2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第五話 (96)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(96)

 楓との電話を切るのとほぼ同時に、茅の電話がなった。
「……才賀?」
『茅……わたくしにできることは、ないかしら?』
 電話の向こうの才賀孫子は、なぜか上機嫌のようだった。
『この非常時になんですけど……わたくし、今ならなんでもできそうな気がしますの……』
 どうも孫子は、楓のすぐそばにいて、さきほどの通話の内容を聞いていたらしい。
 もちろん、茅は孫子にも協力を要請した。

 そして、茅が孫子との通話を切ると、
『加納茅はそちらにいるのか?』
 今度は、徳川篤朗の声がパソコンから呼びかけてきた。
「……ここに、いるの」
 茅は答えたが、茅の声は徳川に届いていない。徳川は、茅が実習室でストりーみんぐを見ている、という前提で、慌ただしくしゃべりはじめる。
 アーケード上を撮影した画面では、白い煙がかなり大きく育っていた。アーケードの下にいる人々に影響を及ぼしはじめるまで、数秒単位の時間しか残されていない。
『……これから、着弾時の映像を放映するのだ。
 これを見て、残りのガス弾のありかを予測するのだ!』
 徳川は、一気にまくし立てるように、いう。
 その背後では、玉川がマイクに向かって、アーケード上でやっているアトラクションで使用した発煙筒が、アクシデントで大量に発火していること、もし、喉や目に異常を感じたら、すぐに最寄りの店員に申し出て、救護室に案内してもらうよう、アナウンスしている。
『加納茅、君は、完璧な記憶力と、距離や寸法を正確に目測する能力を持っている。君の能力があれば、残りのガス弾の撤去もスムースに進むのだ!』
『……その通りです』
 急に、聞き馴れない女の声が割り込んできた。

 アーケードに隣接したビルの屋上からアーケードの様子を撮影していた放送部員は、背後から伸びた手にいきなりヘッドセットを奪われ、ギョッとした顔をして振り返る。
 ゴスロリドレスに身を包んだ二十代くらいの女性が、放送部員から取り上げたヘッドセットのマイクに話しかけている。すっかり濡れ鼠になって、ドレスが肌に張り付いていた。
「秦野もガス弾除去に協力します。
 われら秦野は一心同体。人海戦術は、得意とするとことです。
 加納の姫様、ご指示を!」

 茅は携帯に登録してある、徳川の携帯に電話をかける。
「……タバコの屋上看板が建っているビルの手前、五メートル付近に着弾音、そこから南西に二メートルずれた所にもう一つ……」
 茅は今までにみた映像の記憶を検索し、そこから導かれる情報を電話に伝える。それと同じ茅の声は、ストリーミング映像からも聞こえてきた。
 そのストリーミング映像の中では、黒いドレス姿の女性たちが次々と白い煙の中に身を踊らせている。
 その女性たちが煙の中に姿を消してから、いくらもたたないうちに、煙の中から次々と白い尾を引いて、ラクビーボール大の円筒が飛び出てくる。全部で五つ。白い尾が太いものが混ざっているのは、着弾時の衝撃でガス弾自体が破損し、そこからガスが漏れているのだろう。
「それ、全部で川に捨てて!」
 そう叫ぶと茅は、立ち上がり、途中で椅子の背もたれにかけておいた自分のコートを引っつかみ、軽い足音を残して実習室から廊下にでていく。
「……茅ちゃーん! どこに……」
 柏あんなが、廊下に頭を出して、茅の背中に声をかけた。
「商店街!
 ……茅にもできること、ある筈……」
 遠くから響いてくる茅の声を聞き終わる前に、自分のコートを手にした有働優作が、茅の後を追って、どたとだと廊下を駆け出していた。
 さらにその後を、他の生徒たちも、ずどどどど……と地響きをたてて追っていく。
「……行こう! あんなちゃん!」
 その声に振り返ると、コート姿の堺雅史が、あんなのコートを片手に立っていた。
「……うん!」
 堺の手からコートを受け取った柏あんなが、元気よくうなずいて、廊下にでる。

 煙の塊の中からほうり出されたガス弾は、それぞれに待機していた黒い女の胸元に、正確に落ちる。
 ガス弾を受け取った黒い女は、すぐに少し離れた所にいる女に、投げ渡す。みると、黒い女たちはかなり遠くまで転々と距離を置いて配置しており、次々とガス弾をパス・リレーしていった。
 五つのボンベは、煙の尾を引いてあっという間に遠ざかる。
「われら秦野も、このような形で不要な被害を与えることは、本意ではない……」
 眼下では、アーケード上に育ちつつあった、白い塊が、成長した時と同様の急速さで萎んでいっている。ガスの発生源がなくなったため、すぐに雨に洗い流されている。
「少年たち、ご協力に感謝する」
 黒衣の女は、ヘッドセットを放送部員の手に返し、深々と一礼して、身を翻す。
 次の瞬間には、その女の姿は、その場から消えていた。

