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彼女はくノ一! 第五話 (72)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(72)

 下駄箱のところで、荒野や玉木、有働とばったりあった。
 楓たちが美術室をでた後も、荒野は、放送室で玉木たちと打ち合わせを続けていたらしい。パソコン部の方も放送部と同様に時間ギリギリまで打ち合わせをしていたのだから、帰りにかちあうのは当然なのかも知れなかった。
 少し遅れて、香也と樋口明日樹の美術部組も合流してくる。

 合流した帰り道では、自然と今日の話し合った内容についての情報交換になった。
 放送部関係は斎藤遥が持ち帰ってきた以上にこれといった進展はないようだったが、帰るみちすがら、茅と楓が、スケジュール管理ソフトを作るための話し合いをしているうちに、茅がネット書店で技術書を大量に発注し、読み終わった後はパソコン部に寄付する、と約束した話しをすると荒野が何か言いたそうな顔をして、いった。
「……茅……今度はコンピュータ、本格的に使いはじめるのか?」
 そう問いかけた時の荒野の顔は、期待と畏敬の念がないまぜになった、いかにも複雑な表情だった。
「そろそろ体系的に、学習したいと思っていたところなの……。
 解らない所があれば、楓や篤朗に聞けるし……」
 荒野の問いかけにに対して、茅の返答は、そっけなく響いた。

「夕飯の買い物をしてくる」
 という荒野と茅、それに玉木の三人と、商店街の入り口で別れ、香也と楓、それに樋口明日樹は、真っすぐに帰る。冬の日は短く、たいして遅い時間ではないというのに、日は完全に落ちていた。
「それで、結局……放送部とかパソコン部とか……本当にあの計画、全部実現できると思っているの?」
 三人きりになると、樋口明日樹は楓に向かってそう尋ねてくる。
「実現出来るかどうかは、実際にやってみないとなんともいえませんけど……」
 楓は、いつになく不機嫌そうな明日樹の態度に少し引き気味になりながら、おずおずと答えた。
「……みなさん、予想以上に、やる気になっています……」
 いつになく積極的に動き出した茅もそうだが……楓は、い活気づいていたパソコン部の面々を思い出す。
「それはあれ……。
 パソコン部の人達は、計画の成否よりも、プログラムの実習が出来ればそれでいい、って人が多いから……」
 なんとなく刺のある言い方をする明日樹に、今度は楓の方がむっとなる。
「……実習の、どこがいけないのですか?
 自分で組んだプログラムを実際に走らせてみる……これ以上の学習はないのです……」
「でも……実際に大勢の人が使うシステムだと……失敗すれば、それだけ多くの人に、迷惑がかかるんだよ……」
 そこまでいわれて、楓にも、明日樹がなにを危惧しているのか、ようやく理解出来た。
 明日樹に指摘されるまでもなく……今、動かしているボランティア関係の活動は……「いかに多くの人々を動かすのか」というのが、主眼なのである。
 荒野たちが、「多くの人々の役にたち、顔を記憶してもらい、いい印象を与える」ということを「達成目標」として捕らえている以上……校内校外を問わず、多くの人々を巻き込む……というのは、必然的な成り行きであった……。
 明日樹は、今回の動きが、今までとは違う規模と波及効果をもつことを感じ取り……そして、失敗した時の事を、恐れている……。
「……大丈夫ですよ……」
 明日樹の危惧を理解した楓の声は、やさしいものになった。
「失敗はするつもりは、ありませんから……」
 なにせ、荒野も茅も、ただ者ではないのだ……ということを、楓は知っている。
「わたし……ごめん……」
 樋口明日樹は、顔を伏せた。
「わたし……楓ちゃんたちほど強くないし……怖い物知らずでも、なれないから……」

 明日樹を送って行くという香也と玄関の前で別れ、家に入る。
 自分の部屋で着替えて台所に向かうと、すでに孫子が真里を手伝っていおり、手は足りていると言われたので、居間に向かう。
 居間では三人組みが炬燵に入っていて、テンはパソコンを、ノリはスケッチブックを、ガクは分厚い本をそれぞれに広げていている。
 三人ともそれぞれに真剣な面持ちで、会話はなかった。
 しん、と、静まり返った空間に、なんとなくいたたまれなくなった楓は、夕食が出来るまでまだ余裕があるので、一度、羽生の部屋に向かうことにする。ゲーム製作に関することもあり、羽生のパソコンは、空いている時は自由に使っていい、と、言われていた。
 羽生の部屋でパソコンを立ち上げ、ネットに接続して、自分用に取得してあったフリーのメールアドレスにまずチェックを入れる。
 ゲーム製作関係の連絡がいくつか、それから、スパムや広告がいくつか、それに、見慣れないアドレスからメールが来ていいた。
 スパムや広告を反射的に削除し、添付ファイルがなかったので、そのまま、差出人に心当たりのないメールを開く。
 中身をみてみると、なんのことはない、そのメールは徳川篤朗からのもので、今日の放課後、茅と話した内容から、「このあたりのツールを使って見たらどうか?」といくつかのフリー配布のシステムを紹介する内容だった。
 ……態度は尊大だが、悪い人ではないよな……と、楓は思う。
 篤朗の紹介してくれたURLアドレスを開いてざっと確認してみると、確かに、若干の手をいれれば使いものになりそうな気がした。
 だが、そちらのほうは手をつけはじめると時間がかかりそうなので、とりあえず、夕食後に回すとして……楓は、ゲーム製作関係のメールをチェックしていく。
 いずれも、緊急性はない内容なのだが、香也に伝えるべき変更点などが書かれており、そのうちいくつかは香也にみせるためにプリントアウトし、そこまでしなくても間に合いそうなものは、内容を暗記して後で口頭で香也に伝えることにする。

 楓が一連の作業を終えて居間に戻ると、ちょうど夕食がはじまるところだった。明日樹を送っていった香也も、仕事を終えて帰宅していた羽生譲も、すでに炬燵に入ってくつろいでいる。
「ガクちゃん、今日は本読んでいるのか? なに読んでいるんだ?」
「水滸伝。今日、図書館にいって、借りて来た……」
 羽生が問いかけると、ガクは、本をたてて、ハードカバーの表紙を見せる。
「でもこれ……とても、悲しい話しだった……。
 何かの間違いで産まれたような異能の人達が、普通の人達に交ざって暮らしているうちに、どんどん周囲と衝突して、世間から追いやられて……居場所を探しながら……他にどうしようもなくて、暴れて……集まって……でも、最後には、体制側に取り込まれて、どうでもいいような消耗戦に投入され、捨て駒にされて……ほぼ、全滅するんだ……」
 ガクの声は、思いのほか沈んでいた。
 最後には、体制側の手先になってほぼ全滅する、という水滸伝の好漢たちと、自分の境遇とを、重ねて読んでいたらしい……。
「……ガク、心配することはないよ……」
 今にも泣きそうな顔になったガクの肩に、ノートパソコンから顔をあげたテンが、掌を置いた。
「周りに流されないだけの力をつけるために……ボクが、今、いろいろと考えているところだから……」

[つづき]
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