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彼女はくノ一! 第五話 (73)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(73)

 夕食の後、小一時間ほど香也の勉強をみて、その後、香也にゲーム製作関係の連絡事項を伝える。いつもなら、そのまま香也の後についてプレハブに向かうところだが、楓は羽生譲に声をかけて、パソコンを使わせてもらうことにした。
 放課後、パソコン部で仕様を検討したシステムの構築を、少しでも進めておきたかった。
 だいぶ大規模なシステムになりそうっだし、他の部員の実習も兼ねたかったから、モジュールごとに細分化して、多人数で同時進行で組み上げる形にもしておきたい。参加を希望した各部員の知識と技能に合わせて仕事を割り振るためにも、おおもとの設計はできるだけ早い段階で詰めておきたい所だ。
 楓は羽生のパソコンを立ち上げ、メーラーを開いて今日届いた徳川のメールをチャックし、中に書かれたアドレスを片っ端から開いて、内容を子細に検討しはじめた。どのソースも、徳川が推奨するだけあって、非常に参考になる内容だ。
 楓が夢中になってそれらの内容をむさぼり読んでいると、携帯の方に、茅からのメールが入って来た。
 茅からのメールは、「マンションの方に来て一緒に作業をしないか?」という誘いであり、茅の方も、楓と同様のことを考えて、ソフト開発の学習をはじめているらしい。
 茅はまるで経験のない初心者だが、完璧な記憶力を持つ。すぐに必要な知識を吸収して、数日で楓と同様のレベルにまで追いついてしまうに違いない……と、考えた楓は、どうせすぐそこに住んでいる訳だし、今のうちに協調体制を整えて置いた方がいい、と判断し、羽生のパソコンの電源を落とし、外出の用意をはじめた。

 楓が玄関口まで出ると、居間にいたガクとテンが「どこにいくのか?」と尋ねてくる。楓が、昼間、堺雅史がしたためたレポート用紙を小脇に抱えていたため、いつものようにプレハブに行くのではない、ということを察知したらしい。
 楓が簡単に事情を説明し、荒野たちのマンションにいくと伝えると、ガクとテンも、一緒にいく、と、いいだした。
 一族に関することを荒野にもっと聞きたい、というのが二人の言い分で、テンのほうはそれに加えて、茅がコンピュータの知識を学習するのなら、自分も一緒に学びたい、と、いった。コンピュータの関連の知識について、三人は、島でも一通り基本的な操作方法は教えらられてはいたが、ネットワーク関連を中心としてかなり詳細な知識をたたき込まれた楓ほどには詳しく教えられてはいない、という。
 それで、ノリを除くガクとテンを連れて、楓は荒野たちのマンションに赴いた。
 ノリの姿は居間にみえなかった。かなり高い確率で、香也のいるプレハブに行っている……と、楓は思った。

