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第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(88)
かなり早い時期から、香也はなにがなんだか分からなくなっていた。
まず、玄関先で楓とそういうことになりかけたちょうどその時、帰還した孫子とばったり出くわしたあたりで、すでに相当に混乱していたし、その後、孫子に口移しで飲まされた液体が胃の中に入っていくと、かっと体が熱くなって、誰彼かまわずむしゃぶりつきたい気分になって、さらにその後は、焼け付くような欲望に駆られるばかりで、いろいろなことがもうどうでもよくなった。そんな時に、楓が香也の上に馬乗りになって強引につながりを持ち、香也の上で踊りはじめ……後はもう、なにがなにやら、である。
交互に二人と性交していた、という意識はある。しかも、孫子は出血していたし、痛がってもいた。多分、初めてだったのだろう。
普段の香也なら、どさぐさ紛れにそんなことをしでかしてしまったことに激しい罪悪感を感じていただろうが……この時の香也は、頭がぼーっとして、誰かの中に自分自身を埋没させたい、という要求にしか、意識が向かなかった。
幸い、ここには、喜んで香也を迎え入れてくれる女性が二人もいて、その二人ともが、香也に肉体をむさぼれるのを嫌がるどころか、競い合うようにして香也に身を捧げてくれる。
それだけではなく、一人と交合している時にも待ちきれないか、他の一人が香也の背中に抱き着いて胸をすりつけてきたりする。
二人が受け入れてくれるのをいいことに、香也は焼け付くような欲望に従って二人を順番に犯し続けた。香也の息がたえだえになって動けなくなった時も、寝そべった香也の上で二人のうちどちらかが蠢いた。
そんなわけで、正常な理性を失った香也は、二人と交互に交わり、何度も中に射精した。どうしたわけか、何度射精しても香也の男性が力を失うことはなく、ただ、回数を重ねるにつれ、射精から射精までの間隔が長くなり、終いには全く射精しなくなる。それでも勃起はし続けているので、二人の相手をして喜ばすのに不都合はなかった。
そのいつまでも持続して起立し続ける肉棒を、香也は何度も何度も二人の奥に突き入れて、かき回した。一人が悲鳴をあげてぐったりすれば、別の一人を犯す。そうしているうちに、一度ぐったりとした女性が回復して起き上がる……。
そんなことを、何度か繰り返していていた。時間の感覚は、すでにない。
香也の体力が尽きてぐったりと寝そべっているだけになると、女たちは最初、それでも起立し続ける香也の男性を巡って争い、それを過ぎると、今度は寝そべっているだけの香也に飽き足らなくなったのか、抱き合って長々と口づけを交わしはじめた。
香也が動かなくなっても火照った体は静まらず、諍いを続け、揉み合ううちに、いつの間にかそういうふうになってしまった。美少女二人が抱き合いながら、お互いの胸とか腰に手を回して明らかに愛撫しあっている図は香也にとっても十分に扇情的であり、どれくらい扇情的であったかろいうと、それまで喉を鳴らして寝そべっていた香也がよろよろと起き上がり、二人の仲間にはいっていくくらいには扇情的だった。
それまでは、香也を軸とし、二人が性交している場を残った一人がぽつねんと終わるのを待っている、という感じだったのが……後半は、三人で、相手の制約はなしに、目の前の相手の体を貪り合う、というプレイに変わった。
そこでの香也は、行為の中心軸、というよりは、二人を喜ばせるパーツを持っているだけの人間になり、そのパーツを使って二人の快楽に奉仕した。
三人は汗と体液にまみれてぬるぬるになりながら、一体の生物のように一塊になって絡み合い、お互いの肌を、舌を、精液を接触させて、快楽を貪りあう。香也と交合してる時に、別の女が、香也が深く刺さっている陰核に歯を立てたこともあったし、香也が絡み合う女達の重なった女陰に鼻面を突っ込んで、舌で奉仕したしたこともあった。
そうなった三人には、もはや、理性も、時間が経過する感覚も、言葉も、意味がなかった。三人は、興奮を通じてどろどろに解け合い一体になったようなもので、三人の内部だけで完結しており、外の世界の出来事は完全に意味を失った。
その時限定で、三人は三人だけの世界の住人だった。
「メリーさんの羊」のメロディで、香也は目を覚ました。目を覚ましたことで、自分がいつの間にか玄関前の廊下に寝ていたことに気づき、それから妙に肌寒いな……という感覚に襲われ、自分が全裸であることに気づいた。
「……はい、もしもし……」
脱ぎ散らかした自分の服の中から携帯を探し、やっとのことで電話にでる。その途中で、楓や孫子も、そこいらに服を脱ぎ散らかして全裸で寝ているのを発見し……記憶が蘇ってきた香也は、一人で青ざめた。
「……え?
はい。楓ちゃんも才賀さんも、こっちにいますけど……。
……んー……。
今、ちょっといろいろあって、二人とも忙しかったから……」
……確かに、いろいろと有り過ぎた。
香也が携帯に向かってしゃべり出したので、楓と孫子も目をこすりながら、のろのろと起き出す。
「……んー……。
ちょっと、待ってね。
今、楓ちゃんに、変わる……」
香也は、持っていた自分の携帯を、楓に差し出した。
「……茅ちゃんから……。
なんか、凄いことが、いろいろ起きているみたい……」
ようやく目を覚した楓は、香也からひったくるようにして携帯を受け取った。
『……楓、力を貸して……』
茅の声には、焦りに似た感情が染み出しているようだった。
『……ガクが、制御不能になっているの……』
「すぐに行きます!」
反射的に答えてから、楓は茅に聞き返す。
「……でも……どこに?」
『商店街。そこに、荒野もいるの……』
茅は簡潔に事態の推移を説明した。
『でも、荒野、別の敵と交戦中。
もともと、テンとガクが相手をしていた敵だったのだけど……アクシデントがあって、ガクが一度気を失って……意識を取り戻したら、ガクはバーサク・モードに……。
荒野は今、ガクが抜けた穴を埋めているの……
楓……お願い。
茅、ガクが暴れたら、止めるって約束したの……』
「商店街ですね、分かりました。あと五分、いや、十分、保たせてください……」
『荒野がいるから、時間はなんとか大丈夫。
でも、急いで……それから、顔は隠して……』
跳ね起きた楓は、風呂場に向かい、浴槽に溜まっていた水を手桶で掬い、ざっと頭から被るとすぐに脱衣所にでて、そこに置いてあったバスタオルで手早く体を拭き、自分の部屋に駆け込む。
『……顔を隠せるもの……っていったら……』
楓の手持ちの衣装でいったら……あれ、しかない。
楓は、この家に来た時に着ていた、忍装束を取り出した。
[
つづき]
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