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彼女はくノ一! 第五話 (68)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(68)

「……これだけの面子が揃っているのなら、茅も呼んでおくか……」
 加納荒野はそういって自分の携帯を取り出し、茅にメールを送信する。才賀孫子は、まだ校内に居残っているのかどうか不明なので、あえて呼ばなかった。
 それから、結果として美術室に集まった面々に、昨夜、真理から出された「不法投棄ゴミ」の問題について話しはなしはじめる。
 荒野が一通り説明し、
「……こいつに手をつけるとなると、一番に問題になってくるのが……」
 と、いいかけた時、鞄を持った茅が美術室に入って来た。
 荒野は、茅に片手をあげて合図して、続ける。
「……端的にいって……金だ……」

 荒野は、主に玉木と有働に向かって、諄々と説明しはじめる。
「……おれ、その不法投棄、ってのが、この近辺でどれくらいあるのか知らないけど……問題視されるってことは、決して少なくはない量が、どっか目立たない場所に、どかーとあるんだろう……とは、予測している……」
 有働は、そうした場所に心当たりがあるのか、うんうんとうなずいている。
「で……仮にそういう、多量のゴミを、片付けるとして……まず、最初に必要になるのが、そのゴミを移送するためのトラック……」
 荒野は右手のひとさし指を折る。
「……日本のチャーター代の相場、おれよく知らないけど……燃料費や維持費、人件費もろもろ考えて、一台を一日拘束するとして……まあ、これだけでも、五万や十万は軽く飛ぶだろうな……」
 金銭に関する話題に敏感な玉木の喉が、ごくりと鳴る。
 玉木も、荒野と同じく、そうしたガテン系の仕事を依頼する際の相場に詳しい訳ではないが……決して、安いものではないであろう……ということは、容易に想像がつく。
「……続いて、トラックに乗せたゴミをどこに持って行くのか、という問題……。
 正規の処理場に頼むとしたら……これも、トラックの荷台に一杯あたり、ン万、の世界だろう……」
 なにかと規制がうるさい先進国の場合、それくらいはする筈だ……と、荒野は考える。
「さらに……ものが不法投棄、だ……。
 片付けても片付けても、次から次へとゴミが増え続け、それを片っ端から片付けて行くとしたら……こうした出費は、恒常的なものとなる……」
 この周辺をきれいにする……という単純な目標を達成するためには、少なからぬ予算が必要になるの……という事実を荒野は指摘した。
「玉木……お前んところの商店街では、そういう金まで負担してくれそうか?」
「あはは……。
 そういうの、本来はお役所のお仕事なんじゃ……」
「そのお役所が……うまく機能していないから、ゴミ溜まりができているんじゃないのか?」
 から笑いをしてごまかそうとする玉木に、荒野がおいうちをかける。
 やってもやっても追いつかないくらいにゴミがでるのか……それとも、予算不足その他の原因で、手がつけられない状態なのか、までは知らないが……「自治体などによる自浄作用が機能していない」結果として、現在、ゴミが溜まっている場所が発生する……と、指摘する。
「やっぱり……どうしたって、玉木たちの手には、余るよ……」
 明日樹は、慎重な常識論を述べた。
 役所でも手に余る仕事が……学生の集団にできるとは、思わない……。
 と、いうのが、明日樹の本音だ。
「……いや……」
 思案顔の有働が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「お金の問題なら……年末の人手を再現できれば……なんとか……」
 続いて有働は、輪郭のはっきりとした計画案を出しはじめる。
「具体的な目標額を設定して、募金を募るんです。まず、そうした片付けが必要な地区をピックアップしてそこの地主さんの証言の採取……それに、そこのゴミを実際に片付けるとしたら、どれくらいのお金が必要なのか、実際に試算もします……。
 ここまでの調査と報告書の公表は、放送部で行います。そうした内容は、校内で発表するだけではなく、学校のホームページに掲載してもらってもいいでしょう……」