「……あの……おれらも……行って……」
 実習室の後で一列に並んで正座をさせられていた少年たちが、大清水教諭にお伺いをたてた。校庭で荒野と一戦を交え、そして、一蹴された少年たちだ。廊下の掃除が終わった後、そこで正座させられていた。
「好きにしたまえ……」
 大清水教諭がため息混じりにそう答えると、少年たちは立ち上がり、ごもごもと謝罪の言葉を呟ながら大清水教諭に頭を下げ、実習室を出て行く……。
「……舎人さんの加勢にいくぞ!」
「あの銀メット、そのままにしておくわけいかないもんな……」
「あいつ、ガス弾が落下してきた時、本気で命捨ててたぜ……」
 少年たちは、そんな事をいいあいながら、実習室から遠ざかって行く。

「……おーい、一体、なにがどうなってんだ……」
 三島百合香が電気屋さんの事務所に入ってきたのは、黒い女たちがガス弾を撤去した直後だった。
「荒野がいきなりわけわかんないこといって車を飛び出たんで、駐車場に車置いてここに来たんだが……。
 一体、何が起こってんだ?」
 ちょうど商店街へのアナウンスを終え、マイクのスイッチを切った玉木は、三島の顔をまじまじと見詰め、深々とため息をつき、がっくりとうなだれた。
「ミニラ先生……か。
 わたしにも、もう、なにがなにやら……徳川、説明頼む……」
「商店街のアーケードの上に、催涙ガスの詰まったボンベが六つ、降って来たのだ」
 徳川は、前後の事情は省略して、起った現象だけを淡々と伝える。背後関係ぬんぬんは、自分が触れるべき事象ではない、と、徳川は思う。
 三島百合香は、眉間に皺を寄せた。
「……一族の関係か……」
「おそらく……」
 徳川が、頷く。
「そのガスの被害者いたら、こっちに寄越せ。
 謎のニンジャ集団の頭領にかけあって、きっちり責任を取らせる……」
 三島百合香は珍しく真剣な顔をして請け合った。
 三島が連絡をすれば、しかるべき病院を手配してくれるだろう。それに、しかるべき賠償も、おそらくは……。
 そんなことで、実際に被害にあった人への償いになる、とは言えないが……それでも、なにもやらないよりは、遙かにましというものだ。
「いや……今のところ、アーケードの下にいた人たちから、それらしい苦情や申し出は、きてないけど……」
 うなだれたまま、玉木が答える。本気で、気疲れしていた。
 今のところ、ガスはアーケードの上に充満していただけで、その下にいた人たちに影響は見られない。しかし、それも、荒野の第一報とそれに応じて機敏に動いてくれた人たちと……それに、偶然、によるところが多い……。
 ガスに毒性がなかった、と仮定しても……催涙ガスが商店街に充満すればパニックになったろうし、その場に居合わせた人たちにの中には、トラウマを抱える人だって出てくる筈で……落下してきたボンベが、アーケードを突き破って下まで届かなかったのは……幸運、でしかない……。

「……荒野は、こっちじゃないのか?」
 三島が、重ねて質問する。
「今、帰った……」
 いつの間にか、当の荒野が三島の背後に立っていた。
 その声に振り返った三島は、絶句する。
「……真っ先に治療が必要なのは、お前のようだな……」
 校庭から佐久間、と連戦した後、催涙ガスにたっぷりと身を浸し、おまけに、何故か上着も着ていないワイシャツ姿で、全身を雨でぐっしょりと濡れらしている……。
 そんな荒野の様子は、一言で現すのなら「ズタボロ」、だった。
 立って、自力でここまで来られたのが、不思議なくらいだ。

[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび

無修正アダルト動画 Onacle.tv
エロアニメ
↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのいち]
小説Hランキング かうんとだうん☆あだると エッチランキング 1番エッチなランキング ☆Adult24☆ 大人のブログ探し処 Hな読み物の館 アダルトステーション Access Maniax アダルトランド

Comments

倉敷文人

今回も面白いッスよhttp://blog13.fc2.com/image/icon/i/F8F5.gif" alt="" width="12" height="12" class="emoji">

  • 2006/07/22(Sat) 19:45 
  • URL 
  • #-
  • [edit]

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