 二人を連れて楓がマンションを訪ねると、荒野と茅は快く出迎えてくれた。
 茅が紅茶をいれる準備をしている間に、荒野はガクとテンに向かって、
「……お前ら、秦野のにいさんたちにしてやられたのが、そんなにショックだったか……」
 と、揶揄を含んだ口調でいった。
 楓は初耳だったが、今朝、朝のランニングの最中に、秦野衆うち三人だけが、わざわざ荒野たちに会いにやって来たのだ、という。
 そう聞いて、楓は驚愕した。
 直接接触したしたことはないが、秦野衆といえば、二宮と並んで一族のうちでも荒事に特化した連中である。しかし同時に、「秦野は排他的な集団で、部隊単位でしか動かない」とも聞いていた。
 それが、たった三人という小人数で、秦野以外の者の前に姿を表した、という例は……楓は聞いたことがない。
「……だからさ、敵意がないことを、示したかったんだろう……」
 荒野は、何故か憮然とした顔でそういった。
 秦野の最大の武器は、「数」だ。その「数」を自ら制限して接触することで、敵意はないことを示す……確かに、理屈としては、わかる気がする。
 しかし……。
「……この子たち、そんなに重要な存在なんですか……」
 荒野のいう「姫の仮説」についても、一通りの説明は聞かされていたのだが……楓には、いまいちピンときていない部分が、あった。
 楓は、荒神のいうところの「雑種」、つまり一族とは関係のない出自を持つ。また、実際に次々と生きている六主家の者を目の当たりにしたのは、この土地にきてからのことだ。
 そんな楓が、いきなり「姫の仮説」みたいな話を聞かされても、なかなか実感できないのは当然のことだった。
「こいつらが全然VIPらしくない、って点には同感だがな……」
 荒野もため息をつき、肩をすくめた。
「現にこいつら……育ちきっていない今の時点でも、そこいらの大人の一族関係者……六主家の平均よりも、よっぽどスペック高いし……。
 さらにいうと、秦野までが出ばってきた、ってことは、茅とかこいつらのことが、一族の中ではもはや秘密でもないんでもない、ってことだな……」
 荒野は楓に、
「今朝、秦野の兄さんたちは、じいいの所に挨拶してからこっちに来た、といっており、加えて、そこで、三人に関する資料もチェックしたという意味の事もいっていた……」
 とも、告げた。
 つまり涼治は、茅や三人のことを、秘匿する意志はない、ということなのだろう……。
「ま……三人がこっちに合流したことで、フェーズが変わった……と、みるべきなんだろうな……」
 最後に、荒野はそういって、締めくくる。
「なあ、かのうこうや……」
 ガクが、合点のいかない顔で、荒野に尋ねた。
「ボクらの存在が知れわたると……なにか、困るのか?
 ボクら、取られて困るような宝物とか、なにも持っていないぞ……」
「……お前らの存在自体が、他の者たちを呼び寄せる……」
 荒野は、ため息混じりに説明をはじめる。
 一族の内情や気質についてよく知らない、というう点については、三人組も、楓も、同じようなものだった。
「……いいか。
 基本的に、一族の者、というのは、自分たちの能力や技能に関して、矜持を持っている。自負心、とでもいうのか……秀でた能力を持つ者ほど、気位が高い……」
 ガクは頷く。
 そこまでは、ガクにも想像できる。
「……そこに、だ……。
 たいした努力もせず、生まれついて、自分たちよりも優れた能力を持つお前らのような存在がいきなり現れたとしたら……どう思う?」
「えっと……」
 ガクは考え込む。
「……ねたむ? 怖がる?
 の、前に……本当にボクらがそんなにたいした存在なのか、自分の目で確認しようとする……」
「……だから、今朝のあれがあったの……」
 それまで会話に入らなかったテンが、かなりむすっとした表情で、口を挟んだ。
「かのうこうやは、狡いよ……。
 わざとボクらをけしかけて、茅ちゃんから注意をそらしたんだ……」
「まあ、そういうな、テン……」
 荒野は、にやりと笑った。
「ガクが見事に間抜けな真似しでかしてくれたおかげで、秦野の兄さんたち、お前らのこと、過小評価したまま帰ってくれただろ?
 あそこで下手に兄さんたちをやりこめるよりは、今の時点では、見下されるぐらいのが、こっちにとっては都合がいいんだ……」
「え? え? え?」
 ガクは、眼を見開いて半ば腰を浮かせ、中腰になったまま、テンと荒野の顔を交互に見る。
「……えー!
 今朝のアレ……って、そういうことだったのー!」
 何秒かして、ようやく叫んだガクに向かって、テンはいった。
「そういうことだったの……
 かのうこうや……ボクらに任せれば、なんか致命的なヘマをやるだろう、そうしたら、相手も、しばらくはボクらのこと、本気で脅威だとは判断しないだろう……って思って、実際に、そうなったの……」
「……今の時点では、変に腕自慢がわらわらと挑戦してくるよりは、そっちのが平和だからな……」
 荒野が澄ました顔でそう答えた時、暖めた紅茶のセットを盆に乗せた茅がやってきて、全員分の紅茶を用意しはじめる。

[つづき]
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