手をついて、自分から、腰を上下に振りはじめる。
臀部を上下に振ると、結合部から、ず、ず、ず、と茅の中で荒野が摩擦している感覚が伝わってきてくる。その感覚は、重力が加わるためか、持ち上げる時よりも降ろす方がずっと大きくて、おかげで茅は、すっかり腰を下しきった時、荒野の先端がいつもよりも奥のほうまで到達する感触に、病み付きになってしまう。
当初の「荒野のため」という目的を半ば忘れ、無我夢中になって自分の体を上下に振りはじめる。
自分の体重を足の力だけで上下させる、という、いわば疑似ヒンズースクワットとでもいうべき動作だった。少し前の茅ならすぐに体力ぎれになった所を、今では、毎朝のランニングが幸いして、いくらかは長く続けられるようになっている。加えて、今の茅は、性交時の多幸感に包まれている。
荒野は、下から、陶酔した表情で自分の上で動き続ける茅の顔を、見つめていた。
『……女の……顔……だ……』
経験豊富ではない荒野にしていても、今の茅の表情が、貪婪に自分で快楽をむさぼっている時の表情だ、ということは、分かる。
荒野自身、今は比較的冷静だが、茅を組み敷いて貪っている最中は、同じような表情をしているのだろう、とも、予測できる。
だから、そうして荒野を楽しんでいる茅を、卑しいとは、まったく思えない。
だが……。
『……少しづつ、変わって行く……』
とは、思ってしまう。
最初、ここに暮らしはじめた時、荒野は、実質的な、茅の保護者だった。その当時、茅は、何も知らないしできない、無垢な状態にあったが……わずか、あれから三カ月ほどで……様々なことを学習し、今では女の顔をみせて、荒野の上で快楽を貪っている……。
茅と荒野の関係は、時間が経過するにつれ、その内実は、着実に変化してきている。
『これから……茅は……おれたちは、どれくらい……』
変わって行くのだろう……と、荒野は思った。
「荒野……ちゃんと、気持ちいい?」
動きを止め、一休みしていた茅が、荒野にそう尋ねる。
すでに、風呂場で一度、ここで交わってから一度達している茅は、体力的にはともかく、それ以外の限界には達しにくくなっているらしい。
その時の茅の、本気で心配しているような表情と、それに、「ちゃんと、気持ちいい?」という質問の仕方のおかしさに、荒野は、ふっ、と笑う。
すると、茅は途端に「むぅー」と不満顔をになって、ぺてぺち荒野の頬を平手で叩きはじめた。
荒野は言葉でそれに答えず、下から、茅の体を浮き上がらせんばかりに、突き上げる。最初の内、「あっ! あっ!」と小さく叫びながら成すすべもなく荒野の上で弾んでいた茅は、次第に荒野の突き上げにリズムを合わせて体を動かしだし、しばらく荒野の上で蠢いた末、荒野の避妊具の中に射精するのとほぼ同時に達して、荒野の上に倒れ込んだ。
荒い息のまま、茅は、そのまま荒野の口唇を求め、長々と口を合わせる。
「……荒野、は……茅の……」
荒野の首を抱いて、耳元でそう囁いた後、茅は荒野の首筋に口を這わせた。
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つづき]
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