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彼女はくノ一! 第五話 (93)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(93)

 ガクが、ノリ用として試作された六節棍を使用して手首を搦めとった秦野を振り回して、景気よく他の秦野を吹き飛ばすことができたのは、実際には数秒間、という、ごく短時間でしかない。
 しかし、その様子を目撃した人々は、一見して小学生ほどに見えるガクが、女性とはいえ大の大人を軽々と振り回し、群がる女性たちをなぎ倒す様をみて、ただただ目を剥いた。

「……これ、なんのCGだよ……」
「現実だよ! 現実! 紛れもなく、今、目の前で起きている現実だよ!」
 周囲のビルの窓や屋上に配置し、カメラを構え、その様子を撮影していた放送部員たちの間で、興奮したそんな会話が同時多発的になされていた。
 そして、少しして落ちつてくると、今度は、
「……くっそうぅ……この雨さえ、なければなぁ……」
 土砂降りの雨で、視界はかなり悪くなっている。
 このような貴重なシーンが、雨なぞに邪魔されて不鮮明の映像として記録される、ということは、いかにも残念だった。
 ストリーミングでは、回線の都合上、さらに画質が悪くなるので、ネット上でみる人は、この光景に、あまりリアリティを感じられないではないか……という思いも、あった。
「これ……後でちゃんと説明しろよ……玉木……」
 放送部員たちは口々にそんなことを呟きながら、テンとガク、それに秦野の、非現実的な戦いを撮影し続ける。

 ガクが捕らえた秦野の体を一周させる前に、他の幡野は、極めて有効な対抗策を打ち出してきた。さすがに、黙ってなぎはらわれてくれるほど、殊勝ではないらしい。
 ガクがノリの六節棍で捕らえた秦野の体に、次々と他の幡野が飛びつく。ガクの振り回す秦野の周囲に、別の秦野がほとんど同時に取り付き、ガクは……黒々とした固まりが膨れ上がってくる……といった態の物を、振り回している格好となった。
『ガク、早く捨てろって! そんなもん!』
 ガクが振り回す六節棍の先には、すでに十人以上の秦野がとりついていた、中には、六節棍を伝ってガクに飛びかかろうとしている者もいる。
「……分かっているって!」
 無線越しにテンに返事をするのと同時に、ガクは、だん!、と足を大きく踏み出して、取り付いた十人以上の秦野ごと、六節棍を放り出した。
 それまで秦野たちが陣取っていた、反対側の方向へと……。
 ガクに高々と放り投げられた秦野たちは、空中でばらばらと散らばり、別々に、着地する。
 これで、細長いアーケード上で、テンとガクを挟んで、十人以上の秦野が両端からにらんでいる、という形になった。
「……ほれ、みろ……。
 ガクのせいで、挟撃される形になっちゃったじゃないか……」
「物は考えようだよ、テン。
 これで、前後半数ずつ。二人で片付けるのに都合いいじゃないか……」
 テンとガクは背中合わせに囁き会う。
「またそうやって、失敗をごまかす……。
 もう!
 先にいくからね! どっちが先には片付けるか、競争ね!」
「……あっ! テン、ずるい!」
 無線を通して、ガクとテンの緊張感のないやりとりを聞いていた放送部員たちは、いっせいに脱力した。

 それでいて……それぞれ、反対方向に駆け出していった、玉木の命名によるところの「シルバーガールズ」は、それぞれ単独でも獅子奮迅の活躍をするのだった。
 相手の方が人数が多いのを幸いに、「ちぎっては投げ」という慣用句を地でいっている。
「シルバーガールズ」が動くと、物騒な物を持った黒衣の女たちが、面白いように宙に舞う。「シルバーガールズ」は棒を降るって、黒衣の女たちを吹き飛ばしたり、腕ですくい上るように舞上げたりしている訳だが、随分と乱暴な真似をしている割に、見ていて悲惨な感じがしない。
 これは、「シルバーガールズ」の相手をしているゴスロリ・ファッッションの女たち……これも、玉木の命名によると、「シャドウレイディーズ」……が、そろって終始にこやかな表情を保っていることと、それに、簡単に「シルバーガールズ」の攻撃を受け、吹き飛ばされる割りには、あまりダメージを受けた様子がなく、ふわりと着地して、すぐにまた「シルバーガールズ」に群がって行くから……で、「シャドーレイディーズ」が全く見分けがつかない顔をしていること、「シルバーガールズ」がどっかのマンガやアニメから抜け出てきたようなヘルメットとプロテクターを装備していること、などと相俟って、こうして実際にカメラで撮影していても……時間が立てば立つほど、非現実感が増していくのであった……。
「……女版エージェント・スミス対パワパフガールズ、って感じだな……」
「ああ……完全に世界観が違う感じな……あの二人と、その他、大勢とでは……」
 カメラを向けながら、放送部員たちはそんなことを囁きあう。

 一見して優勢なのは、景気よく秦野たちを豪快に吹き飛ばし続けるテンとガクだったが、テンとガクの大ざっぱな攻撃を受けている秦野たちの側はというと、たいしたダメージを受けているようにも見えなかった

 テンとガクはといえば、不特定多数の観客に対して不快感をあたない戦い方をすること、すなわち、「正義の味方のように」戦うこと、を前提としていたので、間違っても相手に致命傷を与えるような攻撃は出来ずにいた。結果、有り余るパワーとスピードを持ちながら、どうしても矛先が鈍くなってしまっう。
 事実、秦野たちはにこやかにテンとガクの攻撃を受け流しているが、それも「ようやく受けととめるのが間に合っている」という態であり、テンとガクの速度に対して、完全に遅れて反応していた。
 しかし、体ごと吹き飛ばされながら、それでも手持ちの「ちゃんとしていない武器」とやらで打撃を受け流せる程度には、二人の動きについてきている。
 パワー、の点でいうのならば、体重差がありながら、激突する度に二人ではなく秦野たちのほうが吹き飛ばされている、ということからも明らかなように、完全に二人が秦野たちを凌駕している。
 秦野たち人数がもう少し少なければ、一人が秦野たちの注意を引いているうちに、もう一人が絞め技や当て身を使って一人一人落として行く……という、多少リスキーな方法も使用可能だったが、テンとガクの二人に対して秦野は三十人以上、という人数比を考えると、現在の状況ではそれも難しい……。

 つまり、テンとガクは、固体としては、秦野たちを圧倒的に上回る速度とワパーを持ちながら、かといって、数の上で劣勢を押し返すほどには優勢なわけでもなく、じわじわと秦野たちに体力を消耗されつつあった。
 実習室で、ストリーミング配信された映像を一瞥しただけで、荒野がその状況を読みとっていたように。

 テンションの高い玉木の実況だけがテンとガクの無意味に大袈裟なアクションを褒めたたえていたが、そのテンとガクはといえば、見た目とは裏腹に、真綿で首を絞められるように、ゆっくりと追い詰められていた。
 その状況を一変させるアクシデントが発生するまでには、今少しの時間が必要になる。

[つづき]
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