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彼女はくノ一! 第五話 (97)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(97)

 荒野は、事務用の椅子を引いてそこにどっかりと座った。
 三島百合香は、
「玉木でも徳川でもいい。温かい飲み物と、タオルと着替え用意しろ!
 あと、目薬も買ってきておけ!」
 と叫んで外に出る。
 けが人がいる、と荒野に聞いていた三島は、自分の車に簡単な医療品を用意してきたので、それを取りにいった。消毒液や絆創膏などは余分に用意しているが、さすがに、点眼液などは手持ちがない。
「あと……スポーツ飲料と、なにか食い物も……」
 荒野が、がらがらの声でそうつけ加える。
 玉木は慌てて立ち上がり、事務所にあった電気ポットでお茶をいれ、荒野にカップを手渡すと、
「タオルと食べ物、なんか見繕ってくる!」
 といって、自分の家に駆けだした。
「じゃあ……ぼくは、目薬とスポーツ飲料……それに、喉の薬も適当に買ってくるのだ……」
 徳川もそういって、席を立った。
 荒野を一人にすること、よりも、荒野の状態をなんとか今よりマシなものにすることの方が、優先順位は高そうだ……。
「……ついでに、ケーキ屋にも寄ってくるのだ……」
 徳川は、事務所を出るまぎわに、ふと思いついて荒野にそう声をかける。
「……頼む……」
 荒野は、そう頷くのが精一杯だった。

『……この天候では……』
 その頃、才賀孫子は、商店街にほど近いマンションの屋上に陣取って、徳川篤朗が午前中に手渡してくれたライフルを構えていた。
 持った感じでは、全体に少し軽くなっていて、しかも、重量バランスに違和感はない。徳川篤朗の話しでは、強度や耐熱性、耐爆性を考慮した上で、軽量化を図っている……と、いう。が、兵器の、ということになると、製品の評価は一石一朝には出せない。できれば、こうしてぶつけ本番で使用する前に、何千発か試射して不具合がでないか、自分で確かめたいところだった。
 こうして、銃口を少し離れたビルの上で暴れている、ガクに向けている今では……いっても詮無いことだが……。

 孫子は、スコープから手を離し、一旦狙撃の構えを解いて、テンに電話をかける。
「……テン、聞こえる?」
『……孫子おねーちゃん!』
 テンは、即答した。
「今からガクに、眠くなるクスリを打ち込んでみますわ。
 急なことなので、弾数が限られていますけど……」
 実際あのクスリは、もともと、シルヴィ・姉から、ほんの少ししか分けて貰っていない……。
『それ、この間使ったやつ?
 ……でも、効果は望み薄だと思う……』
「え? どういうこと……」
『あの状態のガクって……免疫機構や、内蔵の機能も強化されているみたいなんだよね……。
 何年前にああなった時も、じっちゃんが熊用の睡眠弾、打ち込んでみたんたけど……何分か、多少動きがにぶくなったくらいで……ああなったガクは、どうも、そういうのも、すぐに分解しちゃうみたいで……』
 代謝系の活動も、総じて活発になっている……と、いうことなのだろうか……と、孫子は思った。
 だとすれば……そうした状態を脱した後のガクは、極端な衰弱状態に陥ることが予想できた。二宮のバーサク体質……とは、短時間に、体内に残っているエネルギーを消尽してしまう現象、であるらしい……。
 今回のガクのように、生命に危険が及び、なおかつ、本人が前後不覚になった状態でなければ、発現しないのではないか……と、孫子は予測する。
 いきなり天敵の生物に出くわした時、咄嗟に仮死状態に陥って、危機が去るのをやり過ごす生物、などは、割と多い。日本でポピュラーなのは、いわゆる「タヌキ寝入り」というヤツだが……一部の二宮の場合は、ポテンシャルをフルに引き出して、体力が続く限り暴れ回る……ということか……。
 確かに、今のガクの状態が「二宮のバーサク」の常態なら……大抵の危機は、粉砕できそうな気がする。
「わかりました……。
 効果は期待しないで、それでも念のため、やってみましょう……」
 そういって電話を切り、孫子はライフルを構えなおした。
 この悪天候下、加えて、実質、新品になって帰ってきたライフルの、初めての実射、だから、精密射撃は望めない。孫子は慎重に、標準のつけやすい、ガクの体幹部に標準をつけ、単発で、立て続けに引き金を絞る。
 悪条件が重なっている割には、弾道はあまり逸れていない……ようだ。
 孫子とて、射出したライフル弾の弾道を、視認できるわけではない。しかし、感触としては、悪くはなかった。
 しかし、ガクの胸を狙った弾丸は、呆気なく、ガクの振るう六節棍に、叩かれ、粉砕される。
『……あの状態、でも……』
 以前、ガクに、同じように弾丸を弾かれた経験があるので、そのことについては、孫子は驚かない。しかし、理性を失った状態でも、ガクが同じことが出来る……というこについては、かなり驚いた。
『思考は麻痺していても……体に染みついた技は、生きている……と、いうことですわね……』
 手持ちのアンプル弾を打ち尽くした孫子は、今度はゴム製のスタン弾を用意しはじめる。
 今のガクにあのクスリがどの程度効くのか、孫子には判断材料がない。
 で、あれば……最悪の事態を想定して、今、準備できる限りのことを、準備し尽くすしかない……。
 スタン弾は、アンプル弾よりは、弾数に余裕があったが……それでも、手持ちは、とてもではないが「潤沢」とはいえない……。
 それを打ち尽くしたら……今度は、実弾、しか、孫子は持っていない。普段、普通に使用する実弾は、たっぷりと持っていたが……。

 孫子のアンプル弾を一通りなぎ払い、粉砕したガクは、鼻をひくつかせてその場から後退し、距離を置いた。口と鼻を掌で覆っている所をみると……。
「……前の匂いを……憶えているんだ……」
 テンが、感心したように呻く。
 理性を失っている、とはいっても……自分の生命を脅かすことに関しては、実によく反応する……。
「ひょっとして……普段のガクより、よっぽど賢いかも……」
「……んなこと、いっている場合かよ!」
 ガクを挟んだ向こう側で事態を見届けていた「二宮の端くれ」さんが、テンの独り言に反応した。
「予想通り、あまり効いていないみたいだぜ! 次は、どうする?」
 ガクについては、テンのほうがよほど詳しい。だから、「二宮の端くれ」さんは、テンの指示に従う姿勢を見せている。
「ええと……どうする、っていわれても……」
 島にいる時は、ガクが疲れ果てて動けなくなるまで、逃げ回っていればよかった。しかし、人家の真ん中であるここでは、まさか同じ手は使えない……。
「ガクを傷つけずに、手足の自由を奪う方法……なにか、ありませんか?」
 テンとて、そうそう名案は思いつかない。

「……あっりまーす!」
 いきなり、テンの背後からそんな声が聞こえてきて、この屋上に通じるたった一つの階段から、わらわらと十数名の男……と、言い切るのには、若すぎる、か……少年たちが姿を現した。
 その少年たちにテンは見覚えがなかったが、現れるなり身軽な足取りで、屋上の手摺りの外にある狭い部分をぐるりと取り囲みはじめた。一歩間違えれば落下する、というのに、何ら臆する様子もなく、手摺りの外からいきなり、一斉にガクに向かって鎖分銅を投げつける。
 まるで号令でもかけたかのように、多方向から同時に投げつけられた分銅を、ガクは避けることが出来なかった。ガクの手足に二十本近い鎖が絡みつき、それを投げつけた少年たちは、スチール製の手摺りに、鎖の一端を絡めて、固定する。

[つづき]
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