「……そういう真面目な内容であれば、学校が管理するサーバにでも、問題なくアップできると思います……」
 パソコン部に所属する楓も、頷く。学校のホームページの管理は、もちろん、教師による最低限のチェックは常時入っている訳だが、基本的にはパソコン部に委任されている。
 そのような堅い情報を生徒が自主的に集めてレポートしたデータをアップロードすることは、特に問題視はされない筈だった。
 むしろ、その内容によっては、内外から評価される可能性すら、ある……。
「それで、これだけのお金が集まれば、現在の不法投棄ゴミは片付けられる、という具体的な数字を出して、アピールして……人手の募集と、それに、必要な資金を、募金という形で、広く募ります。
 もちろん、その際の会計監査は、ぼくたちだけでは心もとないので、社会的な信用のある大人……例えば、学校の先生に頼むことになる訳ですが……。
 それで、そのアピールの部分は、松島さんたちに頑張ってもらいます……。
 去年の年末に、商店街でやったようなことを再現できれば……人集めも、お金集めも、決して、夢でも無理な相談でもないと思います……」
「……なんか……出来そうな気がして来たなあ……」
 荒野も、頷いた。
 堅い調査部分は有働、ショーアップの手配やなんかは玉木……場合によっては羽生にも声をかける。
 楓や才賀孫子、それに茅には、イメージキャラクターとして、先陣をきって様々なボランティア活動に従事してもらい、その映像なども記録してリアルタイムで公表し、PRの資料とする……。
 加えて、集まって来た人たちの陣頭指揮は、茅、楓、孫子あたりにまかせる……。
 有働がいうように、チャリティショーという名目で商店街でイベントをやり、人を集めることが出来れば……個人による寄付以外に、そちらから、まとまった金額を寄付されることも、あり得るかも知れない……。
「てことは……まずは、その不法投棄ゴミ関係の調査だね……」
 玉木も、いつになく真剣な表情で頷いた。
「そうですね。
 まず最初は、放送部員で手分けして調べて、具体的に片付けが必要な場所をリストアップ……そこの様子を詳しくレポートすることから、はじめましょう……。
 これは、せいぜい一、ニ週間あれば可能だと思います。
 処理をすべきゴミの量や種類が具体的に明らかになれば、それを処理するのに必要な費用を割り出すのは、簡単です。
 データを提出して、これだけのものを動かしたり処理したりするのに、どれくらいかかるのかと、業者の方々に見積もりを出して貰えばいい訳ですから……」
「……その、調査の過程もさ、リアルタイムに情報を小出しにしていこうよ……。
 関心や問題意識を風化させないためにも、持続的にレポートしていくほうがいいと思うんだ……。
 うちら放送部は、校内放送、掲示板、学校のホームページ……場合によっては、チラシくばり……今までの杵柄で、そうした宣伝には慣れているし……」
「その辺の広報は、玉木さんに任せます。
 ぼくは、裏方とか地道な調査の方が、性にあっていますので……」
「うん。
 その代わり、調査とか告発とか、お堅い社会派方面は、有働君に任せた……」
 有働と二人でぽんぽんと話し合っていた玉木は、急に荒野のほうを振り向いて、にたり、と笑った。
「……ということで、カッコいいほうのこーや君も、こっちのPR方面でのご協力、どうかよろしくお願いします……。
 美容院へ行くの、明日の予定だよねー……」
「あ……。
 こちらの……一年のほうの狩野君は、できれば、ぼくたちにお付き合いしていただければ……。
 ゴミ溜まりの場所をリストアップしたら、そこのレポートをしたいと思います。その時、イラストなんか入れて貰えると、ありがたいのですが……」
 有働勇作も、負けじと香也のほうに顔を向けて、そういう。
「あ。イラストルポ……味があって、いいかも……。
 ……写真やビデオだけじゃ、物足りないかもしれないし……」
 一度弾みがついた玉木と有働コンビの構想は、留まる事なく転がり続ける。
 荒野と香也は、なんともいえない表情で、顔を見合わせた。

[つづき]
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