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彼女はくノ一! 第五話 (74)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(74)

 最初のうちこそエラーを連発して楓の手を患わせたが、茅はすぐにコーディングのコツを体得したようで、いくらもしないうちに、楓はほとんど見守っているだけでいい感じになった。プラグラミングを今日からはじめたとは思えない流麗な指さばきで、茅は次々と細かいパーツを仕上げて行く。
 そのうち、LAN経由でできあがったブロックを次々に荒野のパソコンに転送し、楓に評価や試験をさせてる。その間にも、茅は自分のパソコンで次のブロックに取り組む……という流れができた。
 楓がみたところ、茅のコードは教本どおりの実にきれいなもので、後から手をいれるための注意書きや注釈も、手を抜かず丁寧に書き込まれている。
 そして、実際に走らせてみると、問題なく動くのだった。バグ取りが必要にだったのは最初のうちだけで、楓が「このコードの何行目、しかじかの箇所が」といった具体に口頭でいくつかの欠陥やロジックミスを指摘すると、茅は頷いて二度と同じミスはしないのだった。
 楓は、茅の持つ記憶力の意味を、恐らくこの時初めて思い知らされたような気がした。
 今日、ネット上にある情報だけを参照していきなりサイズの大きなプロブラム、それも、実際に走らせることができるものをこうして目の前で作り上げてしまう……というのは、やはり、人間業とは思えない……。
 みれば、テンも茅の真似をして、同じくネット上の情報を参照したり、楓が報告する茅の失敗例に聞き耳を立てながら、何やらコードを書き込んでは時折走らせて試験をしているようだった。テンの指の動きは茅のものに負けず劣らず早く、画面上に流れる文字の動きを、楓が追えないほどだった。
 楓が後ろから画面を覗き込んでいるのに気づくと、テンは、
「今のこれは、練習……トクツーさんの所で仕事をするとなると、この程度のことは、できておかないとね……」
 振り向きもせず、テンの背中がそう答える。

 茅とテンのそうした様子を横目で睨みながら、楓は、荒野の話しをガクといっしょに聞いていた。実戦経験のない楓にとっても、若年ながら多くの修羅場をかいくぐってきた荒野の体験談は興味深く、参考になる点が多かった。
 意外だったのは、荒野の話しを聞いたガクが、いきなり泣きそうな顔になったことだ。
 荒事中心に数多くの現場を渡り歩いてきた荒野の話しは、当然のことながら、流血沙汰などの凄惨な話しが多い。そのことに関して、ガクは、なにやら感じる所があったらしい。
 優しい子なんだな、と楓はそう思う。
 荒野は、三人について何度か「プロフェッショナルではない」という言い方をしているを聞いたことがあるが、ガクのこうした甘受性は、楓には好ましく思った。

「……区切りのいい所まで終わったの……」
 茅がそういったので、その日はお開きということになった。もう、いい時間になっている。
「これで、パソコン部の仕事の進行状態が、チェックできるの……」
 茅は、今後大人数を動員するためのシステムの雛形として、まずはパソコン部の仕事を管理するためのシステムを作り上げたものらしい。
「……明日から、プログラムの参考書、届くんだよね……」
 テンが楓に、確認する。楓は、頷いた。
「ネット書店に在庫がある分は、すぐにつく筈なの」
「じゃあ、明日の夜もこっちに来て、一緒にそれを見せてもらっていい?」
「かまわないの」
「……その前に、明日は美容院にいくからな。忘れるなよ……」
 荒野が横合いから口を挟む。
「わかっているよ。
 こっちは、忘れようとしても、忘れられないように出来ているんだから……」
「……そうだ、お前ら……。
 商店街の方で、バレンタインに向けて、才賀を使ってまたなにかやるようだけど……そのことについて、なにか聞いてないか?」
 荒野がそう尋ねると、テンとガクは顔を見合わせた。
「なに、かのうこうや、あのこと、聞いてないの!」
「……おっくれってるぅ!」
 テンとガクは、口々にそんなことを言いながら、まだ電源を落としていないパソコンを操作し、あるサイトのトップページを開いた。

