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彼女はくノ一! 第五話 (89)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(89)

 茅と楓の通話を聞いていた孫子も跳ね起きて、そこいらに散らばってた下着とゴシック・ロリータ・ドレスを身につけはじめる。
 できれば新しい衣装を身につけたいところだが……今は、一刻を争う事態のようで、時間をかけて選んでいる暇はなさそうだ。
「茅……わたくしは、何をすればいいかしら……」
 孫子は、自分の携帯で茅に電話をかけて、指示を乞う。
「わたくし、今、とっても気分がよろしいの……。
 今なら、どんなことでも、できそうな気がしますわ……」
 そんなことをいって、くすくすと笑いながら、ゴルフバッグを肩にかける。
 ゴルフバッグの中には……昼前、商店街で徳川篤朗から手渡されたばかりの、ライフルが入っている。徳川曰く、「新品同様。ないしは、それ以上」とのことだったが……その言葉をどの程度信用できるのか試してみる、いい機会だろう……。

 忍装束の楓とゴスロリファッションの孫子が慌ただしく身支度をして外に出て行くと、心情的にはカラカラの干物になって廊下に転がっていた香也は、ようやくのろのろと起きあがった。いや、一度起きあがろうとして、がくりと膝を落とした。
 ……足腰に来ている、らしい……。
 喉もカラカラだったし、お腹も空いてきた……。
 楓とそうなりかけたのは、お昼を食べたすぐ後だというのに……その後、延々と激しい運動をし続けていたから、そのツケで、体のあちこちにダメージが蓄積しているらしい……。
 香也は「……んー……」と唸りながら、廊下に散らばっていた自分の衣服をのろのろと身につけ、ずるずると這うようにして、台所に向かう。
「足腰が立たない」とは、こういう状態を指すのか、と、思う。
 シンクに半身を預けるようにして蛇口の下に顔をつけ、ごくごくと喉を鳴らして水道水を直接大量に飲む。
 渇きが何とか収まったところで、冷蔵庫を開き、調理をせずにすぐに食べられそうな果物や菓子類などを引っ張り出し、片っ端から食い散らかす。
 ある程度満腹感を感じるようになると、今度は瞼が重くなってくる。食い散らかした後を片付けなくては……とか思いながらも、香也は、その場で瞼を閉じはじめる。真冬の台所、というのは、かなり寒いのだが……そんなことは些事に思えるほど、全身の細胞が休養を欲していた。
 居間の炬燵まで、せいぜい数歩という距離で、ここからいくらもないのだが、今の香也には、その数歩の移動が、ひどく大儀に思える……。
 ……そんなわけで、先ほどの情事を思い出して、香也が激しい自己嫌悪に陥るようになるのは、まだ数時間後、香也が目覚めてからのことになる……。

 時間を少し遡り、場所も移す。
 その日の朝、玉木珠美は母親が呼ぶ声で起こされた。朝、とはいえ、平日ならとっくに学校で授業を受けている時間なのだが、休日の玉木は、特に用事がなければ昼まで寝ていることが多い。その日、昼までかなり間があるのに母親に起こされたのは、徳川篤朗が姪を連れて訪ねて来たからで、そう聞いた玉木は、寝ぼけ眼をこすりながら勝手口のほうに向かった。寝間着代わりにしているジャージ姿のまま、頭も寝癖が四方八方に飛び出ている状態だったが、徳川相手では身繕いする気にもならない。そもそも、徳川は他人という者に対する興味を、極端に欠いている……と、玉木は思う。

