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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(108)

第五章 「友と敵」(108)

「……えっちな匂いがする……」
 荒野たちと併走しながら、ガクがそういってきた。
「昨日もやったからな、茅と……」
 荒野は平静な声で返答をする。確かに自分たちは、普通のカップルとはいろいろと違うところはあるが……だからといって、別に後ろ暗い関係であるとも思わない。
 飯島舞花と栗田精一、それに、柏あんなと堺雅史などは、回数を競っていたりするのだ。彼らに比べれば、自分たちの関係はかなり慎ましいものだと思えた……。
 茅もなにか言いたそうな顔をしていたが、走りながら、では息が続かないらしく、黙っていた。
「いちいち、そんなこと言うなよ!」
「じゃあ、お前も黙ってろ。匂いがどうこうとか、いうな……」
 そう返してから、ふと荒野は気になった。
「ガク……お前……鼻が、かなり効くんだよな……」
「う……うん。
 じっちゃんは、犬並みとかいってた……。
 発情したり、交尾したりした時のヒトの匂いくらいは、嗅ぎ分けられるけど……」
「犬並」というじっちゃんの評価も、観測から導いた主観的なものなのだろうが……あながち、的はずれではないと思う。
「……お前……ひょっとして、ヒトの感情、汗の臭いとかである程度読み取れないか?」
 荒野がそう指摘すると、ガクは「あっ!」と声をあげた。
「出来る! 出来るよ、それ!
 怒っている時とか動揺している時、確かにヒトの匂い、変わってくるし……」
 ガクは、その鋭敏な嗅覚によって、化学的な嘘発見器としても機能する……と、荒野は脳裏に書き込んだ。
 使いようによっては、かなり有益な特技だ……と、荒野は評価する。日常的な対人関係の場でも、非日常的な荒事の場面でも、相手の心理や感情の動きをある程度読める、ということは、アドバンテージとして、かなり有用だ……。
 荒野に指摘されるまで、ガクがその事に気づかなかったのは、島での生活では他人の顔色をうかがう必要性が、あまりなかった為、だろう……。
『……まだまだ、こいつら自身が自覚していない特技……いろいろ、ありそうだな……』
 荒野は、そう思う。
 加えて……彼女ら三人は、まだまだ成長途中の、子供だ……。
 茅がそうであるように……これから先、今まで出来なかったことが、何かの刺激によっていきなりでいるようになる……ということも、いくらでもありそうだった。
『……一族を……軽く、越える……か……』
 そして、そうした潜在的な脅威を育てるための刺激を外部から供給するのは……多分、これから荒野たちに介入してくる、一族の者たち……という、構図になってくるのだろう……と、荒野は予測する。
 改めて考えてみると……現在の荒野の立ち位置は、とても、微妙なものだった。
 茅なりこの三人なりに与し、守り続ける……ということは、いわば、潜在的に「一族キラー」となりうる素質を秘めた存在を、守る、という事を意味する……。
 彼女ら自身の意志や意図は、この際、あまり関係ない。
 現在の所でも、彼女らの「資質」が、一族の平均をはるかに凌駕している部分がある、ということと……それに、彼女らは生きていて、これから世代を重ねていく事が可能である……という事実……。
 一族以上の能力を持ち、将来、敵対する可能性がある……というだけの根拠だけで、彼女らを「一族の天敵」と決めつける勢力が一族内にいても、決して不思議ではなかった……。
 今の時点では彼女らを守ろうとしている荒野は、そうした勢力からみれば「一族の敵」に映るのかも知れない……。

『……じじい……』
 気づいてみれば……とんでもない宿題を押しつけられているのだな……と、改めて、そう思う。
 見方によっては……今の荒野は、一族全体の将来をある程度決定できる……と、解釈する者も、いるだろう。
 荒野はそんなことをするつもりはないが……茅や三人組は……潜在的な性能からいえば、「対一族用の兵器」として、育てることも可能な筈だった。
『茅を……笑わせてみろ……か……』
 涼治に与えられた課題は、限りなく、重い……。
『できるだけ、穏便に……とは、いかないんだろうなぁ……』
 荒野は、今までに知り合った一族の関係者の顔を、次々と思う浮かべてみる。
 先天的な素質に加え、それまでの生涯をかけて、自分の技を磨き、体を鍛え続けてきた猛者ばかりで……自分の力量に自信を持つ者ほど、「一族の一員」であることに誇りと自負を持っている、という傾向が、ある。
 そうした、職人的な気質の者たちが……スタートラインからして優遇されている茅や三人組のような存在を、どのような眼でみるのか、といったら……。
『……やっかみ混じりの反発……』
 いずれにしても、あまりいい感情は持たないだろう……と、荒野は、考える。
 今の所、様子見で監視がついているだけのようだが……いずれ、一族の間で、荒野たちのこのとは、「公然の秘密」として知れ渡ってしまうのだろう。いや、すでに周知の事実となっていても、おかしくはない……。
 一族、というのは、総じて、情報の扱いに長けた連中だ……。

 荒野にとってはあまり歓迎したくない事態だが、
『組織的な介入、以外に……突発的な、どっかのおっちょこちょいが個人的にいきなり挑戦してくる……』
 一族は、決して一枚板ではない。
 六主家のうち、統制が取れているのは秦野と姉崎くらい、内情が不明なのが佐久間……後は、烏合の衆、といっても過言ではない。噂を聞きつけた誰かが、ふと思いたって、腕試しに荒野たちに挑戦してくる……などということも……荒野は、そういう事態は本当に歓迎したくなかったが……十分に、ありえる……の、だった。
 その一方で……茅や三人組が、実際にどの程度「使える」のか知りがっている勢力もいる、から……かりに、そうした「突発的な挑戦者」が、この先、現れたとしても……外部からの援助や介入は、当てには出来ないだろう……。
 つまり、この先なにがあろうとも、荒野は自力で問題を解決しなければならない訳で……と、いうところまで考えて、荒野は、不意に笑い出したくなった。

 ……なんだ。
 今までと、変わらないじゃないか。

 孤立無援で、行き当たりばったり……本当に、今までと、なんら、変わりはない……。
『まあ……茅は、守り甲斐があるし……』
 苦労するだけの価値はあるか、と、思った。

 ガクが、不意に荒野が表情を変えたのをみつけて声をかけてきたので、荒野がそれまで考えていたことを話すと、
「それ、のろけ!」
 と、指摘された。

[つづき]
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