「……バレンタイン・ゴシックロリータ・ファッションコンテスト……」
 いつの間にか出来ていた、駅前商店街のサイトのトップページでは、盛装……というよりは仮装に近い……つまり、彼女自身の嗜好を忠実に反映したファッションに身を包んだ才賀孫子が、婉然と微笑んでいた。
「最近おとなしいと思ってたら……裏でこんなこと、やってたのか、あいつ……」
 荒野は、呆然と呟いた。
 荒野もあれから周囲にいろいろ吹き込まれて、今ではその手のファッションが、一部の若い女性層に強くアピールする、一種のポップカルチャーであることも理解している。そういう情報を吹き込まれる過程で、そういうファッションの愛好者は意外に多い、ということも知らされていた。
 なるほど……こういうマニアックな人種をターゲットにすれば……県外からもそれなりに人は呼べるだろう……。
 ……集まってくる人種に、なにかと問題があるような気もするが……。

「……これ、ボクたちも出るんだってー……審査対象ではないっていってたけど……」
「ノリは、真理さんと一緒に順也先生の絵を売りに行くんで、しばらくいなくなるけどねー……」
 顔色を失っている荒野と楓をよそに、テンとガクの二人は無邪気にそんなことをいいあっていた。

「ま……この件には、おれ、声をかけられていないから、どうでもいいといえばいいけどな……」
「この格好……トナカイの着ぐるみよりも、恥ずかしい気が……」
 荒野と楓は、そんなことをいいあってこくこくと頷きあった。
 二人とも、完全に、顔から血の気が失せていた。

「……孫子ちゃん、商店街のサイトみたよ……」
 翌朝、そういって飯島舞花は「わはは」と笑った。
「……似合ってた、似合ってた。
 あれ、今週末からやるの?」
「本番は、来週の土日。
 今週末から、エントリー受付……」
「ああ。
 エントリーした人は、本番の審査の時まで商店街周辺でピーアル活動が出来る、って書いてあったけど……」
「……ええ。今週末から審査が終わるまでの間、あのファッションの子たちがあの近辺を闊歩する風景がみられるわけです……。
 エントリーしてきた順番に、三分のPRビデオも、ネットで配信出来るようになっています……」
 エントリーしてきた者自身が撮影、編集してきた映像を持ち込むのも可能だが……商店街のサイトには、そうした機材を持たない人のためには、商店街の写真館を撮影と編集を行う、という旨も、ちゃっかり記載され、写真館のサイトへ続くバナーが張ってあった。それはもちろん、その際の実費、撮影料などは有償であり、写真館のサイト内には、「サンプル」と称して、才賀孫子のピーアル映像が置かれていた。
 なお孫子自身は、主催者である商店街の協力者、という位置付けであり、コンテストにはエントリーしていない。
 ファッション・コンテストにエントリーするには、ン千円の参加料を主催者である商店街に収めなければならない。また、十八歳以下の参加希望者は、保護者の同意書が必要となる。
 これは参加者の本気度を図るためのもので、実際には、舞台の設置料や人件費等の必要経費を考えると、よほど大量の参加者がこない限り、商店街の持ち出しになる……と、孫子は説明する。

「……そうそう」
 例によって途中から合流してきた玉木が、孫子の説明を補足した。
「商店街にしてみれば、さ……。
 いつまでも君たちのような人たちに頼ってばっかじゃ、どうしようもない、っていうのがあるんよ……」
 そういって玉木は、荒野や茅、楓などの顔を見渡す。
「人が集まらない、っていうのなら、人が集まるようなイベントをしかけていけばいい、っていうのは、年末に、証明されちゃったから……。
 まあ、その初期加速の段階には、ちょっくら力を貸してくれい……」
 その代わり、ボランティア方面の広報にも、協力するから……と、玉木は付け加える。

[つづき]
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