 徳川篤朗のことを玉川珠美の意識したのは、今の学校に入学するのと、ほぼ同時期だった。徳川の会社は、その頃には軌道に乗っていたし、何分、噂が広まるのが早い田舎町のことだから、自分と同じ学年にそういうのが入学してくるのは、早いうちから広い範囲に囁かれていた。
 実際に同じ学校に通うようになって、玉川の方は、徳川篤朗本人の異質さと、その異質さを隠そうともしない野放図さを目の当たりにすると……呆れたり感心したりするようになった。
 玉川自身も、普通の学生に比べればかなり異質な性格であり、しかし、徳川は、その頃の玉木とは違い周囲から孤立することを全く恐れていなかった。
 同じ学校、同じ学年に「徳川篤朗」という「異分子」が存在し、平然としていること……で、玉木珠美は、今まで随分勇気づけられている。
 もちろん、そんな恥ずかしいことを、徳川本人の目の前で言ったことはないのだが……。
 そんなわけで、徳川篤朗の隠れウォッチャーである玉木珠美は、徳川が自分の寝起きの顔を見ても、なんら関心をしめさないことを知っていたので、躊躇なく勝手口に出ることができた。

 徳川の用件というのは、商店街のストリーミングシステムの様子をみたいので、しばらく姪の浅黄を預かってくれ、ということで、もちろん、玉木は快諾した。
 玉木が快諾すると同時に、例によって、徳川の頭の上で丸くなっていた黒猫が、太った体に似合わぬ身軽な動作で徳川の肩を伝って降りて来て、玉木の家のダイニングにどっしりと居座る。
 どうやら、匂いにつられて、ここに居座ればおいしいいものが食べられる、と、判断したらしい。玉木の家は「うおたま」という魚屋を営んでいた。

 今回、徳川は玉木の依頼で、ストリーミング回りのシステムの運用全般を引き受けてくれた形で、その対価としてみると、子守をするくらいのことは、むしろ安すぎるくらいだ。徳川は、徳川の会社のCMを、商店街のストリーミング映像に時折割り込ませる、という条件だけで、今回の商店街の仕事を引き受けてくれた。徳川のシステムの堅固さは、そのあたりのことに詳しい楓の折り紙付きで、そうした性能の価格も含めて考慮すれば、徳川はほとんどただ働きしてくれているようなものだった。
 玉木が弟と妹に浅黄を引き合わせると、年齢が近いということもあって、三人はすぐに打ち解けて、全国ネットで放映している毒にも薬にもならないような子供向けテレビアニメを一緒にみはじめた。
 それを横目に玉木は手早く朝食を済ませ、身支度を整えた終えた時、放送部の有志が訪ねて来てくれた。その有志一同を率いてまだほとんどの店のシャッターが降りているアーケードに出ると、つなぎの作業服の上にジャンバーを引っ掻けた電気屋の親父さんと白衣姿の徳川篤朗、それにバイトらしい軽作業派遣業者のロゴが入ったポロシャツを来た人達が手分けして脚立を使って液晶ディスプレイを支柱にビス止めする作業をやっていいる最中だった。
 玉木と放送部有志もそれに合流する。
 液晶ディスプレイの梱包を解き、ビスであらかじめ設置されていた土台に固定する、というだけの仕事だから、特に難しいこともない。梱包を解いて段ボールから液晶ディスプレイを出すもの、それを、脚立の上にいる者に手渡す者、液晶ディスプレイを土台に乗せて支える者、ビス止めをするもの……など、四、五人のチームを組んで、何班かに別れて作業を行う。電気屋の親父さんと徳川篤朗とが、ビス止めの完了したディスプレイから、配線作業を行った。商店街のアーケード内にしか設置しないので、電気屋さんから直接ケーブルを敷設して繋いでいる。
 大勢で取り組んだため、商店街のシャッターが次々に開き出す前に作業は終わり、臨時雇いのバイト君たちは、電気屋さんにサインを貰って去っていった。
 液晶ディスプレイやネットによる情報発信、それに、今回のようなイベントに必要な費用は、年末のイベントとマンドゴドラの成功例を考慮し、商店街全体で負担することになっている。直接利潤を生む投資ではないが、長い目で見れば十分に元が取れる、という意見が多く、また、このままなにもやらなかったら、寂れていくばかりだ、という認識が共通していたため、商店街内におけるこのあたりの合意形成は、比較的スムーズだった。
 そして、液晶ディスプレイの設置作業が終わった頃に、才賀孫子が到着した。

[つづき]
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